第171話 また、ズル要素が見つかります

 妙な反応が返ってきたんで、私も同じ様な反応を返してしまう。


「え」


 するとオックスさんが急にそっぽをむいて、顎ヒゲをこすり始めた。


「そ、そうだな」


 腕を組んで、高速で何度も頷く空さん。


「い、今提案しようと思ってたところ!」


 もう探索も終わったし。それでいいよね。


「はい、じゃあ一旦バーサスフレームに戻りましょう」

「そうだな」

「今、提案しようと思ってたところ!」


 にしても根っこが邪魔だなあ。

 何処からか伸びてきている植物の根っこが、そこら中にびっしり。

 切ると変な粘液出てくるし。


「なに、この植物。イルさん分かる?」

『ヤコウ草です。マイマスター』

「地球にはない植物?」

『はい。品種改良によって生まれた植物で、思考加速のステータスアップ薬の原材料になります。この粘液自体にも、思考加速ステータスアップの効果が少しあります』


 すると空さんが粘液を掬った。


「すごっ、これ舐めたら勲功ポイント無しで思考加速できる!?」

『ただし、猛毒です』


 空さんが舐める姿勢で凍りついた。


「あぶな・・・先に言おうよ、イルさん」


 空さんがちょっと青ざめている。


『ただ、マイマスターには〖強靭な胃袋〗のスキルがあるので毒の効果がありません』


 急にイルさんに『大丈夫』と言われ、私はビックリする。


「え、まじ? 舐めても大丈夫なの?」

『はい。ステータスアップ効果だけが残ります』


 すると空さんと、オックスさんが騒ぎ出した。


「スウ、ズルい!」

「さすがスウ。ズルい」

「えっ、私に言われても・・・・」


 空さんが、ドローンに尋ねる。


「スター、〖強靭な胃袋〗って何を倒したら貰えるの?」

『ゴブリンよ。ちなみに★★★★4のSレア、10億分の1の確率よ』


 オックスさんが唸る。


「地球人が今80億人だから、その8分の1を全滅させたら一つ出る計算か」

「出る気がしないし!!」

「オックスさん・・・地球人で換算しないでください、怖いです」


 空さんが出るわけがないと絶望して、私はオックスさんの思考に震えた。

 空さんは、私の肩を持ってガクガク揺らしてくる。


「スウはよくそんなのでたねぇ。ズルい。いやもういっそ、スウい」

「変な言葉作らないで・・・・ウチの視聴者が使いだしたらどうするの」


❝ほんと、まったくスウい❞

❝とことんスウいわ❞

❝これはスウい❞


「ほら!」

「に゛ゃっはっは」


 笑ってごまかされた気がする・・・。


「――〖奇跡〗っていう印石が凄く出やすくなるスキルをもっているから、出やすいんだよね」

「いいなあ、どうやって手に入れたの?」

「〈発狂〉デスロードをクリアして・・・」

「それこそ無理ぢゃん!! あたし〈錯乱〉の2章もクリアできないんだけど!!」

「俺は〈発狂〉の4章までだな」


❝オックスさんもスゲーな❞

❝人間卒業試験合格者じゃん❞

❝〈発狂〉に行けるだけで、上位0.1%なんだよな❞


 ・・・というか〖奇跡〗は、もう二度と誰にも出ない可能性もあるんだよね。


 うーん。私が〈強靭な胃袋〉を出して、空さんにプレゼントする事もできるんだけど。もちろん出るかは分かんないんだけど。

 私は空さんに耳打ちしようと手招いて、耳に口を寄せる。


「なに、急に『ふー』とかしないでよ、あたし耳が弱いから」

「しないよ・・・」

「スウのASMRよかったわ」

「もう、しらない・・・」

「冗談冗談! なになに?」

「えっと――」


 私はやり方を説明する。


「――という事ができるんだ。私の身がタブン危ないから、秘密にしてね」

「〖サイ――むぐっ――」


 空さんが、秘密を言いそうになったんで口を抑える。

 すると察して、言い直してくれた。


「――そんな方法があるの!? 是非お願い!!」

「りょかい。じゃあ一旦配信終わらせたいんだけど」

「そっか、おけおけ。一旦? 再開するの?」

「そこはお任せで」

「じゃあちょっと配信を休憩します。―― 一旦、乙星~」


 あっさり配信を終える空さん。凄いサバサバしてるなあ。

 オックスさんも配信を終わらせだした。


「じゃあこっちは一旦ではなく今日は完全に配信を終わろう。続きを見たい場合、空かスウの方へ行ってくれ」


 オックスさんは完全に終わらせたみたい。


「じゃあこっちも一旦休憩します。また後でよろしくお願いします」


❝おスウかれ~❞

❝お好かれさま~❞

❝おスウかれ~❞

❝osuukare-sama‐❞


 これで秘密は守られるかな。


「よし、涼姫やっちゃって」

「はい、星香せいかさん――フェアリーさんカムヒヤ!!」


 星香は、星ノ空さんの本名。

 星の香りなんて、情緒ある名前で素敵。


 3分ほどで降りてくるフェアリーさん。

 早速乗り込んで、武器の準備。

 ただまあ、黒体放射は使えない。


「これフェアリーさん使わないで、私が倉庫開いて吹き飛ばしても良かったような」


 あーでも、黒体放射使わないならバーサスフレームでもビル解体と地面の下の巣を破壊は結構大変だなあ。

 荷電粒子砲も使えないし。

 私はフェアリーさんを人型形態にする。


「とりあえずイルさん、〈励起バルカン〉」


 フェアリーさんが、胸からビームを連射してビルを解体していく。

 にしても、未来の建造物がえらく固くて大変。


『手伝うぞ』


 オックスさんが、雄牛と砦を混ぜたみたいな人型兵器の素手で建物を〝千切っては投げ、千切っては投げ〟しだした。

 豪快だなあ・・・。

 オックスさんの機体の名前は、ブル・フォートレス。


 空さんは、ヒトデを背負った光の巨人みたいな機体で屋上の乗り物を退避させてる。気に入ったのかな?


『子供用の乗り物ばっかりだし、なんかここで遊んでた子供が悲しむかなって』


 ・・・なるほど優しい。

 空さんの機体の名前は、スタートスター。

 ――ん・・・・あ! 背中のヒトデって星だったのか!

 ・・・空さんにヒトデとか言わなくて良かった。


 おっと、ゴブリンが建物から逃げ出してきた。

 踏もう。


 ぷち


『マスター、印石〈暗視〉が出ました』


 ハズレかあ。


 やがて建物がなくなり、〈臨界励起放射〉の熱で巣を焼いていく。


「バーサスフレームで巣の掃除って、結構難しいですね」

『だな、人間も蟻の巣の掃除は難しいしな』

「水を流し込んだくらいでは死なないでしょうし、焼けた金属をこの巣を埋め尽くすほど流し込むのは難しいですよね。ゴブリンに効く煙の毒でもあればいいけど」


 私がどうやって処理するか考えていると、空さんの星を背負ったロボが停止する。


『え・・・・ドン引きなんだけど――女子の発想じゃないんだけど』

「そ、そうですか!?」


 私が慌てていると、オックスさんがフォローを入れてくれる。


『俺は、いい発想だとは思うがな。なんにしてもバーサスフレームを使うのは良い。生身でこの穴を探索するよりは早い。あと、安全にはえられまい』

「で、ですよね!」


 「女子の発想じゃない」っていう部分には全くフォローが入ってない気がするけど、とりあえず話がズレてよかった。ホッとしていると、イルさんから報告が入る。


 イルさんが眼鏡をかける。


『マスター、〈強靭な胃袋〉の印石がでました』


~~~


 投稿時間悩んでます。

 曜日ごとに移動しなくて良い時間にしたかったんですが。

 やっぱり平日は6時と21時にしようかな・・・。これなら6時に読んでくれている方も7時に読んでくださっている方も読めますし。朝は忙しいですからね・・・。

 日曜は流石に6時に投稿すると残酷な結末になるんで、8時と21時にします。


あと、80万文字行きました!🎉

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