第145話 緊急事態が発生します
私が思いに
アリス&リッカ、ユーさん&スナークさん&ジョセフさん、マイルズ&知らない人が、競い合って枝を切り裂いていく。
ナイト・アリス・ゼロの剣の範囲攻撃が広くて、結構強い。
私がテキパキ枝を切り飛ばすみんなを見ながらサボっていると、マイルズとユーが妙な通信をやり取りし始めた。
『勝った方が、スウに日本の名所を紹介する旅行に行く約束だったな』
引きこもりだよ、行かないよ?
『そうだ、勝った方がスウとパラセイルに行く』
行かないよ、あとマイルズとの会話になってないよ?
そんな風に、二人が会話にうつつを抜かすと、スナークさんが紛れ込んできた。
『ねえ、アリスちゃん』
『え、なんですかアン姉さん?』
『これ、フラグメントが勝ったら、私がスウちゃんとデートするのも有り? ほらスウちゃんって、ユーを毛嫌いしてるじゃん?』
スナークさんの謎の提案に、アリスの慌てた声が聴こえる。
『そ、それは駄目です!』
『私ってアリスちゃんに顔似てるし、ワンチャン――』『絶対駄目です!』
そもそもこちとら陰キャですよー、街に出かけたりしないですよー。
私の住んでる辺りのデートスポットなんて、どこも陽キャのたまり場なんだから。
しかも通る人通る人、オシャレな美男美女しかおらんのやぞ・・・なんだあのお化け屋敷。
『貴様スナーク、俺がスウに毛嫌いされている等という虚構を供述するな!』
ユーの怒声に続いてジョセフさん。
『桜花爛漫。春だねぇ』
絶賛、夏ですよ。
ユーがスナークさんにさらに怒鳴る。
『とう言うかスナーク貴様、今日も遅刻して来るわ〈時空倉庫の鍵〉を忘れてくるわ。あの大会以降、気を抜き過ぎじゃないか!?』
『るさいなぁ』
❝スナーク、配信でも女の子の格好するようになってからポンコツがすぎるんだよなwww❞
❝前のカッコイイ、完璧だったスナークは完全に時空の彼方へ消えてしまったw❞
スナークさん、本当に気を張ってたんだなあ。
そうこうしていると、枝か根か分からないのが最後の一本になった。
『よし、最後の枝だ』
『俺の物だ』
ここまで互角だったマイルズとユーさんが、残った一本に突進する。
『させません!』
アリスが最後の一本を切り裂いた。
普段遠距離攻撃が苦手なくせに、何故か短刀を投げて見事に命中させた。
なんで命中できたのか知らないけど、アリス凄くナイス。貴女は私の命の恩人です。
『ち』
『閃光、貴様』
ユーさんとマイルズは、アリスを罵り始めたけど私は彼らを相手している場合じゃない。
ウェンターさんの慌てた声が聞こえる。
『スウさん、二人に構ってないで〈真空回帰爆弾〉を出現したドライアドの核―――』
大丈夫、もうロックオン済み。
ロックオンできる範囲は小さいけど、大丈夫。
❝ロックオン疾いってぇ❞
❝・・・・あんな小さなコアを、よく一瞬でロックオンできるよな❞
「〈真空回帰爆弾〉発射!」
『〈真空回帰爆弾〉発射。イエス、マイマスター』
発射され、コアに叩き込まれたミサイル。
間違いなく10秒以内。
――でも。
「え」
ウェンターさんが乾いた声を出す。
『ふ、復活が始まった―――?』
❝まてよ。間髪入れず撃ち込んだだろ、ミサイルを❞
❝なんで復活するんだよ、運営!❞
マイルズと、ユーさんも流石に警戒する。
『どういう事だ』
『スウはいつも通り、完璧だっただろう』
一番最初に気づいたのは、音子さんだった。
彼女が広域通信で叫んだ。
『ちゃう、第3段階や―――ッ!!』
現れたのは下半身が木の根のような、逆さの女性だった。
絹を裂くような悲鳴の様な声が、暴風の中に荒れ狂った。
髪も肌も緑一色の女性が両腕を広げると、背中から無数の腕が生えてきた。
千手観音のように――木の枝のように。
ウェンターさんの震える声が、広域通信に乗る。
『だ、第3形態があったなんて―――!』
シミュレーターにも、こんなの無かった。
銀河連合のデータにも、3段階目は無かったの?
緑の女性が吠えると、第1段階とは比べ物にならない量の種型戦闘機が放たれた。
すると、誰かが恐怖に慄いた。
『な、なんなんだ―――あの数!』
さらに、本体の女性から飛んでくる第2形態よりも猛烈な弾幕。
マイルズが舌打ちする。
『ちぃぃぃぃ――』
ユーさんも歯ぎしりした。
『なんだこの数は!』
まって、種型戦闘機が多すぎる。流石にこれは私でも躱しきれない。
――でもなんだか、様子がおかしい。
なにか違和感がある。
〖第六感〗もそう言っている
マイルズがスロットルを倒す。
『手伝え、香坂 遊真!』
『まあ、お前の飛行もロマンティックだと認めてやる!』
マイルズとユーさんが、弾幕の中に突っ込んでいく。
2人の姿が消える。
アリスのナイト・アリスが、私を庇うように盾を構えた。
『スウさん、大丈夫ですか!?』
私はアリスに「うん、ありがとう」と返しながら、ひたすら違和感の正体を探す。
――なんだ、なにかおかしい。
刹那―――誰かの放った〈黒体放射バルカン〉を見て、私は気づいた。
「そういう事か!」
『ス、スウさん、どうしたんですか!?』
騙されるところだった!
私は広域通信で叫ぶ。
「小型機の殆どが、幻覚です!」
アリスの驚愕の声。
『そ、そういう事ですか!』
他の人々からも広域通信が返ってくる。
『なるほど―――!』
『本当だ、弾が素通りする小型機がある――!』
しかし、悪い部分も在る。
『でも幻覚だからって、どうやって見分けるんだよ!』
『全部は躱せないけど躱さないと、本物と弾幕が当たってバリアでも受けきれないぞ!?』
「『マッピング」』
私とアリスは当時にスキルを使用。〖マッピング〗は、敵を赤点で示してくれる。
『駄目です! ――幻覚も〖マッピング〗に赤点で表示されてしまいます!』
なら――
「〖サイコメトリー〗」
やっぱり、幻覚には記憶がない。
私は、ペンダントを握ってバーサスフレーム用〈時空倉庫の鍵〉の扉を開く。
そうして取り出す、一本の銃。
「この小型機は、本物―――」
銃を当てると、視界にタグが表示された。
誰かの驚きの声。
『ペ、ペイント銃!?』
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