第165話 伝道師を見つけます
やがてたどり着いた、遺跡――元・玩具工場らしい。
マリさんが玩具工場にしてはなんだか堅牢そうな建物に歩みながら、後ろをヒヨコのように着いていく私とアリスに説明してくれる。
「まあ、発見場所の予想は出来たと思うけど。玩具工場で見つけたんだよね。とりあえず中に入ってみよう」
「はい」
「そうですね」
私とアリスが、マリさんの言葉に返事をするとマリさんは工場の崩れかけていた扉を押しのけて、背中で支えながら「先に入って」と言ってからさらに説明してくれる。
重そうな扉なのに、簡単に持ち上げて支えてる――流石すごいフィジカル。
わたしは、マリさんに尋ねておく。
「中って安全なんですか?」
「玩具工場なので、あんまり危険は無かったよ。警備ロボくらい、装備してたのもバルカンくらいだったし」
十分、危険じゃないですか。
「・・・一応、武器は取り出しておきますね」
私は、ピストルカービン・ニューゲームをしっかりCARシステムに構え――ようと思ったけど、マリさんが前――しかも結構近くに来たので、普通に構えた。
アリスも蛍丸を倉庫から――ちがう十手だ、今日買った十手刀を取り出す。
私も左手にドリルを嵌めようとすると、マリさんに止められた。
「それは・・・・止めておいたほうが良いと思うよ」
実に遺憾である。
玩具工場の中は――なんと、まだ稼働していた。
「工場・・・・まだ動いてるじゃないですか」
「工場自体どころか、工場の修理までオートメーションで動き続けているよ。1000年分のイントロフレームが巨大な時空倉庫に貯ってた」
「じゃあイントロフレームが欲しいなら、倉庫に行けばいくらでも手に入る感じです?」
「そう。多分、地球人全員に配っても余裕で余ると思う――イントロフレームを手に入れる道の警備ロボはもう倒したから、欲しかったら欲しいだけ持っていけるよ。行ってみようか、あっち」
マリさんが指を指して歩きだした方向に、人間サイズのペットボトルに手足を生やしたような形のメカが18体ほど倒れていた。
全部、一撃で動力を撃ち抜かれている。
「この数を、まとめて倒してる!? ――何人で来たんですか?」
「ん、ボク一人でだよ?」
「えっ、一人で制圧したんですか・・・?」
「これでも本職だからね」
「怖い」
この数のバルカンを持ってる相手だよ? しかも全部一撃とか。
「まあこれでもボクは、オリンピックのライフル競技50m、3姿勢で銀を取ってるからね」
「え・・・本当に怖い・・・」
「怖くないよ」
マリさんが「アハハ」笑って指を指す。
「視えてきたね、あの倉庫だよ――一応、第1発見者のボクが連合に連絡して管理してもらってるからね。〝あの倉庫自体を持ってく〟とか、どうこうしようとしたら犯罪で一発BANだよ。スウちゃんも、スウちゃんの視聴者さん注意してね」
「そんな事考えてませんよ・・・ちょっとしか」
❝し、しませんよ・・・・ビクビク❞
❝・・・考えてないよですよ――ちょっとしか❞
「ごめんなさい、倉庫自体に価値があるんじゃないの? なんて思ってました」
「あはは、流石マンチプレイヤー。対策はさせてもらったよ――中身は幾らでも持っていって良いから。ただし、イントロフレームの付属武器は日本に入れないように、普通に国に『めっ』てされるから」
「でも、いいんですか? マリさんのイントロフレームが売れなくなってしまいませんか?」
「ボクは主に、布教したくて売ってただけだから。フリマで買った時、そんなに高くなかっただろう?」
「確かに10クレジット(100円)でいいのかなあ? とは思ってました」
「スウちゃん達も、一杯持って帰って普及してよ」
私は、勢い込んで返事を返す。
「是非!」
私は言ってピンとくる。
「そうだ、一部は視聴者プレゼントにしよましょうか」
「いいね、頼むよ」
マリさんが頷くと、歓声がコメントから返って来た。
❝おおお!❞
❝応募する!❞
「そんで当たりはサイン入りとか」
❝ぜひぜひ!!❞
❝大当たりは二人のサイン入りとか!!❞
私の省エネサインで喜んでもらえるとは――でもアリスはなんか、一式 Alice♥とか丁寧に書いてるもんだから、サインするの大変そうなんだよね。
私は、倉庫にあったイントロフレームに付けるアイテムを見て呟いた。
「イントロフレームに付けるロケットエンジンとかもあるんですね――真空での戦いも想定されてたのかな?」
「それ危ないから注意だよ。噴射口からはかなりの高温が出るから――あと、変なことしたら爆発するみたいだし」
「け、結構危ないですね」
「結構危ないんだよ、イントロフレームって」
その後、様々なタイプのイントロフレームが見つかる。
マリさんが私の手にある小さなイントロフレームを視て、感心する。
「へえ、ミニサイズのイントロフレームなんてあったんだね」
アリスも発見したようで、
「色んな変形の仕方をするタイプのフレームとかも、あるんですね」
なんて言っていた。
だけど、――私は周りを見回して言う。
「でも、やっぱりルールブックとかはないですね」
「だね・・・別の場所も探してみるかい?」
「ですね」
さらにその後、建物の中を4階までくまなく調べたけど、やっぱりルールが書かれた書籍やチップは無かった。
私は辺りの警戒を解かないまま、提案してみる。
「これは、普通の家とか本屋さんとかを探したほうが良いかも知れませんね」
「うーん、そうだねぇ」
マリさんが返事をしながら、屋上の物らしき扉を開いた時だった。
ぐぽぉん という音がした。
音の方向に銃口を向けると、三つ目を光らせて立ち上がる人型のロボット。
私は「警備ロボ!?」と、一瞬警戒したけれど。
なんだか向こうから、友好的な雰囲気で話しかけられた。時代風な言葉だけど。
『久しいな、人がここに来るのは』
〝彼〟は3つの眼を細めて笑顔を作っている。
どうやら、こっちを追い出したりする様な意思はないみたい。
でも、警備ロボとかじゃないなら何者だろう?
「貴方は、ヒューマノイドさんかデータノイドさんですか?」
私の疑問に、僅かな困惑を交えた答えが返ってきた。
『ヒューマノイド? なんだそれは。データノイドは知っているが違う――我はアンドロイド。同時に、イントロフレームの伝道師である』
アンドロイドにして〝伝道師〟!? つまりイントロフレームのあれこれを伝える役目のアンドロイドさんって事だよね!?
ルールも教えてくれそう!!
私が喜んでいると、一歩踏みしめようとした〝彼〟が転びそうになる。
私は慌てて彼を〖念動力〗で支えた。
アリスも〖重力操作〗を使ったようだ。
『助かった客人。どうやら体の調子が良くないようだ――我は一体、何年ほど眠っていたのだ?』
「最悪1100年程かも知れません」
『そうか・・・ずいぶん遠き時に来たのだな』
「あの、修理とか」
『それには及ばん、見れば、街もあの有り様――ならば、我の役目も最早なし』
ふと、〝彼〟が街の方へ視線を向けた。
そこには、1100年前に滅びたであろう街。
彼は悲しそうに、何かを決意しているようだ。
私は少し慌てる。
「いえ! あの、これのルールを教えてもらえませんか!?」
私が十六夜テイルを握って示すと、〝彼〟が止まった。
ぽぉん とか ピコピコ とか鳴ってる。
しばらくして、彼はぎこちない動きで・・・体のパーツの一部を〝落としながら〟私に近づいてくる。
『おお・・・・これは・・・・これは、これは? これは!』
彼が、マジックハンドみたいな手を感動するように震わせ、私の持つ十六夜テイルに近づける。
『・・・これはレプリケーター作ではないな・・・・削り出したのか。――なんたる・・・翼の加工、見事。空力を乱さないために一切の歪みも、飛び出しもない――いや、これは乱流翼か? しかしそれ以外は驚嘆するほど滑らかだ。――塗装も素晴らしい、僅かに輝かせるためだけに何重にも塗り重ねているのか。しかもその塗り重ねすら、重心を考慮している。――技量、熱量、驚嘆に値する』
「塗装の乾燥は、乾燥機で急いでしまいましたが」
『いいや分かる。汝が作品に込めた愛が、我には見える』
私は愛とか言われて、ちょっと照れくさくなる。
「せっかく綺麗な名前を貰ったんで、綺麗に仕上げてみました」
『ほう、綺麗な名か。この子の名は、なんと?』
「十六夜テイルです」
『十六夜テイル・・・よき名だ――汝、確かイントロフレームのルールを知りたいと言ったな? それは、ソルダート競技のやり方を知りたいという意味で良いか?』
「イントロフレームで対戦する競技がソルダートと言うなら、その通りです」
『よし! ならば、いざソルダートで競おう。見よ――』
彼が、後ろを示す。
そこには、25メートルプールほどの試合場らしき物があった。
『――ここはソルダートの試合場。ならば汝の力で手に入れよ、ソルダートに勝利して得るのだ。それこそ、ソルダートプレイヤーであろう!?』
「初心者でも、ソルダートプレイヤーと呼んで頂けるのなら!!」
『当然だ! プラモを愛し、プラモで戦うことを愛するものをソルダートプレイヤーと呼ぶ!!』
彼が私から離れて、競技者の立ち位置らしいボックスに向かう――足のキャタピラが錆ているのか、かなり辛そうだ。
やがて彼はボックスの中に立った。
私も彼を真似て、彼の入ったボックスの、向かい側にあったボックスに立つ。
『我が名は、エワン301。イントロフレームの伝道師なり』
「私は、鈴――スウ――配信者です!」
『ほう、配信者か。今も配信を?』
「はい」
『これは僥倖。では、是非イントロフレームを広めてくれ。さてスウと視聴者よ、ソルダートには幾つかの別種のルールがある。だがどうやら我には時間がない、もっとも白熱する競技で競おう、それに勝てば全てのルールを教えよう』
「なるほど、色んなルールがあるんですね」
私が返すと、
『また我に勝ったなら、この工場と我に出来ることなら、一つだけ願いをかなえると約束しよう』
「えっ、願いですか?」
私は言われて一つの願いを思いつく。なので尋ねておく。
「――それって3人で1つですか?」
『うむ、我にはあまり時間が残されていないようなのでな。すまぬ』
3人で1つと言う事なので、他の二人と相談した。
「みんな。願いはさ、エワンさんに修理を受けて欲しいっていうのはどうかな・・・? ――おせっかいかもだけど、提案してみたい」
「それがいいと思います」
「うん、ぼくもいいと思うよ」
「良かったです。願いは、決まりました」
『よし、では3人共ボックスに入るのだ。そして眼の前の開始線へ、汝等の機体を設置せよ』
私が十六夜テイルの背中のボタンを押すと、十六夜テイルの目が発光して、宙返りして開始線の前に立った。
なんか、――今までより気合が入った宙返りに視えた気がした。
小さなプラモデルの背中に、闘志が
ふと、十六夜テイルが肩越しにこっちを観た。
(――あれ、また!? 私は何も操作してないのに?)
と思ったけど、十六夜テイルは微動だにしていない。
(い、今、見たのは、幻覚・・・? ――いや、もしかすると〖サイコメトリー〗とかが反応したのかな?)
すると、まただ。
〝何か嬉しそうに抱き合い、笑いあう女の子が二人〟の光景。
そうだこの二人の内、一人は命理ちゃんだ。
じゃあ、もう一人は? ――金髪碧眼で・・・・アリスにそっくり。
私は、もう一人に、夏の光景にいた無垢の少女の面影を見た。
そうだ。もう一人は、アイリスさんに似てるんだ。
気づくと同時、光景は風にさらわれるように消えた。
私が少し考えていると、アリスがステイルを手に乗せた。
するとステイルは、自ら宙返りして開始線へ。
さらにマリさんは美少女フィギュアが〝戦車を着てる〟みたいな機体を投げた。
――え、投げるんだ?
私はちょっとビックリしたけど、マリさんの機体は見事空中で姿勢を制御して、開始線に立った。
私達が準備万端になると、エワンさんから初めのルール説明が入る。
『このルールでは、まず機体の美しさで、動力に使えるワット数が決まる』
「なるほど。美しさはどうやって決めるんですか? 審査員とか?」
『専用AIを使う。このAIの中には数億パターンを超えるプラモデルの作例が記録さている。色彩、造形、丁寧さ、改造or再現度、例外度の5つ、それぞれ100ワット上限で判断する』
「AIかあ、現代技術でもできそうだけど。例外度――なるほど登録されていないパターンにも価値を見出すんですね」
『その通り! では、判定を開始しよう。
機体名、十六夜テイル。
作成者、スウ。
色彩――プロに迫る美しさ81点!
造形――飛行機として実際に飛べる程の機能美、そして流体力学に基づいた素人とは思えない造形98点!
丁寧さ――非常に繊細に、丁寧に作られている88点!
改造or再現度――実用的で素晴らしい改造80点!
例外度――飛行機としては従来ある技術ばかりで、オリジナリティは甘い45点!
計392ワット!!』
結構高い?
エワンさんがアリスの機体に向き直る。
『次、機体名、剣士機ステイル。
作成者、スウ&アリス。
色彩――色の配置は非常に整っており70点!
造形――形は素組みなので50点!
丁寧さ――丁寧だが、筆の跡や、マスキングの弱さからはみ出しが見られ甘い。しかし、組み上げに関しては非常に美しい63点!
改造or再現度――改造も再現も行われておらず30点!
例外度――色にオリジナリティがある42点!
計255ワット!!』
アリスが口を尖らせる。
「これはちょっと、低くないですか? しかも丁寧さに関しては、スウさんがやったところだけ褒められてしまいました」
アリスがむくれちゃった。そんな顔も可愛い。
「ま、まあ、アリスは初めてプラモデルを作ったんだから」
『ほう、初めてか。初めてでこれなら、すばらしいぞ』
「褒められました?」
『褒められてる褒められてる』
「えへへ」
アリスが顔をトロかした。やっぱり可愛い。
『さて、最後に』
エワンさんがマリさんの機体に向き直る。
まるで美少女フィギュアが〝戦車を着ている〟みたいな感じだけど、まるで戦場を駆け回っている途中であるかのような見た目の塗装。
『次、機体名、オトレレ。
作成者、マリ。
色彩――素晴らしい色彩感覚と塗装技術、まるで本物のようだ、プロのジオラマ級95点!』
私とアリスがどよめく。
「「おおお」」
❝スゲェ❞
❝確かにあれはプロ級❞
コメントもビックリしてる。
『造形――元の機体が分からぬほどなのに、完璧なルックス100点!』
100点が出た。
でも元がわからないって、銀河連合って私達の使ってるプラモデルのデータ・・・ああ、私達の未来なら有りそうだなあ。
『丁寧さ――これまたプロ級96点。
改造or再現度――凄まじい改造度99点!
例外度――造形が整いすぎていて、美しいが例外度は無い60点!
計450点ワット!!』
「た、高い」
「わたし、褒められたと思ったのに、マリさんずるいです」
アリスが「ぷー」と頬を膨らませていると、マリさんが急に背後からアリスを抱きしめるように――したかと思うと手のひらをアリスの頬の左右に伸ばして、ヒラヒラさせた。
「フグ」
アリスがさらに「プーーー」と膨れた。
可愛いけど、マリさんなかなか強烈な冗談をする。
❝マリさんヒッデェwww❞
❝でも、素材が可愛いから、フグってやられてもただ可愛いだけワロwww❞
❝ほんと一式さんズルいwww❞
『ではこちらの機体を紹介しよう!!
ジャイアントインパクト & メイガス & フェイテルワンダー
250 & 350 & 500ワットなり!』
フェイテル? 1100年前からフェイテルの概念はあったんだ?
なんかでっかくて丸みを帯びてる感じのと、魔法使いみたいな機体と、女神のような巫女のような機体が出てきた。
マリさんが腕を組んでフィールドを眺める。
私も隣で真似して、腕を組んでフィールドを眺める。
なんか二人で強キャラ感出てる。
❝マリさんは堂に入ってるのに、スウたんはなんか間抜けなんだよな❞
なんだと貴様。
「相手の機体、どう思う? スウちゃん」
「メイガスのやたらと大きいとんがり帽子は怪しいですね。――見た目のバランスが悪いので、芸術点的には、あれのせいでずいぶん減点されているはず――それでも敢えてあの形であるなら、もしかすると変形するかも知れませんね」
「君もそう思うかい? 恐らく戦闘機になると思う。戦闘機の機首だと考えると形状がシンプルすぎるけど、そもそも人が乗る物ではないからキャノピーは要らないし、あの形状はドローンとしては正しい」
「――そっか、無人機とすればあの形状はアリですね」
マリさんがジャイアントインパクトを指差す。
「大きいのはどう思う?」
「パッと見て思ったのは武器庫です」
「へえ、どうしてそう思ったんだい?」
「内部に何か入れてそうなサイズですし、歩く時、何やらジャラジャラという音が中からしました」
アリスが、ちょっと口をとがらせる。
「あんなに大きなのズルくないですか?」
するとマリさんがニヤリとした。
「どうかな?」
マリさんは最後に、フェイテルワンダーを指さす。
「500点の作品はどう思う?」
私は、フェイテルワンダーを観察しながら答える。
「見た目は完全に奇麗なロボットですが、改造も100点の筈です、何か突拍子もない行動を繰り出してくるかも」
「そうか、油断しないでおこう」
「はい」
エワンさんが ピコピコ と鳴らし、説明を続ける。
『では、戦いのルールだ。機体は、イントロフレームに付いているコアを攻撃されると撃墜となる。ただしコアは3つあり、正解のコアはただ一つ。正解は操縦する人間が設定できる』
「そして、コアを攻撃するには、イントロフレームのプラモデルを攻撃で剥がす必要があるんですね?」
『いかにも。さらに、手足のパーツを剥がされたならそこは動かなくなる。――尚、スキルなどは使用不可であるぞ。そしてこちらの機体は、作成者の動きをトレースする』
そりゃスキルは駄目だよね。使ったらスキル勝負になっちゃう。
『最後のルールだ。ソルダードではコックピットに乗り込んだ視点で戦うFPSモードと、視点がリアルのまま、機体を俯瞰視点で操作するTPSモードがある。どちらにする?』
「じゃあ、プラモデルで戦ってる感覚を味わいたいんでTPSモードで。コックピットはもうバーサスフレームで見慣れちゃってますし。みんなもそれでいいですか?」
「スウさんと同じ意見です」
「ぼくもだね」
『決まりだな――では』
わたしは、いよいよ始まると思いながら、試合場の機体を見た。
(――ん!?)
そこでアリスのステイルが持っている武器に気づく。
ちょ・・・・アレって。
「ま、まってアリス・・・ステイルの持ってる武器って、私の〈時空倉庫〉にあったカッターナイフじゃない?」
「はい、武器に丁度良いと思いまして、持たせてみました」
ステイルが抱えていたカッターの刃を チキチキチキ と出す。
デザインカッターとかじゃない。グリップがゴムで出来てる、かなりゴツいヤツ。
「いや、そういう武器もいいと思うけど――試合で本物の文房具のカッターを振り回すのはいいの?」
エワンさんが、三つ目の顔でちょっと困った表情を作る。
『・・・使うのは構わんが、流石にプラモデルが傷つくので、刃引きはしておいてほしいぞ』
「ですよね。――アリス・・・貸して」
私はステイルからカッターを受取り、鉄ヤスリとグラインダーを取り出して、カッターの歯の切れ味を無くす。
「これくらい丸くすればいいかな?」
プラモデルのランナー(組み立て前のプラモデルのパーツがついている、四角い枠)を取り出し、カッターで ギコギコ して傷がつかない事を確認すると、カッターをステイルに返した。
ステイルが、カッターを両手で受け取って抱きしめた。ちょっと可愛い。
『そこまで刃引きすれば、大丈夫そうだ。さてルールの説明は以上だ。では始めようか』
「はい!」
「ドンと来て下さい」
「さあ、行こう」
すると、25メートルプールのような試合場に、ビルを模した四角い箱が立ち上がっていく。
この試合場は、毎回ランダムで形を変えるようだ。
なんだろう、麻雀卓の下から牌がでてくるやつの凄いバージョンみたいな感じ。
今回は、あまり遮蔽の無い感じになった。
これは、銃撃が有利かな?
『レェェェッツ ソルダーーート!!』
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