第13話 『ドキワク! ぼっちで夜の学園に大侵入スペシャル』

バレントくんと別れ、私とイザクさんは医務室へ。我が上司はドクター・シシスと存分にイチャついてから、本題へ。イチャつきシーンは割愛。今回もお熱いこって。居合わせた身代わり令嬢(独り身)からは、「いい加減にしろ。放置される私の身にもなれ」と怒りの声が届いております。現場からは以上です。


「さて、今日の予定だが」


イザクさんが言うと、後ろのカーテンからシェズ&シェナが出てきた。手には何やらパネルのようなものを持っている。私の目の前まで来ると、バンッとそれをひっくり返す。


「題して、『ドキワク! ぼっちで夜の学園に大侵入スペシャル』!」

「ドンドン、パフパフ!」


ああ、頭が痛い。本当にシェズ&シェナのキャラがつかめなくて、反応に困る。コレは何の動画? 完全に企画じゃん、そのパネル、サムネじゃん。向こうでよく見ていた動画配信サイトを思い出す。


「って待って。ぼっちで、」

「夜の学園に大侵入スペシャル!」


私の言葉の後を引き継いで、シェズちゃんが答える。うん、分かってるよ。意味はちゃんと伝わってる。問題は内容。ぼっちで夜の学園。何も起こらないハズもなく……!? なんてふざけている場合じゃない。夜の学園がいかに恐ろしいか。興味本位で肝試しなんかした日には、それはそれは後悔することになる。そう、あれは私が高校2年生のとき。あ、聞いてない?


「厳密に言えば、ぼっちではない。偵察係のバレントが遠くで見守っている」


イザクさんは窓の外、空の方を見つめる。亡くなってないからね、バレントくん。


「どうして遠くから? 近くにいた方がいいんじゃないの?」


ドクター・シシスが人数分の飲み物をお盆にのせて、奥から顔を出した。ナイス助け舟。持つべきものは優しいレディーである。これにはイザクさんも思わず、


「いや、1人でいい。バレントは声がデカいからな、警備員に見つかったら厄介だ」

「ちょ、ちょっと待ってください! え、学園関係者に話通してないんですか?」

「してないぞ」


いわく、レゾイア様の好感度アップ計画に関与しているのはごく少数。学園側に1人、カチョルイさんだけだそうで。学園長ですら知らないらしい。カチョルイさんの権力がいかに強大なものであるか分かる。ヘタしたら学園長より上かも?


「そういう訳で、問題が発生してもすぐには対応できない。まあ、これくらいは自分で乗り切れ。やっていけないぞ」

「ぞ」

「ぞ」


シェズ&シェナがうんうんうなずきながら、相槌を入れる。無事に帰ってこれたら、2人の観察記録を始めよう。気になりすぎて、夜も眠れない。


「そろそろバレントが来る頃だ。合流したらすぐ出発。心の準備だけしておけ」

「おおお、お待ちくだされ!」

「なんだ、その言葉遣い」

「いいから教えてください! そもそもですね、今回の目的というのは」

「学園内がどんな感じかつかむこと。活動時間が放課後とはいえ、教室の場所くらいは知っていた方がいいだろう」


イヤ~な予感がする。イザクさんがニヤリと笑い、シェズ&シェナがくすくす笑い、ドクター・シシスが視線をそらした。あからさまに。


「……何か企んでますね」


私の問いには答えず、イザクさんは右手を上に。キザったらしく指パッチンすると、忠実なしもべ、シェズ&シェナがまたパネルを持ってくる。はい、今回の企画は~?


「題して、『あちこちに散らばったレゾイア様の紋章を探せ! イン、リコゼット学園』~!」


誰が味方か分からなくなってきました。

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