1日目1 スキル検証①

サバイバル1日目 15:25



 さて、おっぱいはさておき、いろいろと確認していこう(正気)



 俺は寝室ブロックの奥にあるクローゼットを開くと、護身用に購入していた鋼鉄スチール警棒を手に取る。


 コイツは折りたたみ式でなくシンプルに棒状の実践的な警棒なのだが、そのズシリとしたとした重みと共に…なるほど、これまでには無かった充実した感覚というか、明らかに俺本来の技量や膂力を超えて上手く扱えそうな予感がする。


 これが『棒術』スキルの恩恵という訳か、これならばいざという時に俺でも怪物モンスターに対抗出来るかも知れないぞ。


 …そう言えば、乃愛のあに関してはスキルを得る前から手斧で小鬼を倒していたな…それに『斧術』スキルも加わった今、おっぱいを抜きにしても単に用心棒として優秀な同居人なのかも知れん。


 さておき、これからは俺もこの警棒を肌見放さず携帯していこう。



「ひぁ〜、日本中ヤバイね…」


 すっかりソファーでくつろぎ始めている乃愛のあは、テレビのチャンネルをあちこちに変えては全国の混乱を伝えるニュースを眺めている。


 俺もそれらのニュースが気になると言えば気になるが…まあ、おおよその現状はカーラジオで取得済みだ。


 それらによれば、やはり異変の発生は本日正午、例のアナウンスが人々の脳内に響き渡ると同時に怪物モンスターが出現し、すでに多数の死者を含む計り知れない被害が発生しているらしい。


 いや、断片的に入る情報によれば海外でも同様の事態が起きているか。


 政府は自衛隊の出動を決断し…というか、それ以前からなし崩し的に全国各地で警察署や自衛隊駐屯地を防衛する戦闘が展開されていて、俺の受けた印象では系統だった作戦と言うよりは単に、目前の脅威に晒されてそれぞれに抵抗している段階だろう。



 …まあ無理もないか、目の前に自分を含む周囲の人間を襲う怪物モンスターが突然現れたなら、銃を手にした実力組織ならば、そりゃ撃つだろう。


 仮に組織が発砲を許可しなくたって、個人個人の警察官や隊員が黙って死を受け入れる訳もないのである。


 乃愛のあが映したニュースではそうした自衛隊と警察の共闘映像もときおり…おっと、ニュース観察は乃愛のあに任せておいて、俺は俺のやるべきことをやろう。



 俺は計4枚あるPCモニタの電源を入れると、カメラアプリを起動してそれぞれに地上の様子を映し出す。


 そう、地上車庫ガレージの屋根には全周囲に向けてカメラが設置されており、こうしてリアルタイムで監視が可能なのである。


 これも内戦シチュエーションに備えるアメリカの同胞プレッパーたちが好む設備で、なんならプレッパーでなくとも自弁防衛意識の高いアメリカ人の家にはよくある設備でもある。



「あっ、スゴい! 外が見えるんだ!?」



 目ざとい乃愛のあが気づいてPCデスクに向かう俺の背中に飛びつき、俺の肩に顎を載せて一緒にモニタを覗き込んで来た。



 …むにゅん、とした柔らかな感覚が俺の背中にあって…これもうおっぱい始まってる?(雑念)


 乃愛のあが着用しているのは俺の部屋着であるトレーナーとスウェットで、いわゆる「彼シャツ」とはまた違うのだが、男物でダボダボのオーバーサイズを着ている女というのは、やはり特有の魅力が…


 いやそれ以前にこれノーブラ…



誠一せーいち! お化け映ってるよ! ほらここ!」



 モニタの1枚を指差しながらわめ乃愛のあの声で、背中に全神経を集中していた俺も現実に引き戻される。



 む、たしかに乃愛のあの言う通り、モニタにはゾロゾロと車庫ガレージに向かって歩む数匹の小鬼の姿が見えるぞ。


 …小鬼どもは俺たちがピックアップトラックで登坂してきた山道からやって来た様子で、こりゃあ移動中に目撃されて追ってきたのかも知れんな。



「どうする? 出ていってやっつける?」


「…いや、多分もっといい方法がある」



 乃愛のあは手斧を片手にやる気まんまんといった様子だが、俺には素晴らしい作戦案があるのだ。


 今後の拠点防衛を占う意味でも、是非ここで検証しておきたい。



 俺は脳内で自身のスキルに意識を向けた。




─────────────────────

甍部誠一いらかべせいいち

討伐Lv2

討伐ポイント 11Pt


《コモンスキル》

棒術1

射撃1

操縦1


《レアスキル》

修理1

DIY1


《ユニークスキル》

タレット2

掲示板1

─────────────────────




 …うん、やはり出来る。



 退避行の中で襲い来る怪物モンスターを倒している内に、討伐ポイントが10になったタイミングで『タレット』のスキルレベルが上昇していたのだ。


 これにより、設置できるタレットの総数が1から2に増えていることも、なんとなく感覚で理解出来ている。



 よーし、さっそくやってみよう。


 俺は車庫ガレージの構造を脳内で思い描きながら、その屋上中央…ソーラーパネルが敷き詰められた中でも一段高くなっているアンテナボックスの上に、本日2つ目のタレットを設置した。



 よしよし、これも感覚からおそらく可能と想定していたが、俺の所有物である拠点設備に対してならば地下の居住空間からでもスキルがアクセス出来るぞ。



 …いや、それどころか今の感覚によると、もっと凄いことも可能かも知れん。



 実はこの拠点のある山中にはここ以外にもよく似た外観の車庫ガレージ型の地上構造物が複数あり、これは本命の拠点位置を欺瞞するダミーであると同時にソーラパネルによる電力を地下ケーブル経由で送ってきているのだが…


 なんとそれらのダミー拠点に対してもスキルがアクセス出来る感覚が得られたのだ。


 それ以外にも、小川を丸ごと取り込んでいる水力タービン小屋やら風力発電プロペラやらも山中に散在していて、それら送電網で結ばれた設備の全てが俺のスキルのカバー範囲内にあるぞ。



 いや、ちょっとこれは想定外というか…単にダミー兼電力供給システムと考えていた施設群が、こりゃ考えようによっては本城を防衛するための支城として機能させることも視野に入るな…


 ダミー拠点にも数は劣るがカメラを設置してあるし、遠隔操作の怪物モンスター撃退拠点として活用してだな…


 いやしかし、そのためには『タレット』のスキルレベルをもっと上げなくては…



「ねえねえ〜、どうすんの〜?」



 おっと、まずは目の前の事態に対処しなくては。



 乃愛のあに揺すられて思考の井戸から引き戻された俺は、モニター越しに見据えた小鬼どもにタレットの銃口を向け…斉射する。



「あっ…スゴい」



 モニタ内の小鬼たちは、無音のままバタバタとその場に倒れ伏していく。


 うーん、こりゃマジでゲーム感覚だな。


 スキルでタレットの引鉄ひきがねを引いた感覚と、モニタの中に火箭が走るタイミングにはわずかなズレがあるが…これはモニタの映像更新ラグ分だろうか、ちょうど海外のサーバーにアクセスしてFPSゲームをプレイしたような感覚である。


 そういえば、地上マイクをオンにしていなかったので無音だったか、今後は何が起こるか分からんことだし、忘れずにオンにしておこう。



 えーと、モニタに映る小鬼は6匹に対して、討伐ポイントは5しか増えてないから…どれか一匹まだ息があるわけだな。



 タタタタタタタタタンッ!!



 今度は地上マイクがタレットの連射音を拾って、PCのスピーカーからはけたたましい騒音が出力される。


 もうちょいボリュームを下げておくか。


 この辺は実際にやってみないと分からん事だからな、少しずつ最適な調整を模索していこう。



 トドメの斉射を送り込まれた小鬼どもはピクリとも動かず、今度こそ討伐ポイントも全て回収出来たぞ。


 ふーむ、それにしても…スキルを獲得した瞬間から確信していた事ではあるが、やはり『タレット』と俺のプレッパースタイルは相性抜群じゃないか…!


 地下深くシェルター内部に身を隠しながら、地上の怪物モンスターを撃退できるとは。


 この圧倒的な防衛能力を見て乃愛のあもさぞかし感動して…あれ?



 急に静かになった乃愛のあの方を振り返ると、おっぱいギャルは両耳を手で抑えながら涙目でコチラを睨んでいた。



 …あ、急にマイクをオンにしたから耳がキーンとしたのね。


 いや、ゴメンて…


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