第146話 翼を貰って飛び出します
このボス戦長いんで、今日はちょっと多めに投稿します。
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「タグが付けられたヤツは本物です。撃墜してください!」
私は言いながら、ペイント銃を連射して本物をタグ付けしていく。
さすがに一人で硬い小型機を、あんな数落としていたら弾が足りない。エンジンも止まってしまう。
だからみんなに撃ち落としてもらわないと。
幸いプレイヤーは固まっている。彼らに向かう小型機だけをタグ付けすれば良い。
私が攻撃に参加しなくても、マイルズとユーさんがいるからなんとかなる筈だ。
私は、ウェンターさんに広域通信を入れる。
「ウェンターさんも〖読心〗で、本物と偽物の区別ができるかもしれません。ペイント銃も持っていますよね!」
『そ、そうか――もちろん持っているよ。なるほど――うちのクランに真贋見極められそうな人物が何人か居る。彼らにも頼んでみるよ』
「お願いします!」
さらにウェンターさんが、広域通信を入れた。
『他のクランの人にも真贋判定出来る人がいたら、ウチのクラメンからペイント銃を借りて! ウチのクラメンは全員ペイント銃を持っているから! あと翻訳出来る人各国の言葉に翻訳してお願い!』
アリスがウェンターさんの言葉を、英語で拡散している。
そこでコハクさんから通信が来る。
『私も真贋判定できるんですが、流石に空母にペイント銃はないんですよね』
『なら――』
言ったリッカが機体をムシャ・リッカ・イフィニティに変形させて空母の上に乗っかった。
『どれが本物か教えて。わたしがアリスのペイント銃で狙撃する』
『――なるほど、頼みます! じゃあモニターに位置を送りますね』
こうして、タグ付けされた小型機は次々と撃墜されていった。
全部タグ付けが終わったんで、私も攻撃に参加。
〈臨界・黒体放射バルカン〉を放ち、小型機を貫く。
さらに〈粒子加速ヨーヨー〉で切り裂いていく。
『戦闘機でヨーヨーを操っとるで、あの子・・・』
音子さんが苦笑いすると、人理樹くんが掠れた声を出していた。
『あんな人に勝つとか言った馬鹿は・・・誰だ』
人理樹くんは、強かったよ・・・今も頼りになってるし。
5分ほど経って、ウェンターさんが宣言する。
『よし、もう本物の小型機はないよ!』
『あの数がもう!』
私も一旦、安堵した。
「後は弾幕を躱しながら、枝みたいな腕を切り落とすだけですね!」
するとふと、嫌な予感がした。
予感の方向を見ると、ドライアドだ。
根のような下半身の緑の女性が歌い始め。
急に嵐が酷くなり始めた。
そして、更に猛烈になる弾幕。
ウェンターさんの焦りの声が聴こえてくる。
『こ、これは・・・・不味い!』
より強烈になった嵐の中、コントロールを失う機体が続出した。
『操縦が出来ない人は、最寄りの空母か戦艦に拾ってもらって!』
『ごめん! ウチもこれじゃあ、もう飛べへん!』
『あたしも無理だわ、離脱する!』
『俺はまだ行ける!』
『僕もまだいけます!』
音子さんとヒナさんもギブアップして、クランの空母に戻っていく。
クラン、ストリーマーズでは人理樹くんとダンくんは、まだいけるみたい。
『私も無理ですごめんなさい!』
メープルちゃんも、この嵐では飛べないらしい。
『リッカ、交代して下さい。盾役が足りないみたいなので、ナイト・アリス・ゼロで前に出ます!』
『わかった!!』
アリスとリッカの機体が変形して、前にでてバリアを張ってみんなを護りだす。
さらに灰色のヘリオロードという、初期選択で選べる中では最強のバリアを持つ盾機が飛んできた。かなり改造されている。
『助太刀しますね』
柏木さんの声だ。ヘルメスのタゲを取り続けられた柏木さんなら有り難い。
アリスと柏木さんが盾になってみんなを守り始める。
「だけど、あの数の弾幕は・・・・」
私は、一旦空母に戻る。
「ティンクルスター、スウ着艦します」
『スウが帰ってくる!? なんで!? えっ、スウもあの嵐の中は飛べなかったの!?』
星ノ空さんが驚きで尋ねて来た。
「翼を準備して下さい!」
『つ、翼ァ!? この嵐の中を翼つけて飛ぶ気!?』
「はい!」
私は人型にして着艦、複葉の上の二枚を装備。
再び飛び立った。
『ほ・・・本当に翼を着けて飛んでっちゃったよ・・・』
『あ、ありえない』
星ノ空さんと、さくらくんが唖然としていた。
私はドライアドから見て、風下に飛ぶ。
そうして風下から、ドライアドの腕の様な枝を狙撃で千切っていく。
危険な量の弾幕が迫ったら、翼に風を受けて一気に反対方向に飛んでドライアドから距離を取る、ドライアドから離れれば離れるほど弾幕の隙間は大きくなるので間を抜ける。
『うそ・・・スウさんが風を利用し始めた』
私は弾幕を躱し終えたら――メタンの勢いが強いとこ、弱いとこを見抜いて、その穴をフェアリーテイルをサーフボードの様に使って波乗りして近づく。
こちとら生まれも育ちもサーフィンの本場育ちよ! ・・・・一度もやったことないけど。
よし、順調に枝を切り落とせてる。
にしても確かにこの弾幕は、スワローテイルじゃ躱せなかった。
前進翼のV字の角度がより急に出来ることでの上昇力、旋回力、加速力、そして揚力を失いにくい――失速限界の性能の良さがないと躱せなかった。
だけど、どこかの戦艦から焦った声が聴こえてくる。
『こっちの戦艦はもう満員だ、乗れる空母や戦艦が無い奴は外に掴まってくれ!』
『空母か戦艦・・・・拾ってくれ――うわああああ!!』
遠くでは弾幕に接触して撃墜される機体が、沢山出てきている。
『無理ならもう、ワープ航行で宇宙に逃げてくれ!』
『エ、エンジンをやられた。脱出用ワープを起動する!』
ものの3分もしない間に、人員が激減してしまう。
『残ったのは、たった31機か・・・・1000機以上も居たのに』
戦艦1艦、空母2艇、バーサスフレーム28機。
しかもバーサスフレームの半数は、戦艦や空母に掴まっての援護。
『この戦力で何とかしないと――どうする』
呻きながら弾幕を盾で受け止めていた、柏木さんのバリアが砕けた――まずい!
『当職にお任せを!!』
そんな声とともに、柏木さんのバリアが回復する。
この声は――
「エレノアさん!!」
『お久しぶりですね、Ms.スウ』
「はい!」
エレノアさんがいるだけで、なんだか私は安心してしまった。
というか実際安心できる。この嵐の中でもかなり安定して飛んでいる。
私が被弾しても、助けてくれそう。
柏木さんがエレノアさんに尋ねる。
『助かりました。えっと』
『ステラフォースのエレノア曹長です。当職が回復しますので、引き続き指揮をお願いします。柏木1等空佐』
『おおっ、ステラフォースの!? はい、お任せください!』
エレノアさん、軍曹から曹長になったんだ!?
私が心でお祝いしながら弾幕を躱していると、さらにドライアド本体が〝動いた〟。
今まで樹木のように微動だにしなかったドライアドの本体が、自ら動作し始めたのだ。
歌うドライアドの背中に生えていた無数の腕が、触手のようにプレイヤー達の機体を襲いだす。
『や、やばい――!』
追ってくる腕は、追尾弾のような感じだ。
しかも凄まじい速度。
この猛烈な嵐と弾幕の中であんなのに追われたら、素早いフェアリーテイルですらキツすぎる。ほとんどの機体は逃げ切れないはず――とくに大きな機体は相当つらいと思う。
残ったプレイヤーの数人が騒ぐ。
『この腕、一撃でバリアを貫いてきたぞ!』
『回復役が少なすぎる――バリアの回復が間に合わない!!』
『緊急回避! 面舵いっぱい!!』
『駄目です。躱しきれません―――このままでは戦艦ユートピア轟沈します!! ワープ開始!! ――だ、だめだ間に合わない! ―――各自ワープで帰還して下さい!!』
最後に残った戦艦が轟沈していく。乗組員や、中に居た機体、張り付いていた機体たちが一斉にワープしていく。
柏木さんの真剣な声がした。
『エレノアさん、私とアリスさんの回復を!!』
『了解しました!!』
『まだ飛べる人は、わたしたちの後ろへ!!』
柏木さんとアリスが、必死で弾幕を消している。
コハクさんとさくらくんのやり取りも、通信から聞こえる。
『もう私が作戦考えたりして避けてる場合じゃないわ―――! さくらくん、操舵は全部任せるからとにかく躱して―――!』
『はいっ!!』
『砲台要員、および張り付いて援護してくれてる機体は当てにくくても頑張って当てて!』
さくらくん、リあンさん、オックスさんが返事を返す。
『了解しました!』
『分かった』
『おう!』
張り付いてる人たちからも返事があった。
『は、はい』
『ラ・・・ラジャー』
さくらくんは本当に凄い。敵本体から遠く弾幕の薄い場所とはいえ、空母みたいな大きな機体で、ドアイアドの弾幕と腕を躱し続けている。張り付いてる人にも弾幕を当てない。
ただ、味方の攻撃を意識できる飛び方は出来てない。
なのにオックスさんは、かなりの精度で砲撃を命中させている。
まるでさくらくんの通るルートが分かっているようだ。
私は、迫る腕の前で風を使ってコブラ・マニューバで急停止。
猛烈な風が、コブラで失った速力を一気に回復してくれる。
そうして、自分に追い縋る腕を引き連れて、弾幕の雨の中を螺旋を描くように飛ぶ。
最後に描いた螺旋の中を駆け抜けた。
こうすれば――
『ちょ―――! スウが敵の腕を結んだぞ!?』
❝カートゥーンかよ!❞
❝古いギャグ漫画の戦闘みたいになってんぞw❞
「玉結びです」
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