第170話 さらに色々手に入れます
「ギター、お前は未来も変わらねぇな!」
「ベース君も変わらないねえ!」
二人が楽器を弾きだす。
オックスさんがギター、空さんがベース。楽しそうにジャカジャカ弾くんで、私は横でオカリナを吹くしか無かった。
ぴーひょろろ~。
当然、音に誘われてやってきたゴブリンがいて掃討しました。
「〖マッピング〗〖念動力〗」
私が〖念動力〗で撃つ銃で、蜂の巣になっていくゴブリンたち。
「スウがいると、探索が楽すぎるぞ」
「ほんとスウがいない時の探索は、オーガとか滅茶苦茶大変だったのに。あたし、もうスウとしか探索行けない体になってきたわ」
オックスさんと空さんが、オカリナを吹きながら宙に浮かべたアサルトライフルでゴブリンを撃ち抜く私に笑う。
照れた私が「ぴーひょろろ~」と返すと、空さんが「に゛ゃははは」と笑って、私が吹くオカリナを見た。
「オカリナって結構いい音するんだね」
「だ、だね」
「貸して貸して」
空さんが私の手から、オカリナを取る。
そして、口元に近づけて――、
「え」
――当たり前に吹いた。
私はその光景を、プルプル震えながら指さした。
すると、空さんがオカリナを吹きながら首を傾げる。
「どした?」
「かん、かん、かんせつ」
「関節?
「間接キス」
「ぶっ、―――ぶひゃひゃひゃひゃひゃ」
空さんが、物凄い笑い方をしながらお腹を抱える。
「スウは、間接キスでそんなに真っ赤になってるの!? 小学生かよ~! しかも女子同士だし!」
だって!
❝スウたん、純粋培養すぎ❞
❝アリスウもいいけど、ソラスウもいいな❞
私が絶句しながら口をパクパクさせていると、空さんが顔を近づけてくる。
「チュ~する?」
「し、しないよ!」
と、そこで空さんが目を丸くした。
「に゛ゃはに゛ゃは」笑いながら距離を取る。
急に様子が変わったんで、私は尋ねる。
「ど、どうしたの?」
「アリスがウチの配信に来たわ。❝NTR止めてください❞って。びゃははは。アリスのヤツ、多分スウの配信視聴中だわ。ゔぁっはっは」
アリス!? 人気モデルが「NTR」とか、何いってんの!?
空さんがベースをべんべん弾きながら「私は~♪ 子供が欲しい、だから安心しろアリス~♪」
とか即興曲を歌った。
空さんのライブにあわせて、私もぴーひょろ吹――間接キスするとこだった。
その時、オックスさんが警戒の声を出した。
「見たこと無いのが来たぞ」
イルさんがすぐさま反応。
『マイマスター、オークです』
「オーク?」
『高い科学力を持ったMoBです。ゴブリンなどに兵器を提供しています』
え、それってヤバくね?
オークがなんかでっかいバズーカみたいなのを構えようとしたので、私は先手を打って、バーサスフレーム用の機関銃で吹き飛ばした。
『マ・・・マイマスター・・・・それでは盛り上がりません・・・』
「盛り上がらなくて良い」
『マ・・・マイマスター・・・・印石が出たようです』
「何の印石?」
『〈洗う〉です』
おお・・・女の子としては嬉しい。体育のあととか、放課後付近とか体を奇麗にしたいタイミングは数しれず。
私が早速〖洗う〗を身に着けていると、ひとしきり楽器を〈時空倉庫〉にしまったオックスさんがロケランを持ち上げて言う。
「行くぞ~」
「あ、はい」
「ういうい~」
最早オークに、私が負けるわけ無いという感じだ。
これは信頼で、いいのかな?
その後さらにアウトドア用品屋を漁り、隣のレストラン街にやって来た。
オックスさんがコンバットナイフみたいなので蔦を払いながら、レストランの中を覗いた。
「流石に食いモンは、もう駄目だろうな」
「ですねえ、保存食ですら――運が良ければ缶詰・・・・いやレストランに缶詰ってありますかね――」
私は返事しながら、ふと思い浮かんだので言ってみる。
「――あっ。ワインとかは、どうなんでしょう」
オックスさんが顎に手をあてて、考える姿勢になる。
「・・・・ワインか。保存状態が良ければ、1000年でも保つらしいな」
空さんの目も輝いた。
「いいね」
私はビックリ。
「空さん飲むの?」
学生なのに?
私のツッコミに、空さんが首をふる。
「呑まないよ!? 売るんだよ!!」
「だ、だよね!」
空さんが退学とかなったら大変。
私と空さんが慌てていると、すでに一軒のレストランの奥に入っていたオックスさんのよく通る声が聞こえてきた。
「行けそうだぞ、そうとう環境がいい」
・・・・流石の超科学。
オックスさんが両手にボトルを持って出てくる。
1000年モノのワイン―――幾らするんだろう。
オックスさんは、ついでにキャビアっぽい缶詰も持っていた。
「ここのワインはまだ全然いけるだろう――キャビアもどんな仕組みか知らんが、現代とは違うらしくて行けるかもしれん。スウ、いい事に気付いてくれた。ワインは俺に全部買い取らせてくれ」
「え。オックスさん、自分で飲むんですか?」
「おう、こんな良いモノ普通は味わえないからな。店で出しても良いし――だが、幾らで出そうか」
なるほどオックスさんはクランハウスでバーを営んでいるんだもんね。
コメントに ❝呑みにいきてえ!❞ とか ❝だけど高いよなあ❞ とか ❝ワイン探しにあの惑星行くか――!❞ なんて流れてくる。
トレジャーハンターが生まれようとしてる。
「凄く高そうですね・・・」
地球だと1000年モノのワインとか、歴史的価値まで出てきちゃいそう。
「後で食品売り場も行きたいな――酒屋とかこの街にあるのか? ――そっちはコハクや、リあンを誘って来るか。あいつらなら喜ぶ」
「お酒ってそんなに美味しいんですか・・・良く分からない世界です」
「そのうち分かるだろう。その時の為にこのワインも何本か残しておこう」
「は、はあ」
「おー」
生返事の私に対して、空さんは興味深げに嬉しそうにしていた。
その後、屋上まで来たけど、ゴブリンの巣みたいなのは無かった。
「こりゃ、地下の方だったか?」
「みたいですね」
私がオックスさんに返事をすると、屋上遊園地の飛行機な乗り物につっぷす空さん。
「えー。階段はもう疲れたよぉ、エレベーターで行きたい」
「エレベーターは止まってるから無理だ」
確かにちょっと疲れたよね。インドアな私的にも階段はウンザリ――そっか。
「じゃあ直接、下に降りましょう」
「え?」
「ん?」
空さんとオックスさんが首を傾げる。
「〖飛行〗〖念動力〗」
私は〖飛行〗スキルで光の翼を生やして、オックスさんと空さんを〖念動力〗で浮かべた。
「お? お?」
空さんが、体が浮いたので目を白黒させている。
「これで、1階まで降ります。怖いならバーサスフレームの時空倉庫に入ってもらう方法もありますけど」
「怖くない怖くない! さすがスウ、ナイス!」
「なるほど。本当にスウは、一家に一人欲しい便利さだな」
「家具じゃないんですよ」
オックスさんに、一応ツッコミを返しておいた。
二人を連れて スイー と地面に降りて着地。
「着きました」
「早い」
「マジで楽だったな。助かった」
「いえ、じゃあ地下に行きますか」
「おし」
「GoGo」
ところが、地下はとんでもないことになっていた。
「これは・・・マジのダンジョンじゃないか」
「アリの巣?」
階段を降りると、だんだん辺りの様子がおかしくなり――とうとう土の洞窟になった。
ちなみに地下一階の食品売り場で見つけたワインは、全部駄目になっていて、オックスさんは項垂れた。
オックスさんと空さんが、巣の様子を見ながら相談する。
「これは、土壁が脆いな。ロケランや手榴弾を使うのは不味いかもしれない」
「火気も止めたほうが良いね。一酸化炭素中毒になりそう――まあヘッドギア被れば大丈夫だとは思うけど」
「ゴブリンの巣の最深部だ。相当な数がいるだろう、気合入れていくぞ」
「うん。ここからは、気を引き締めないとね」
二人が真剣な表情になる。
確かに〖マッピング〗にも、凄まじい数のモンスターの反応がある。
よし、これはもう。
「バーサスフレームで吹き飛ばしましょう」
一瞬の間が有って、二人が私の瞳を見た。
「え」
「え」
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