3日目3 タイプB

サバイバル3日目 15:05




 さて、乃愛のあの誘惑に負けてついつい昼間からいい気分になってしまったが、今日は色々と検証したい事があるんだ。



 えーと、まずはこっちからいくか。



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甍部誠一いらかべせいいち

討伐Lv16 

討伐ポイント 153Pt


《コモンスキル》

棒術1

射撃3

操縦1


《レアスキル》

修理2

DIY1


《ユニークスキル》

タレット10

自動オートモード

┗タイプBタレット

掲示板21

┗分析AI

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 24時間稼働しっぱなしの『タレット』が戦果を挙げたおかげで討伐ポイントが貯まっているのもそうだが、『タレット』自身のスキルレベルも上昇しているぞ。


 レベルが10まで上がっているので設置できるタレットの枠も10まで増えたが…なにより、新たな派生スキルが生えているのでココを確認していこう。



 …ふむ、『タイプBタレット』と言うからには、これまでのタレットはタイプAということになるのか?



 ともかくやってみよう。



 俺は居室から扉を開けて前室空間に移動すると、壁際に設置されている作業台に向かい派生スキルを意識する。


 一瞬の煌めきが視界を満たすと、そこには作業台上にボルトで固定された新たな機関銃マシンガンが姿を現していた。



 …なるほど、それで『タイプB』か。



「急に鉄砲てっぽー出してどしたの? …あれ、ちょっとこの鉄砲てっぽー大きい?」



 その面には疎い乃愛のあにして見るとタイプAとハッキリ区別出来ないようだが…まあ無理もないか。


 こいつはタイプAタレットと同じベルギーのFなんとか社製汎用機関銃PGMGで、7.62✕51mmNATO弾を使用し西側各国で制式採用された実績を持つ傑作銃のMなんたらGである(厳重な権利対策)


 5.56mm弾を使用するタイプAタレットことなんたらニミ軽機関銃(あまりにも完璧な権利対策)から見て兄貴分に当たる銃で、原設計は冷戦期と古い年代の銃だが現在でも前線で活躍しているし、たしか自衛隊でも水陸両用車両の車載機関銃として現役のはずだ。


 大口径のフルサイズライフル弾を使用するため発射レートや弾速はタイプAに劣るが、兵士個人が着用するボディアーマーが進化した現代において、むしろ弾丸の貫通能力が再評価されているカテゴリの銃でもある。



 まあともかく、使ってみるか。



 どうやらタイプBタレットも使用する枠は1つだけのようなので、さっそく俺は地上車庫ガレージの屋上に意識を向ける。


 ちょうど四角に設置されているタイプAタレットの中間の位置、つまり屋上の四辺の真ん中にそれぞれタイプBタレットを設置してみたぞ。



 …えーと、今度は居室のカメラモニタの前に戻らないと何も見えん(行ったり来たり)






 ピコン!



「あっ、お化け来たよ! 誠一せーいちはやくはやく!」



 地上監視カメラの映像と連動した動体検知ソフトが警戒音を発し、乃愛のあが騒ぎ立てる。



 来たか。


 ほんの15分ほどを待つだけで、モニタ映像の中では木々の合間からタイプBタレット試射の標的が姿を現していた。


 5匹ほどで徒党を組んで現れた小鬼…『掲示板』内ではすっかり『ゴブリン』という呼称で定着している怪物…は、一時的にタレットの『自動オートモード』が切られている地上車庫ガレージを目指してゾロゾロと歩み寄ってくる。



 …なんか、段々と出現ペースが増えているような?


 日毎の討伐ポイントの収支をつければ一目瞭然なのだが、一日目のペースを24時間換算した場合がおよそ40〜50匹、二日目が60くらいで、今日はこのペースでいけば70に達するかも知れん。



 ふーむ、今のところ拠点の防備は万全と言っていい状態ではあるが、この調子で怪物の数が増えていけば危うい局面もあるかも知れん。


 こりゃ、タレット一辺倒の防備体制の見直しも考えるべきか…


 そのためには…



「撃たないの…?」

 


 おっと、また余計なタイミングで考え込んでしまった。


 乃愛のあの声で現実に戻ってきた俺は、改めてモニタ内を闊歩する小鬼共に狙いを定める。




 ガガガガガガガガガォン!!



「ギャバ!?」


「ゲグッ!」



 新設のタイプBタレットが唸るとやや遅れてモニタ内に火箭が走り、フルサイズライフル弾の斉射を浴びた小鬼はもんどり打って地面に倒れた。



 …むむ、タイプAよりも弾速が遅い関係によるものか、スキルで引鉄トリガーを引いた感覚に対してモニタ内での着弾の遅延がさらに大きいぞ。


 こりゃ、FPSゲームで言えばラグすぎてサーバー乗り換えを真剣に検討するレベルだ。



 だが、威力はさすがだな。


 一発でも命中弾が得られれば小鬼はひっくり返って行動不能に陥る様子である。


 俺が直接狙うには映像遅延による命中精度が気になるが、『自動オートモード』で撃たせる分には関係ないだろうから、タイプAに比べて殲滅速度に劣るものではないかもしれん。



 試しに『自動オートモード』に切り替えてみると、多少アバウトな射撃になりながらも7.62mm弾を軟目標相手にバラ撒く暴力性により、あっという間に5ポイントの討伐ポイントが得られていた。



 よし、新タレットの性能も上々だな。


 俺は計9門のタレットを全て『自動オートモード』に切り替えると、急いで地上マイクのボリュームを絞って日常生活体制に戻した。



 …だって、乃愛のあが耳を抑えながら涙目でこっちを睨んでるからね。



 えっ、想像より音が大きかった?


 そりゃだって、フルサイズライフル弾の装薬が毎分800発も撃発するんだから、かなりの騒音になることは分かりきった…いや、ちゃんと説明するべきでしたごめんなさい。



 その後、プリプリと怒る乃愛のあは本日のおっぱいを取り止めてしまいかねない危機的状況であったのだが、晩飯のハンバーグに合わせて俺が赤ワインの封を切ったことで一気に機嫌が回復し、本日も俺のソウルは救済されたのであった。





 閑話休題それはさておき



 その後も(マイクの音量は絞りつつも)タレットの射撃実験を繰り返した結果、2タイプのタレット性能がかなり詳細に分かってきたぞ。


 まず、両タイプともに弾薬そのものは無尽蔵であるのだが、タイプAならば100発撃つごとにおよそ10秒、タイプBならば200発撃つごとにおよそ60秒のクールタイムが必要である。


 これは現実の両銃の運用とだいたい一致していて、前者は100発入り弾倉マガジン交換リロード時間と考えられるし、後者は現実でもベルト給弾方式によりリロード時間は要しないが、今度はフルサイズライフル弾の撃発による過熱を抑える為の射撃間隔が必要になる。


 まあ、威力においても運用においても大凡おおよそ実銃と一致すると考えると、車庫ガレージ屋上に9門もの機関銃を配備しているこの拠点の防衛能力は、やはり現環境下において最高レベルと言って差し支えないだろう。



 次に命中精度であるが、弾速の違いから多少の違いが見られるものの…まあ、これは誤差の範囲内だろうな。


 なぜならば、車庫ガレージから周辺の木々までの開けた空間はせいぜい70〜80m程度しかないため、両銃ともに大幅に有効射程を余らせていて顕著な弾速差が出る余地がないのだ。



 うーん、こんなことならもっと車庫ガレージの周りを伐採しておくべきだった。



 まあそれこそ将来の防衛能力向上策の一つとして、検討しておこう。



 さて、最後に『射撃』スキルについてである。


 これは従来から『タレット』スキルと何らかの連動をしている事は分かっていたのだが、今日の午後いっぱいをかけて検証したことにより、その詳細が判明した。


 この能力は想像通り俺の射撃技術を補正向上させるものであり、今日も途中でスキルレベルが向上すると手動照準の精度が僅かに向上していたぞ。


 そして、『射撃』のスキルレベルが上がるのは俺がタレットを操作して怪物を撃ち倒した場合のみで、『自動オート』モードではいわゆる経験値的なものが『射撃』スキルに入っていないものと思われる。


 だから『射撃』スキルのレベルを上げるには、モニタに張り付いて1日中手動射撃に励むべきなんだろうが…他にもやりたいことはあるし、何よりそれでは気が滅入ってしまうぜ。


 長いプレッパー生活を耐え抜くには、精神衛生こそが最重要という側面もあるのだ。



 たぶん、『射撃』スキルにはタレットの手動射撃精度を上げてくれる効果の他にも、俺が実銃を手にして怪物を攻撃した場合にそのダメージを有効化してくれる効果もあるのだろうが…ちょっとそうなるシチュエーションは今のところ想像しにくい。


 なので、当面は他のスキルを有効活用する時間を優先して、『射撃』スキルのレベリングは時折のストレス解消程度にしていこうと思う。


 まあ、この辺は臨機応変にいこうか。



誠一せーいち、もうお休みしよ?」



 と、そこでベッドの上に座る俺の背中に、むにゅりと柔らかな膨らみが押し付けられていた。



 …もうそんな時間か。


 地下拠点にいながらにしてやけに規則正しい生活リズムを刻む俺たちは、外界の日が落ちてモニタ画面が暗くなるとすぐにとこに入るのである。


 という訳で、大したことはしていない気もするが、本日の活動は終了だ。










 …まあ、その前にもう一活動あるのだが。





「…じゃ、するね?」


















 照明を消して暗闇となった拠点の夜、キャンプストーブの耐熱ガラスから漏れ出すオレンジ色のらめきに浮かび上がる乃愛のあのおっぱいは幻想的なまでに美しく…



 その果てしない柔らかさに包まれた俺は、ある時は活火山の如く激しくたけり、またある時は一転して古の賢哲の如く静かに悟り、その両極を何度も行き来して…



 そうしながら、また明日を生きる力をたしかに充足させていくのであった。




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