第6話 ギャップ萌えがカギ!
ギャップ萌えをご存じでしょうか。普段はツンツンのあの子が、2人きりになるとデレデレに。いわゆる『ツンデレ』ですね。他にも色々と誕生してはいますが、王道かつ人気となると、やっぱりツンデレが強い。で、えーっと、そのギャップ萌えで合ってる?
「合ってるぞ」
声に出していたみたい。イザクさんがじとーっとこちらを見ながら答えた。
「レゾイア様の好感度を上げるためには、もうコレしかないんだ」
「ギャップ萌え、ですか」
「そうだ。唯一残った、最後の手段だ」
他にもありそうだけどなあ。
「顔に出てるぞ」
「はっ、失礼いたしました!」
異世界に来てまで、向こうと同じことを言われてしまった。分かりやすくてチョロい、私のことをそう評した男がいたっけ。元カレ、どこかで不幸になっていますように。
「ギャップ萌えの力を舐めてもらっては困る。古代ウェスニディアでは、悪行三昧で民に嫌われていた王が、自分の身代わりに善行を積ませることで人気を回復させた例もあったそうだ」
「はあ」
「それで死をも免れ、多少のイタズラは目をつぶってもらえるようになったとか」
「なるほど」
「他にも各地に逸話が残っているんだぞ! その目はなんだ、その目は!」
だって、聞いたことないんだもん。ギャップ萌えが世界を救った話なんて。てかギャップ萌え! そんな古くから、古代ウェスニディア時代から!? 待って、そもそも古代ウェスニディアって何!? 『Sweet Happy Destiny』の世界ってどういう設定なの?
「いいか、S01番。そこになおれ。空っぽになった脳に、ギャップ萌えの素晴らしさを刻み込んでやる!」
「空っぽになった脳! 確かに記憶はございませんが!」
「やかましい、立て! 座れ!」
「どっち!」
ギャーギャーやり合っていると、後ろからぬっと手が伸びてきた。あっというより先に、口を塞がれる。脳内を物騒な言葉がぐるぐる回る。暗殺者。室内の空気が一気に張り詰める。目の前のイザクさんはというと、人差し指を口元に当てて動かない。話すな、ってことね。いや、そもそも話せないんですが。
「シェズ、シェナ。そいつをロッカーに」
口元の手が離れる。どうやら犯人はシェズ……かシェナだったらしい。イザクさんの指示に返事もせず、私の腕をとった。ずるずると引きずられ、ロッカーに押し込められる。急展開についていけない。何が起きているのかも分からないまま、とにかく息をひそめる。
医務室にノックが響く。
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