第147話 ボス討伐?します

 結ばれた腕がピクピクしてる。


 私は反転して翼を付けたことで使えるようになった、〈臨界・励起翼〉で腕を切り飛ばす。

 様子をみた空母に張り付いているプレイヤーさんが、広域通信で反応した。


『よし、みんなあのやり方で――』


 しかし、戦闘機に乗っているプレイヤーさんから返事が返ってくる。


『この嵐と弾幕の中で、出来るわけねーだろ! だいたいスウのあの飛び方なんだよ、強すぎる風を逆手に取って、わざとバランスを崩して空戦機動化してんじゃねーか』


 でも別の反応を示した三人も居た。


『まあ、出来るな』

『お前らには、エレガントなスウの真似は出来ないだろうな』

『自分も出来ますね』


 マイルズとユーさんと柏木さんが、私の真似をして腕を玉結びにする。

 流石の三人だった。


 私はフェアリーさんの機体をフリスビーのように回転させ、〈粒子加速ヨーヨー〉を主に使って広範囲の腕を一気に切り落としていく。


 こうして私と、マイルズ、ユーさん、柏木さんで半数の腕を破壊し、他の人々が半数の腕を破壊した。


 ウェンターさんから司令が掛かる。


『よし、弾幕が止んだ。全機体、本体に火力集中!!』

「りょっ!」

『オーバー』

『ああ』

『おけぇ』

『了解しました』

『おっけー』

『わかったわ』


 様々な返事と共に繰り出される、全員が持てる最大火力をドライアド本体に叩き込む。

 こうして吹き飛んだ本体の中から――

 ――核が出てきた。


 みんなが焦りだす。


『核!? まさか――あれを壊さないと、復活する!?』

『でも、もう真空回帰爆弾はないんでしょう!?』

『ちょっと、謎運営ぃぃぃぃぃぃ!!』


 大丈夫、予想通りだ。

 そして真空回帰の武器なら、もう一発撃てる。

 もしかしたら連合も予期はしていたのかも知れない。

 もう準備も済んでいる。


「命理ちゃん!」

『ええ』


 命理ちゃんが、フェアリーテイルの上で四つん這いになった。


 彼女の背中に生えた翼のようなモノ、それが紫電を発する。


 私は命理ちゃんが核に〈真空回帰砲〉を、確実に当てられるように機体をドライアドへ接近させながら、嵐を切り裂く。


「〈真空回帰砲〉発射、お願い!!」

 Copy了解


 命理ちゃんの口から放たれる、猛烈な閃光が核を撃ち貫く。

 ウェンターさんが驚いた声を出す。


『あ、あったのかい・・・? 真空回帰――砲?』


❝そうか、命理ちゃんも持ってたよな、真空回帰の武器❞

❝運営、真空回帰爆弾一発だけしか渡さないとかどういう事だよ❞

❝アイビーたんだと、うっかりって言うのがあるかも❞

❝あり得る❞

❝あり得る❞


「あり得る」


 私が視聴者と一緒に納得していると、核の有った場所にまた核が出現した。


「え、ちょ・・・もう真空回帰砲は撃てないよ!?」


 命理ちゃんの真空回帰砲は60万秒に1回。およそ1週間に1回しか撃てない。


『いや、あれはボス・コアだ。あれを壊せば41層以降が開放されるんだ。壊した人物は一人だけ、特殊な称号も貰える』


 あ、30層のボスの時に知らなくて壊せなかったやつなのかあ。


 星間ノーツの旗艦デュランダルに衝突して、デュランダルが轟沈したやつ・・・。


 私が自分の記憶に怯えていると、ウェンターさんの機体が私の方を見た。


『今回の貢献賞はどう考えてもスウ君だ。やってしまってくれ、スウ君。みんなも問題ないよね』

『問題ない』

『エレガントなスウの当然の権利だ』

『もちろんですよ』

『うん』


「え、いいんですか? 他にも活躍してた方一杯いましたけど」


 私は言ったけど、みんなから『OK』が返ってきた。


「じゃあ、ゴチになります」


 みんな問題無いみたいなので、私は言ってから〈黒体放射バルカン〉一発で撃ち抜いた。


 ガラスのように砕けて消えていくボス・コア。


 VRから頭に響く声。


『40層ボス、ユニークモンスター・ドライアドを討伐しました。クエスト〝精霊の包容〟をクリアしました。

銀河クレジット1000万。勲功ポイント250万を入手しました。

41層から50層までが開放されました。

ボスを倒した事で、★1 コモン称号:〖前進〗を手に入れました。

加速度5%上昇。

ボス・コアを壊したことで、★★★3 レア称号:〖解放者〗を手に入れました。

銀河連合の上層部で憶えが良くなる』


 なんだろう〖解放者〗って・・・また、完全にNPPさんたちの心の持ち様というか・・・。


「みなさん、有難うございました! 〖解放者〗という称号が貰えました!」


 通信から拍手が聞こえてくる。

 しかし、終わったものの相変わらずの嵐なのでみんなさっさと帰りたいはず。

 なんて思っていると、ウェンターさんの声が聞こえた。


『よし、じゃあ帰ろうか!! うちのクランハウスで祝賀会をするから、良かったらぜひ』


 こうして戦いは終わり、私達もティンクルスターに向かって飛行。


 リッカとアリスも合体を解いて飛んでいる。

 そんな風に帰還体勢に入っていると――急に嵐が止んだ。


「え――?」


 驚いて周りを見回すと、硫化硫黄で満ちた黄金の空に、一人の人物が浮いていた。


「人? NPP?」


『こんにちは、プレイヤーのみなさん。ボクの名前はハンプティダンプティって言いうんだけど。みなさんには、ここで死んでもらうね。あ、今回死んだら復活は無しだよ』

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