5日目2 冷静沈着
『正午になりました。サバイバル5日目を開始します』
『生存者全員に討伐レベル+1ptの生存ボーナスを配布します』
『これまでに欠番となったスキルの再配分を行います』
…ここまではいつもの通りだ。
このまま何もなければ、またうつ伏せの姿勢に戻って
『本日よりスキルの新規配分を開始します』
「なにっ…!」
「きゃっ!?」
思いがけず重要なアナウンスが飛び込んできて慌てて身体を起こした俺は、
…スキルの新規配分だと。
俺は自分のスキルを急いで確認するが、どうやら変化は無さそうだな…
それはわざとじゃなくてですね…それよりもスキルをですね。
『本日より新たなクリーチャーを排出します』
新たな
ここまでほとんど変化がなかったのに、今日から急にいろいろ起こりすぎだろ!
俺は慌ててPCデスクに飛び移ると、地上カメラの映像に異変がないか
…今のところ新たな怪物は現れていないか。
いや、さっきのアナウンスで『排出』と言っていたな?
排出という言葉のニュアンスからすると、やはりどこかに怪物がスポーンするポイントがあってそこから人里めがけて進軍してくるのではないか…?
そうなると、新型の怪物がこの拠点に到着するまでにはタイムラグがあるだろうし、その間にタレットの配備を…そうか、しまった!
今日の午前中に調子に乗ってタレットを遠隔拠点に配置してしまったので、今は新たなタレットを生み出す枠の余裕があと1つ分しか無いじゃないか!
今から急いでタレットを回収したとしても、再配置までのクールタイムがかかるし…ええ〜い、俺のバカバカ! こんな油断をするとは…!
ともかく、今からでも急いで
…むにゅん?
「…
いつの間にか後ろに立っていた
…それにより、俺の頭に昇っていた血が別の所に移動することで、急激に落ち着きを取り戻す。
そうだな。
何もそんなに大慌てする事もあるまい。
これまでの防衛態勢でも怪物どもに対してかなりの余裕を持てていたし、仮に一時的に怪物どもの処理が追いつかなくなったとしても、何重もの耐爆防壁が核爆発すらも防いでくれるし、なによりおっぱいはどこにも逃げない。
…ふふ、プレッパーは冷静沈着であるべきだと言うのに、どうにも俺は不完全な人間であることだ。
「…
「…うん、
俺はPCデスクのチェアを反転させて、顔面を
そうすると、まるで全身が
「ギョバアア!!」
「ゲゲブッッ!?」
俺が直接操作するタレットの5.56mm高速弾が鬼の革鎧を貫き、怪物どもは緑色の体液を撒き散らして倒れ伏した。
…ふむ、やはりあんな謎ファンタジー装備では現代のボディアーマーのような
仮に今後、
正午のアナウンスから1時間ほどで姿を見せ始めた新種の怪物どもは、一言で言うならば「武装した鬼」である。
身体そのものも小鬼よりも大きく成人男性くらいあり、その身体を簡素な革の胴鎧で護っている他、手には刃渡り60cmほどの片手剣や手斧、中には
『掲示板』内では早くも「ホブゴブリン」という呼称が定着しつつあるぞ。
…そのネーミングはまあ分かるんだが、生存者たちの意外な余裕を感じないでもない。
いや、そんな冗談はさておき、この新種の怪物どもは俺のタレットの前にはさしたる脅威でもないのだが、他の生存者たちにとっては洒落にならない存在だろう。
なにしろ、危険な刃物を持った相手と近接戦闘を余儀なくされる上に、原始的な
おかげで『掲示板』にも各地で崩壊の危機に瀕している生存者コミュニティの悲痛な声が飛び交っているのだが…しかし、どうも市庁舎を始めとして熊野市街地に多数存在する生存者コミュニティは様子が違うようだ。
正午のアナウンスから結構な時間が経っているにも関わらず、熊野市街に出現する「ホブゴブリン」はチラホラといった数らしく、今のところ防衛が破綻する声は聴こえて来ない。
…これには、続々と『掲示板』に寄せられている新規スキルの獲得情報と、生存者の中に近接戦闘のコモンスキル所持者が現れたことで怪物の撃退が可能になったコミュニティも多い、という事情も関係しているだろうが…
それよりも。
「
タタタタタタタタタタタタタタタンッ!!
俺が片っ端から銃弾を浴びせていくと怪物どもはバタバタと倒れ、そこにやや遅れて『
…こりゃあ、熊野市街地の怪物どもが少ない分は、あきらかにコッチに来てやがるな。
援護射撃作戦は成功な訳だが、しかしそれにしても数が多い…!
「今度は2番! あっ、4番も来てるよ! えーとえーと…どっちもいっぱい!」
先ほどからのべつ幕なしに押し寄せる怪物どもは、
…くそっ、いきなり難易度を引き上げすぎだろ!
落ち着いて対処すればなんということはないのだが、途切れずに現れる怪物という圧力を前に俺は内心の苛立ちが高まり、だんだんと射撃の精度も落ちてきているように感じられる。
落ち着け、落ち着くんだ…
「
ご、ご褒美!?
俺の頭に昇っていた血液が下半身に移動することで、いっぺんに
そんな
…というか、冷静に判断してみると怪物出現のピーク時であっても、別段『
これはなんというか…お恥ずかしい話『
…まあ、そうして頭に血を昇らせながら必死に怪物どもを撃退したおかげで、
ともかく、もうすぐ本日の『討伐ポイント交換タイム』なので、念の為スキルレベルが上昇した分のタレットを追加設置して後は『
…こうして、やたら気分の上下が激しかった迎撃の時間が終了し、この時点ではまだ俺が知る由もなかった事ではあるが、さらなる激動の『討伐ポイント交換タイム』が始まるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます