『怪獣 ジセーのクー』 中の6


 クーは、早朝、天城峠の古いトンネル付近にひとりで探検に来ていた青年を、朝ごはんに頂いた。


 青年の辞世の句は、


 『そんなもん


   詠んでやるものか


     天城越え』


 であった。


 『真面目さが足りない。』


 として、また、お腹もすいていたから、許さなかった。


 クーは、青年が持っていた本を預かることにした。


 『ファウスト ~ ゲーテ』


 である。


 クーは、ご馳走から、様々な情報も、頂いてしまうから、この世界の本を読むことも出来た。


 しかし、『ファウスト』は、かなり難しい。


 『この世界の人類は、なかなか、難しいことを考えているな。』


 クーは感嘆した。


 『ますます、さらに、頂きたい。』


 クーの食欲は増すばかりである。



   🍝🍤🍜🍟🍔🍞🍙



 赤地警部たちは、荒川博士との面談に臨んでいた。


 非常に横柄で、頭ごなしな奴である。


 赤地警部は、お世辞を言って損をしたような気がしていた。


 しかし、これは、仕事である。


 『博士、事件はご存じですな?』


 『もちろん。作者からの報告もあった。』


 『なに? 作者が?』


 『当たり前だ。きみ。作者が知っていることは、みな、聞いている。』


 『ふうん。………、で、あなたは、この犯人は何者と思いますか。』


 『異世界の生物。すなわち、‘’アザーワールドリー・クリーチャー‘’ 略して、‘’アザワクリ‘’』


 『あざわくり? あまぐりみたいですな。』


 『ならば、‘’アザクリ‘’でもよいぞ。』


 『あざわくりにしましょう。しかし、そんなもの、わざわざ、‘’異世界‘’でなくても良いのでは?』


 『ふん。もちろん、それでも構わないがな。』


 『む。意外に素直な。』


 『しかし、警部さん。こんな映像にあるような生物が、この世にもとから居たとおもうかな? かつて、類似の事件があったかな?』


 『切り裂きジャックとか。』


 『切り裂きジャックは、食べないだろう。まあ、映画では確かに、そうした怪物も居たと思う。海底深くから、食糧不足で現れたのかもしれない。否定はできない。しかし、なぜ、スーツを着ている? ネクタイを締めている? こやつは、知的な生物である。会話の内容からも、そのように見受ける。詳細は本人に会わなければ分からないがな。』


 『会いたいですか?』


 『いや。あんたたちは、しかし、会いたいだろ。』


 『もちろんです。』


 川村刑事があっさりと言った。



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