完全犯罪?

@trumpkid

第1話(完結)

 私は風呂が嫌いである。毎日入浴はしているが、日中涼しかった日等、無理に入浴しなくても、とつい思ってしまう。しかし、カミさんは私と正反対だ。入浴せずにベッドに入る事を極端に嫌う。

 「入浴しないでベッドに入るなんてあり得ない。外出先の埃やばい菌をつけたままなんて、汚いじゃない。私、そこだけは譲れないから。どんなに遅く帰っても、必ずお風呂に入ってね」と宣う。

 「いや、しかし仕事での飲み会なんかの後、酔っぱらって風呂に入るのは逆に危険じゃないか」と反論を試みる事もあったが、「そんなに飲み過ぎないように気を付ければ良いじゃない。身体にもその方が良いでしょ。何が問題なのよ」と犯罪者扱いの勢いで言い返される。無論カミさんの言い分の方が正しいだろう。

 通常はカミさんの言いつけを守り、きちんと入浴していたのだが、ある日私は友人と外で酒を呑み、ついつい呑みすぎ、帰宅も遅くなってしまった。カミさんは既に熟睡している。

 「よしっ」私は酒を呑んでの入浴は危険なのだ、等と心の中で自己弁護しながら入浴は止めようと決意する。

 歯を磨き、パジャマに着替える為、私は洗面所に向かった。洗面所に行くと歯ブラシとコップ、バスタオルがいつも通り置かれている。よその夫婦はどうだか知らないが、家では一人一人別のコップ、タオルを使用する。

 私は歯を磨いた後、風呂場のドアを開け、適当にシャワーでお湯をぶちまけた。如何にもお風呂に入った様な入浴感を醸し出す為だ。

 よし、これで完璧だ。カミさんは私が風呂に入らなかった等と疑う事すら無いだろう。私は安心して寝床についた。

 翌朝目を覚ますと、一足先に起きたカミさんが、洗面台で顔を洗っていたが、私の顔を見ると、いきなりこう言ってきた。「昨日、お風呂に入らなかったの?」えっ!と驚き固まる私。完璧だと思った私の犯罪はあっと言う間に崩れ去ってしまった。

 カミさんは何故私のトリックに気が付く事が出来たのだろうか。

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