第155話 行楽弁当を食べます
「そうだね、そうしよう!」
魚を探して泳いでお腹へったし。
「メープルの味付けは甘いから、スウちょっと味を変えて」
「そういう事はしないから。せっかくメープルちゃんが思いを込めて作ってくれたんだし、ちゃんと食べないと」
「――ちぇ」
❝まじで? メープルちゃんの手作りかよ❞
❝和風美人な女子中学生の手作り弁当とか、裏山❞
私は次元倉庫を開きながら、視聴者にいい笑顔を向ける。
「はっはっは、羨ましいだろう。私を崇めれば食レポ位ならしてやらんでもないぞ」
❝ヌググ❞
視聴者にハンカチを噛ませたところで、私はアリスにレジャーシートの端を渡される――地面に敷いて
その後アリスが、お弁当と食器を並べていく。
私は〈時空倉庫の鍵〉に入れている携帯冷蔵庫(時間が止まってるから意味無し)を取り出して、中からペットボトルを取り出す。
あと紙コップも配る。
「二人はどの飲み物にする?」
「わたしは、緑茶をお願いします」
アリスは、相変わらず和風。
「マスター、いつもの」
「だれがマスターやねん」
リッカはアリスに教えてもらったイギリスのオレンジジュース――英国王室御用達で、本格的な果物の味が楽しめるっていうのが売りのジュースがお気に入り。
希釈(カルピスみたいに薄める)タイプで、リッカのために天然水と一緒に冷蔵庫に入れてある。
しかもリッカは天然水にもこだわっていて、イギリスの天然水。
リッカの舌は「日本の軟水だと美味しくない」と言ってはばからない。
私はどうしよう。爽やか炭酸か昼Teaか。今日は昼Teaにしよう。
こうしてお弁当を並べたアリスと、飲み物を出した私と、なにもしなかったリッカで座った。
パラソルを刺して、パーカーを羽織れば見事に行楽気分。
最初は、アリスがお弁当を取り分けてくれた。
「メープルちゃんのお弁当本当に綺麗ですね。スウさんは、どれを頂きますか?」
「おにぎりと唐揚げと、なんかそのきれいな卵巻き!」
卵巻きは、なんか薄焼き卵で具材を包んでるみたい。
「りょうかいです。リッカは?」
「おにぎりと、唐揚げと、ウサギさんウィンナー」
「はい。じゃあ、メープルちゃんに感謝しつつ、あとは各自好きなのを取りましょう。ではいただきます」
「「いただきまーす!」」
「おにぎりの中身は何かな、この一瞬がドキドキするよね」
「ですね。(はむ)――あ! わたしは、梅ですね無難に当たりです」
アリスが嬉しそうにおにぎりを頬張る。
その横でリッカがプルプル震えだした。
「あのガキ・・・・わたしの嫌いなひじきを入れやがった・・・」
笑いながら私も ぱっくん と一口。
食レポを開始してみる。
ワサビと――
「私はなんだろうこれ、コリコリした・・・辛めのタコ――ワサ? いや、なんか普通のタコより無駄にコリコリ・・・・」
――嫌な予感がするので、深く詮索するのは止そう。
これにて、おにぎりの食レポは終了。
コメントに真相に気づいているようなのが有るが、見ない。
さて唐揚げの食レポ開始。
「おお・・・この唐揚げ、火加減完璧だね。まだ衣がサクサクしてるし、中もジューシー。中学生でこの腕かあ」
「スウさんのお弁当も美味しいですが、メープルちゃんも凄いですね」
私とアリスがメープルちゃんを褒めると、リッカが胸を張った。
「ふふん」
「・・・なんでリッカが自慢げなの――謎のきれいな卵巻きの中身は、春雨とひき肉と野菜かな? こんな料理が有るんだね。本当に美味しい」
リッカが尋ねてくる。
「そう言えば〖味操作〗はしないの?」
「じゃあ、ちょっとこのお茶の味を甘くしてみようかな」
「じゃあ、ちょっとこのひじきの味を消してみようよ」
みればリッカはひじきのおにぎりを残して、他のおにぎりを
「ちゃんと食べなよ、メープルちゃんに悪いでしょ」
「アイツは、わたしがひじきが嫌いなのを知ってて入れた。嫌がらせに付き合う筋合いはない」
「リッカの栄養を考えてだと思うけど」
「カルシウム、食物繊維、ヨウ素などどこでも摂取できる」
「やたらひじきに詳しいな。――ひじきからしか摂取できない栄養素も有ると思うけど」
「調べたけど、なかった!」
「じゃあ、私が食べるから・・・」
「よしきた」
私はリッカに押し付けられた、食べ残しのおにぎりを食べる事になった。またリッカと間接キスかぁ。
というか、なんで私、リッカのお母さんみたいな事してんの。妹みたいには思ってたけど、最早ママじゃん。
とりあえず昼Teaがストレートなんで(お弁当の時は、味を邪魔しないストレートが好き)カップに移した紅茶に甘さをちょっと加えてみる。
「〖味操作〗――おお、甘くなった」
「私の緑茶にもやってみてくれませんか?」
「りょかい、〖味操作〗」
アリスがコップを差し出して来たので、味を変えてみる。
「私のオレンジジュースにも」
「オレンジジュースを、それ以上甘くしてどうするん・・・・〖味操作〗」
すでに甘いオレンジジュースを、さらに甘くしろというリッカのリクエストにも従う。
「あー、甘い緑茶っていうのも美味しいですね」
「分かる。抹茶ケーキとか美味しいもんね」
「甘いオレンジジュースも美味しいね」
「知ってる」
私が生暖かい表情になっていると、アリスは真剣な表情になった。
「これ、カロリーを気にせず甘いもの食べ放題なんでしょうか?」
「多分そうだと思う」
「チートじゃないですか・・・」
アリスがお腹をつついた。
あっちの人は太りやすいっていうね・・・。
私は遠い目になった。
遠くでトンビみたいな鳥が キツキツキツ と鳴いていた。
アリスがボソリと呟く。
「〈真空回帰砲〉は、物質を宇宙誕生前の真空に戻すんですよね? わたしが食べたものも真空に戻してもらえないでしょうか」
この人は、何を言っているんだろう?
モデルの体型維持も、大変なんだなあ。
そこで私は、ふと思いつく。
「VRで食べれば、どんだけ美味しいもの食べても実質カロリー0だよ」
「!!!!」
アリスが、宇宙開闢でも目撃したかのような表情になった。
「涼姫、天才って謂われませんか!?」
「貴女から、よく言われます」
リッカが、オレンジジュースを飲み干して言う。
「野生の伊達み◯おがいる」
「てか、VRで食べながら本当に食事すれば、どんな味の物でも美味しく食べれるね」
「それは、VRと体を同時に動かせる涼姫しか出来ませんが」
私はまた閃く。
「あそうか、物質の味を変えられるなら別に食べ物じゃなくて唾液の味を変えてしまえば良いいじゃん?」
「な――なる程です。流石スウさん」
「流石スウさん。相変わらず
私はリッカの頬を引っ張りながら、自分の唾液を甘くしてみる。
「ああ、やっぱり出来る」
「スウさんにはもう、飴もガムも要りませんね」
「だねえ。そう言えば辛くはできるのかな」
「辛味は、味じゃないんでしたっけ」
「らしい、痛覚のはず。〖味操作〗――あ、できた。これだと冷たくもできそう〖味操作〗あー、できるなあ。なるほどなあ――じゃあ思いっきり辛く。〖味操作〗」
私は叫び声を上げることになった。
「いたいいたいいたいいたい」
驚天動地な辛味を自分に与えてのたうち回り、冷蔵庫にあった飲み物を半分飲みつくしてしまった。
コメントは❝やると思った❞とか、笑いの渦に包まれている。
「あ゛ー、こんなに辛くできるなんて――これは・・・他人にやったら結構えげつない攻撃になるかも」
「わたしにやらないでくださいね」
「わたしにやったら、立花流の技が炸裂する」
「やらないって・・・」
私がお馬鹿さんみたいな事を自分にやって後悔していると、遠くから声がした。
〜~~
前回書いた更新時間。分が、わかんない人も多いですよね>< 11分くらいです。
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