第3話 拠点到着
「…えーとね、それでさっきのお化けやっつけた時に、頭の中で討伐ボーナスって出てぇ。それでコモンスキル獲得してぇ」
俺が運転するピックアップトラックの助手席、ペラペラと惜しげもなく自身のスキルまで語っているのは、おっぱいバイクキャンパーこと
大学生である彼女はその通称の通り、ツーリングとキャンプを趣味とするおっぱいであり、何でも付近の温泉付きキャンプ場で一晩を明かした後、愛知県方面へと帰宅途中にこの異変に遭遇したようである。
「アタシのことは
…む、腑に落ちない面はあるが、まあおじさん呼ばわりを継続されるよりはマシか。
─────────────────────
討伐Lv1
討伐ポイント 1Pt
《コモンスキル》
斧術1
料理1
運転1
《レアスキル》
キャンプ1
─────────────────────
俺の時に聴こえてきたアナウンスの内容をを鑑みるに、彼女は一つ目のレアスキルを獲得する順位、すなわち全体で1000位以内の討伐速度ボーナスを得ていると考えられる。
そして、追加のレアスキルを得ていないということは、全体100位以内は逃しているという訳だな。
…俺があの小鬼を轢き殺してから、彼女が手斧を振るって小鬼の脳天を叩き割るまでの、あのほんの数分の間に全体で100人以上の討伐者が出ているのか。
そうなるともう、意図的な戦闘というよりは俺のように偶然が作用したような速さだろうから…やはり少なく見ても日本全体レベルが参加している『ゲーム』の規模感を思わせるな。
こりゃ、俺がブッチギリのスタートを切れたことはつくづく幸運だったと言える。
〈ザザ…本各地で発生した災害は…、政府は自衛隊の…〉
つけっぱなしのカーラジオから流れるニュースは、混乱に満ちていて要領を得ないものの深刻そうな様子だけは伝わってくる。
「…やっぱ、ヤバそうだね。しばらく
助手席の
…うーむ、ここまではつい勢いで事を進めてしまったが、改めて考えると…俺の生命線である拠点に異分子を入れなくてはならないのか。
これは、さすがに生存に関わるリスクだと言わざるを得ない。
さりとて、今更
「あっ! お化け!」
「…おっと」
タタタタタタタンッ!!
ピックアップトラックが走行する道路上に例の小鬼が2匹現れるが、俺の意思を受けて即座に屋根の上から発射された銃弾が薙ぎ払う。
ふむ、これで何度目だろうか…脳内の討伐Pt表示は9となっているから、
「すっご!
…まあ、すでになし崩し的に俺の能力を見せてしまっているし、この災害が治まるメドが立つくらいまでは保護しておくべきか…
さっきから
…この程度の脅威度で済むならば、の話だが。
「ねえ、いいでしょ? おっぱいチャンスついてくるよ? …ううん、安全になるまで置いてくれるなら、もう確定おっぱいにしたげる!」
そう言って助手席の
か、確定おっぱい…!
なんだその暴力的な響きは!?
俺は危うくピックアップトラックの運転を誤りそうになる。
「キャハハ! ちょっと〜運転あぶな〜い!」
くそ…こんな小娘にいいように踊らされるとは、情けない。
俺は深呼吸しながら、努めて視線を前方に向け直す。
「…安全になるまでは置いてやるから、あんまり俺をからかうな」
「やりぃ〜! よろしくね、
三重県南部の山間を行くピックアップトラックは辛うじて
キョロキョロと車窓の景色を見渡している
…こんなところまでホイホイと付いて来てしまっては、これでもし俺に
不用心と言うべきか何と言うべきか、ちょっと俺のことを信用し過ぎでは無いだろうか…いや、化け物が地上を
…いや、俺の動機は
俺はあくまで瞬間瞬間に己の良心に従ったまでで、おっぱいワンチャンだの確定おっぱいだの言い出したのは
「あっ、あれがそう〜?」
などど、俺が思いを巡らせているうちに、目の前には俺の拠点の姿が見え始めていた。
それは、無骨なまでのコンクリート直方体で、正面には頑丈なシャッターを備えた
「ああ、そうだ」
「う、う〜ん。たしかに頑丈そうだけど…ちょっと狭そうかも? まあ、外にテント張るよりはマシかぁ」
リモコンでシャッターを開いた俺は
「んえっ? 冷蔵庫とかどこにあんの、そのお魚とか腐っちゃうじゃん…?」
工具類が棚に置かれているだけの
「もしかして車の中で寝るってこと〜? お風呂なしは女の子にはちょいキツめなんですけど〜!」
ギャーギャーとうるさい
…ふふっ、思えばこの拠点を他人に見せるのは、初めての事になるな。
まあ、驚かせよう。
「こっちだ」
俺は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます