5日目1 防衛網

サバイバル生活5日目 06:45





 うーむ、今日も充実した朝食だった。


 俺が一人で世捨て人生活をしていた時には、よくてパンを一枚焼くかほとんどの場合は朝食を抜きにしていたのだが…それが今や一変してしまったな。


 今日は洋風の気分だった乃愛のあによる朝のテーブルは、メインにベーコンとほうれん草をたっぷりのチーズで焼き固めたキッシュが登場して、クルトンが浮かぶコンソメスープに自家製ドレッシングのサラダ、トーストには名古屋風の小倉あんが主張して、こりゃ喫茶店で出したらいくら取れるメニューだろうか。



 …いや、違うな。


 この手の込んだ朝食が喫茶店の高級メニューではなく、乃愛のあの手ずから作られることに計り知れない価値があるのだ。



 すまんな…世の男性諸君。


 この一見美しくも人当たりがキツそうな金髪ギャルが作る、しかし印象とは異なりフレンドリーで料理上手なおっぱいギャルが作る、手が込んで彩り豊かな家庭的料理を毎日食べたい諸君よ。


 本当にすまん(煽り)




 …そしてこれがまた美味うまいんだ。


 この美味い飯に俺は支えられている。


 おかげで毎日の目覚めも快調そのものであるし、なかなか大変だった昨日の手動マニュアル射撃による疲労もどこへやら、俺は今日も1日を闘うエネルギーに満ち溢れているぞ。



 …それに昨晩の乃愛のあによる手動マニュアル射撃もなかなかの…いや、もう朝である。


 地上社会への援護射撃という目的も増えたのでちゃんと頭を切り替えて行かなくてはならないし、それに乃愛のあは手も使うが大部分はおっぱ…いや、頭を切り替えなくては。



 ともかく、記録への挑戦はまた今夜に取り組むとして、今日はまた色々と試したいことがあるのだ。









 『修理』と『DIY』のルーチンワークを終えた俺はソファーに座り、乃愛のあの淹れた紅茶に口をつけながら…ここからは『タレット』の時間である。



 そして、昨日までならここからはPCデスクに向かうところなのだが、一晩でまた事情が変わったぞ。


 まあいくつか説明を要するので、まずはスキルを確認していこう。



─────────────────────

甍部誠一いらかべせいいち

討伐Lv26 

討伐ポイント 338Pt


《コモンスキル》

棒術1

射撃6

操縦1


《レアスキル》

修理3

DIY2


《ユニークスキル》

タレット17

自動オートモード

┗タイプBタレット

直接照準ダイレクトサイト

掲示板35

┗分析AI

─────────────────────



 まず討伐ポイントの激増である。


 夜間の間にもタレットたちは順調に怪物を処理したらしく、この24時間での差分は実に150を超えているのだ。


 …日に日に怪物が押し寄せてくる量が増えていることは間違いあるまい。



 そして、昨日に苦労した手動マニュアル射撃のかいがあってレベル6まで上昇した『射撃』であるが…これはやはり、自動オートモードではなく俺自身が操作して怪物を撃ち倒さなくては経験値的なものが入らないらしい。


 その証拠に、一昨日までの自動オート射撃モードではどれほど戦果を挙げても『射撃』のレベルは上昇しなかったし、逆にモニタを覗きながら俺自身が操作して怪物を撃てば、『射撃』スキルが少しずつ充実していく感覚も得られ実際にレベルも上昇したのである。



 …と、思っていたのだが。



 実は、昨日の手動マニュアル射撃を終えた時点では、『射撃』のスキルレベルはまだ5であったのだ。


 それが今確認してみると6レベルになっているわけで、これではいきなり仮説に破綻が見られる。



 …いやまあ、長々と前置きをしているが、実は思い返すとこの『射撃』スキルが発動したような感覚がした場面はあったのだ。


 それは…昨晩に俺が新記録に挑戦している最中である。



 え、『射撃』ってそういう…?



 たしかによくよく考えてみると、いくら乃愛のあ乃愛のあのおっぱいが魅力的だからといって、アラサーを迎えた俺がいきなり血気盛んな学生の頃でも無かった新記録を達成するとは不自然である。


 しかも、昨晩の俺は生涯新記録である”4”超えてそのまま”5”という異次元に到達しているのだ…!


 いくらストーブの熱にうっすら汗ばんだ乃愛のあの大マシュマロが極楽の心地だからといって……次は『タレット』について見ていこう(急ハンドル)



 これじゃ全然話が進まないからね(反省)



 それでいよいよ、我が最大の生命線にして最強戦力の『タレット』についてであるが、これがまた手動マニュアル射撃の不便さに辟易しつつあった俺にとってタイムリーな新機能を解放してくれたぞ。



 俺は意識を車庫ガレージ屋上のタレットの一つに向け、『直接照準ダイレクトサイト』を行使する。



 …脳裏に浮かんできた風景は、視界の中心に位置するタイプAタレットのアイアンサイト、そして視界下部を遮るタレット機関部、それ以外の部分は地上の風景そのものである。


 そう、この『直接照準ダイレクトサイト』とは遠隔操作のタレットと視界を共有し、ちょうど俺が車庫ガレージ屋上にいてタレットを直接構える射手になったのと同じ感覚を得る事ができるのである。



 これで微妙に使いづらかったカメラ越しの射撃が改善されたぞ! 実に素晴らしい! …のだが



 …うーん、これで討伐ポイント交換タイムで意味を失った貯蔵物資の数々に続いて、手間暇かけて構築した地上監視システムまで陳腐化してしまったじゃないか…(複雑)



 まあいい、気を取り直して『直接照準ダイレクトサイト』での射撃を実験してみよう。


 俺は適当な木立に向けてタレットのアイアンサイトを合わせる。



 タタタタタタタンッ!!



 うおっ…!


 久しぶりにタレットの射撃音を生で聴くと凄さまじい轟音だ。


 こりゃあ、涙目になる乃愛のあを馬鹿にできんな…



 しかし射撃そのものは非常に良好で、俺の狙いのとおり木立の幹に5.56mm弾が集約着弾しているぞ。


 ふむ、やはりカメラ越しの射撃に比べて遅延もなくて相当な精度向上が見込めるから、これまでよりストレス無く効率的なレベリングができるぞ。



 …しかも、この『直接照準ダイレクトサイト』が持つ有用性はこれだけじゃない。



 今度は『タレット』スキルへの意識の向け方を変え、これまでとは異なる使い方を実践してみるぞ。



 感覚としてはイケるはずだ…よし。



 俺は『タレット』の新機軸を検証するために、さっそく新たに設置した一門に『直接照準ダイレクトサイト』を接続する。



 そして見えて来た景色は…今いる拠点の地上に立つ車庫ガレージと大して変わらない太陽光パネルに囲まれた屋上スペースであるが、違いとしては大きな雨水集積タンクが設置されている他、周囲の木立もよく見れば別物である。


 そう、ここは本拠点からは離れた位置にあるダミー拠点の一つなのだ。



 以前にも軽く説明したと思うが拠点が存在するこの山はほぼ丸ごと俺の所有なので、本拠点以外にもアチコチにこうした構造物が点在している。


 今新たにタレットを設置したのは本拠点とよく似た外観の車庫ガレージで、地上部分は本拠点とほぼ同じ厚さ40cmのコンクリート壁で囲まれ、地下にはシェルター構造を持たないものの一応倉庫スペースがあり、1年程度は生活可能な予備物資を備蓄してある。



 つまりここは本拠点を秘匿するためのダミーであると同時に、何らかの理由により本拠点を放棄した場合の予備拠点でもあるというわけだな。


 なので太陽光発電設備は本拠点同様に備えられているし、さすがに地下水システムは連結していないものの雨水タンクにより最低限の生活用水を確保する備えもあるぞ。



 とまあ長々と説明してきたが、今回はこの予備拠点の中身やら設備やらには大して意味はなく、タレットを設置できる構造物としての価値が重要なのだ。



 俺は予備拠点屋上に設置したタレットを動かして、『直接照準ダイレクトサイト』でリンクした視界ビジョンで360°の見晴らしを確かめる。



 …いいぞ、これで俺は本拠点の地下シェルターの中、居室のソファーにくつろいだままでありながら山中各地への視界を確保できる。


 安全の代償に外部との遮断を余儀なくされるプレッパー生活において、これがどれほど有益であることか。


 しかも設置しているのは単に視界ビジョンをリンクするカメラではなく強力な遠隔射撃機能を備えたタレットなのだから、俺はこの山中全体を利用した防衛ネットワークの構築すらも可能になるのだ。



 いいぞ、いいぞ…!


 俺が誰にも理解されないままに心血を注いできたアレコレが、『タレット』と噛み合いまくって…こりゃシンデレラフィットどころの騒ぎじゃない猛烈な快感が押し寄せてくる!!


 ああ! 俺はプレッパーで良かった…(絶頂)








 …などとプレッパー特有の謎興奮を発揮してしまったが、これのおかげで乃愛のあの保護と人類への援護射撃ができていると思って我慢していただきたい。



 そんなことよりも、次なるタレット設置である。



 さっきは本拠点から見て北北西方向の山腹にある予備拠点だったので、今度は真西方向と…北東方向の予備拠点にもタレットを設置しよう。


 なにしろ怪物どもは今日も北西方向から続々と湧き続けているからな。


 その方面の予備拠点から重点的にタレットを配備していって、堅固な怪物迎撃網を構築するのだ。



 そして、新たに設置したタレットたちにも『直接照準ダイレクトサイト』を接続…いいぞ!


 俺は拠点の地下深くにいながらにして、いくつもの離れた位置の視界を同時に得ることができる…!












「大丈夫、誠一せーいち?」


「ああ…なんとか、うっぷ…」



 ソファーに寝かされて乃愛のあの膝枕に頭を乗せた俺は、ようやく激しい目眩が収まって気分が落ち着いてきたところだ。



 …うーん、脳内にいくつもの視界ビジョンを同時に置くことがこれほどの負担だったとは。


 調子に乗って4箇所の拠点でいっぺんにタレットを操作し始めたあたりで、急に目が回ってぶっ倒れてしまったのである。



 こりゃあ、ひとつひとつ操作するのが無難らしいな…



「無理しちゃダメだよ? 今日はお休みにしようね〜」



 乃愛のあの小さな手が俺の額に置かれて、ホッとするような温かさが伝わってくる。


 

 …まあ、そうだな。


 焦っても仕方ないか。



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