15日目1 予言

サバイバル生活15日目 07:30





「ん~…気持ちいいね!」


 言っておくが朝からいかがわしいことをしているわけじゃないぞ(開幕注意)


 なにしろちゃんと注意していかないと、どうも俺のことを色魔か何かと思っている勢力もいるらしいからな。



 乃愛のあはプールサイドベッドで朝の陽射しを浴びながらノビをして先のセリフを言ったのであって、これは一日のほとんどを地下拠点で過ごす我々プレッパーにとって貴重な健康維持の儀式なのである。


 こうして日光を浴びることで人体にとって重要なビタミンDの合成を進めることもそうだが、なにより単純に外気に触れることで気鬱を解消することも必要なのだ。


 生粋のプレッパーである俺はともかく、元来活動的でキャンパーギャルでもある乃愛のあにとっては地下拠点生活はストレスが溜まるだろうからな。


 …まして、諸積星来の『星詠みアストロジー』により今日の正午には新たな怪物モンスターの出現が予言されているのだ…下手をするとしばらくは地上で日光浴というわけにはいかなくなる可能性もあるのだ。


 午前中は可能な限り乃愛のあに日光浴をさせてやろう。


 いちおう地下拠点内には最低限の紫外線を浴びるためのスタンディング日焼けタンニングマシンも置いてはいるんだが、というか風呂ルーム手前の脱衣所に置いてあるので直接見てはいないものの乃愛のあは頻繁に使用しているようだが、ギャルの小麦色を保つ効果はあったとしても健康面での効果は限定的であろう。



 さて、視界の中では多数のタレットウォーカーたちが拠点周りの伐採を進めている。


 いずれも戦士鬼ホブゴブリンが落とした手斧を再利用しているのだが…これが中々バッサバッサとはいかないのは、怪物モンスターどもがタレットの射線を防御するバリケードになってしまうので伐り倒した木をそのままにしておけないからだ。


 そのため、10体以上のタレットウォーカーたちは一本木立を伐り倒しては運搬し、4基に増設したロケットストーブに投入して焼却する作業を並行しなくてはならない。



 うーん。

 いっそのこと伐採の段階を省略して、ガソリンを撒き散らしていっぺんに焼き払ってしまえば早いんだろうが…そんなの制御できる気がしない。


 …いやいや、熊野権現が護り給う神域の山々になんてことを考えるんだ(不敬)


 ともかく、拠点まで全焼してしまうようなリスクを冒すわけにはいかないので徐々に切り拓いていくいくしかあるまい。



 …タァァン



 お、木々の合間から聴こえて来たこの銃声は…穂積ほづみ幸人ゆきと氏だな。


 俺は穂積一家が住むダミー車庫ガレージ屋上のタレットの『直接照準ダイレクトサイト』に視界を切り替える。


 その視界では、ダミー車庫ガレージ屋上に毛布のシューティングマットを敷いて寝そべる穂積幸人氏の姿があり、その手にはこれまでのドイツ製22口径スポーツライフルとは異なる艶消しグレーポリマー製のライフルが握られていた。


 ふむ。

 これはスカウトライフル…SteyrステアーScoutスカウトだな。


 従来の22口径スポーツライフルでは小鬼ゴブリン以外の対象を仕留めることは難しかったわけだが、ここにきて妥当な武器アームズ更新リプレイスメントをしてきたわけか。


 使用弾薬カートリッジは.308ウィンチェスター。

 こいつの威力ならば戦士鬼ホブゴブリンも十分打ち倒せるだろうし、豚鬼オークの強靭な生命力を鑑みると胴体撃ちボディショットでは難しいだろうが頭撃ちヘッドショットならば可能性があるか。



 もちろん、もっと高威力長射程のスナイパーライフルを選択することも出来ただろうが…穂積氏がステアースカウトをチョイスした理由はなんとなく想像がつくぞ。



 ダアァァン!


「ギョア!?」


 ダアァァン!


「ゲベッ!!」



 小気味よいテンポで撃ち出される.308ウィンチェスター弾が小鬼ゴブリンの頭部を粉砕し、戦士鬼ホブゴブリンも鼻梁を撃ち抜かれて後頭部から諸々の頭部内容物を撒き散らしている。


 相変わらず命中精度も見事だが、なにより射撃テンポが素晴らしい。


 ベテランのバイアスロン選手である穂積氏は完全ストレートプルボルトの競技銃に慣れているだろうから、弾薬を大きくしたことでレバー操作の変更はしかたないにしても、なるべく競技銃と近い感覚で操作できるショートボルト&ショートレシーバーのステアースカウトを選択したに違いあるまい。



 …えーと、聴きなれない単語が多いだろうから順を追って説明すると。


 まず銃に詳しくない人からすると、ある程度の長さがあってスコープが載っているライフルは全部「スナイパーライフル」に見えるかも知れないが、穂積氏が手にしているステアースカウトは銃身長約20インチ弱でいわゆるスナイパーライフルよりも二回りほど小さい。


 そして一般的なスナイパーライフルは長大なマグナム弾薬を使用するため、ボルトアクション(銃を撃った後に射手がレバーを押したり引いたりしてるアレね)も腕全体を使って大きくスライドさせるロングアクションが必要になってくるんだ。


 対してステアースカウトが使用する.308ウィンチェスター弾は小銃アサルトライフルに使用される7.62mmNATO弾とほぼ同規格で比較的軽量、かつ撃発エネルギーを受け止める薬室サイズも小銃並みで済むため、穂積氏はほぼ手首のスナップだけでボルトアクションを完結させることができるわけだ。


 なので穂積氏はバイアスロン競技と同様に、銃を構えて照準エイムを合わせっぱなしにして次々とボルトアクションと射撃を連続している。


 …まあ、バイアスロンとは射撃姿勢も違えばスコープ使用という条件も違うのだが、どうやら穂積氏は器用なタイプのようで早くも高精度の連続射撃を問題なく実現しているぞ。


 実に見事というかなんというか、ただの滑り芸おじさんではないということらしい(辛辣)



 閑話休題それはさておき


 この調子でダミー車庫ガレージに近づく怪物モンスターを打ち倒していけば、穂積一家が獲得する討伐ポイントはこれまで以上に潤沢になるだろう。


 元よりダミー車庫ガレージ側は俺たちの本命拠点に比べると怪物モンスターの出現量が格段に少ないので、こうしてある程度自衛してくれるならばタレットのポイントを多く割かずに済むのでありがたいところである。



「…よーし、次は豚鬼オークが来てくれないかな。チャレンジしてみよう…あんまり多くオーク来られると困っちゃうけど、ムククッ!」


「やだ~あなたったらぁ」


「キャハハ! パパおもしろ~い」



 …コッチの様子はもういいか。











『正午になりました。サバイバル15日目を開始します』



 …来たか。

 当たり前だが、12:00ピッタリだな。


 拠点内のソファーに浅く座り直した俺は、多少の緊張を持ちながら次のアナウンスを待っている。



『生存者全員に討伐レベル+1ptの生存ボーナスを配布します』



『これまでに欠番となったスキルの再配分を行います』



 …この次だ。



『本日分のスキルの新規配分を行います』



 …いや、その次だった(迂闊)





 …




 …




『本日より新たなクリーチャーを排出します』




 …来た。

 ピタリ、穂積星来の予言の通りだ。



 俺は拠点屋上に設置されているタレットと同期して『直接照準ダイレクトサイト』の視界に集中する。



「どお…誠一せーいち。新しいお化け強そう…?」


「まだだ。これまでの感じだと、新怪物モンスターが追加されてから到着するまでにはラグがある」



 俺は乃愛のあたしなめるフリをしながらその実、自分自身に言い聞かせている。


 あんまり早くからピリピリしても持たんからな。

 というか、乃愛のあに聞かれるまでタイムラグのことを忘れて…んむ!?



 新たな怪物モンスターの到来までに時間があることを思い出して俺が緊張を解こうとしたとき、『直接照準ダイレクトサイト』の視界は早くもこの拠点へ向けて到着しようという新怪物モンスターの姿を捉えていたのだった。




 …拠点周辺を覆う木々の緑の上、北西方向遠くの空中にである。





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