第144話 フェアリーテイルの実力をみせます
フェアリーテイルで光球を撃っていると、みんなが騒ぎ出した。
『ちょ――なんだあの機体!』
『白いスワローテイル? ――でもなんかちょっと形が違う』
『より流麗と言うか・・・優雅と言うか。――聖女? っぽい』
『つか、今〈臨界黒体放射〉を連射しなかったか?』
『んなアホな。エンジンがオーバーヒートするどころか爆発するぞ、ただの〈黒体放射ガトリング〉だろ』
『でも〈黒体放射ガトリング〉にしては、極太じゃなかったか?』
『見間違いだって――――見間違いだよな・・・?』
❝みんな焦ってるけど、〈臨界黒体放射〉の連射なんだよなあ・・・・その分シールド切らないと駄目だけど❞
❝やべえ、フェアリーテイルつええ!❞
❝恐ろしい火力❞
❝もう火力不足なんて言えねえよ。火力役こなせるじゃん。これでシールドドローンとか手に入れたら、どうなるんだ・・・❞
❝スウがまともな火力持ったらどうなっちまうんだ❞
❝俺も早くフェアリーテイルが欲しい❞
❝俺はいらない。シールド切らないとまともな火力がでないとか、怖すぎんだろ・・・・❞
❝まあ、多分買えないがな。お値段なんと、勲功ポイント1000万だとよ❞
❝1000万!? はああああ?? 買えねえじゃん❞
❝タカスギィ❞
❝鼻水出た❞
❝1000万ポイントとか、トップランカーしか貯めれてないだろ!❞
❝俺昔一瞬トップ100に入って、今でも稼いでる方だけど・・・・3年掛かってやっと800万ポイントなんだ・・・3年貯めても買えないんだけど❞
❝超高級機やん❞
❝0一個多くないのか、なんかの見間違いでは❞
❝見間違いだと言っちくり❞
❝今確認した。駄目だ、マジで1000万だわ❞
❝エグいってー❞
え・・・フェアリーさんって、1000万ポイントもするの? よ、良かった大会賞品の改造で手に入れられて・・・流石に1000万ポイントはヤバイよ。
❝でも、どうせまた紙装甲なんだろ?❞
❝あんだけ強力な武装積んで、さらにあの速力、当たり前だろー❞
❝今スペック確認してるけど、装甲がスワローテイルより薄いみたいだゾ❞
❝シールド有りでも、紙どころかティッシュって噂がある❞
❝まじかよ・・・・1000億円のティッシュ飛行機・・・俺じゃ、ロストするのが目に見えてるじゃん――つか、恐ろしくてシールド切るなんて無謀、俺にはできんわ❞
❝しかも、スウのフェアリーテイルは中身が旧世代のスワローテイルのままらしい❞
❝中身は? どういうこと❞
❝旧世代のスワローテイルを端的に言うと、戦闘機形態での格闘戦特化ってこと❞
❝旧世代スワローテイル=ピーキーで、戦闘形機形態が強い。新世代スワローテイル=補助のお陰でマイルドで、プレイヤーに合わせて進化した人型形態も強い機体❞
❝つっても新世代スワローテイルもピーキー過ぎて、地雷だったんだが❞
❝クサヤか納豆か、みたいなもんか❞
え、その表現はやめて? 両方美味しいけども。
❝いやでも、スウが出てからは盾の後ろでエンジン止めて攻撃力増す方法が・・・❞
❝それ誰でもできるから、全体の攻撃力の底上げになっただけで、スワローテイルの火力不足が解消されたわけじゃ無い❞
❝あとスウのフェアリーテイルは試作機みたいな感じで、本採用機よりちょっと弱いらしい❞
❝まじかあ❞
私は心のなかで「そうなんだよねー」と返事。
❝中身がスワローテイルを元にしてるんだとか。だから14世代ではなく、13.5世代❞
❝それ・・・スウが使う場合弱いのか?❞
(あれどうなんだろう?)とか、私が心に疑問を抱いていると、リッカが広域通信で気づいたことを言う。
『フェイテルと、フェアリーテイルって似てね?』
❝確かにワロw❞
❝フェアリーテイルは、フェイテルリンクのメイン機体だった? ワロw❞
リッカが広域通信で要らないことを言う。
『スウ、ファースト写真集フェアリーテイル絶賛発売中』
❝買った、買った❞
「買うな」
私のお怒りの言葉は、無視される。
❝鑑賞用、保存用、布教用。3つ❞
「鑑賞するな! 保存するな! 布教するな! 3冊も買うなばかぁ! ――私の水着姿なんか見るなあ! 知らない男の人が私の水着姿を見てるとか、何の拷問だよぉ!」
❝私、女だけど買ったよ。おっぱいの女神として毎日拝んでる。おっぱいが成長しますよにと❞
「女神って呼ばれたかったけど・・・・思ってた女神と、なんか違う・・・」
❝いやスウは闘神だろ❞
❝むしろ鬼神だろ❞
❝獣神スゥンダーライガーだろ❞
「戦う神から一旦離れよう、泣いてる子も居るんですよ」
とかなんとか言いながらも、私は光る果実を破壊することは怠らない。
よし、最後の一個を破壊できた。
いよいよドライアドが、第二形態に変化する。
枝か根のような物が、小山のように広がる。
上下に伸びているからまるで球体だ。
ドライアドは巨大化したかと思うと、猛烈な弾幕を放ってきた。
「来た――難易度〈発狂〉のアトラスレベルの弾幕」
視界を覆い尽くすような弾幕が〝暴風の中〟で広がってくる。
整然と並ぶ弾は、時に無数のリングのように、時に3次元的な螺旋のように――弾幕の繭が広がり続ける。
『こ、これがドライアドの弾幕――視るのと実際じゃ――うわあああ!』
『た・・・助け――きゃあああああ!』
撃墜されていく――次から次へとプレイヤーの機体が爆散していく!
ウェンターさんの必死な声が流れてくる。
『みんな、全力を出してくれ! 前回はここで半数が撃墜された』
半分って1000人!? 今回の参加者の人数と同じじゃん。
『こ、こんなのシールドがもたねえ。ヒーラー早く回復―――う、うわあああ』
❝これだから、俺は今回の討伐に参加しなかったんだ・・・前回も撃墜されたから・・・・誰も死ぬなよ・・・❞
❝参加要項にシミュレーターをして来てって書いてあったんだけど、実際にやるのとは違うのかな❞
いけない、復活判定の入る人が出る前になんとかしないと・・・。今すぐ伝えられる事・・・。
「皆さんとにかく距離を取って下さい! 弾幕は発射口から離れるほど密度が下がります、弾幕は動く迷路のような物です。危ないと思ったら一旦安全な空間を見つけ、弾の無い空間とともに移動すれば好きなだけ離れられます!」
『そ、そうか・・・! 流石は〈発狂〉デスロードをクリアしたスウ・・・!』
『な・・・・なるほど、そういう事か!』
「特に大事なのは、全ての弾を気にする必要は無いことです! 自分の方に向かってくる弾を見極めてそれだけを意識してください!」
『弾幕を躱すコツ・・・・ありがとう!』
「いえ」
『分かりやすい――了解!』
「よし、イルさん行くよ」
私はスロットルを上げて、ドライアドに突撃を仕掛ける。
『て、アンタは至近距離に移動するんかーい!』
『この人、安全な場所と共に移動しないで、安全な場所を飛石してないですかー!?』
「大丈夫、フェアリーテイルなら弾幕がかする気もしません!」
『大丈夫なのがおかしい!』
「イルさん、〈粒子加速・ヨーヨー〉!」
白い執事服のイルさんが両手にヨーヨーを持って、激しく回す。
『〈粒子加速・ヨーヨー〉。イエス、マイマスター』
フェアリーテイルには〈臨界・励起翼〉という〈励起翼〉を超える武器が有るんだけど、今は翼がないから〈励起翼〉は使えない。
その代わり、私が前に作った追加装備〈粒子加速・ヨーヨー〉を使う。
「いっけえええ!」
私は、この惑星の猛烈な風に機体を乗せて、フェアリーテイルを駒のように回転させる。そうして輝くヨーヨーのワイヤーで枝を切り裂いていく。
『スウが通った方角の弾幕が薄れていくぞ!』
『よし、みんな集まれ――少数の盾役を前に、大勢の回復役が回復しながら移動するんだ!』
『少数精鋭の盾役で道を作るぞ、バリアに自信のある機体に乗ってて、腕にも自信が有る人は自己申告してくれ! 盾役はスウさんがさっき言っていたコツを逆手に取って弾幕を減らしてくれ。――でも危ない時はスウさんの言っていたコツで避けるんだ!』
『俺の機体はモールドパピリオだ、ランキング80位。前に出る!』
『アリスです。私の機体は合体状態のオラクル・ナイトです。守れる範囲は狭いですが、ランキング16位です。前に出ます!』
『当機は命理、星団帝国時代の特殊データノイドよ――盾になれるわ』
命理ちゃんは手のひらを〝パー〟にして前に突き出してバリアを出している。
みんなが移動を始めた。私は安全な空間を作るために、枝か根か分からないものを減らしていく。
すると、二つの機体が私を挟むように隣に飛んできた。
『力を貸すぞ、スウ』
「ユ、ユーさん・・・・」
ヤバそうな人が来た。
『こちら合衆国宇宙軍所属マイルズ・ユーモア少尉だ。これよりスウの援護に入る』
「マイルズ久しぶり!」
マイルズの相変わらず優しそうな声が、私に掛かる。
『流石お前だな。前回は俺1人で頑張っていたような物だった。だがスウ、お前が俺とツートップで戦えるだけでこれほど楽になるとはな。前回の半分の人数なのに、ずっと楽になっている』
ユーさんのイライラした感じの声が、マイルズに掛かる。
『お前がマイルズ・ユーモアか』
『お前が香坂 遊真とかいうプッツン男だな』
私的にはユーさんも居るから、楽なんだと思う。
変な人だけど、ユーさんの飛行テクニックは本物だ。だから今回はスリートップなんだと思う。
ユーさんの声がマイルズに尋ねる。
『マイルズ・ユーモア、お前も合体機に乗っているんだな』
『ああ、今日は馬鹿も一緒だ』
知らない男性の声が聴こえてくる。
『お前、人の事をバカバカと気軽に』
しかし文句を言っている男性の言葉は無視され、ユーさんが提案をした。
『マイルズ・ユーモア、勝負だ。どちらがより多く枝を
『オーバー』
『おい、マイルズ! お前勝手に――』
「もう全部、『あいつら二人でいいんじゃないかな』」
私がサボりながら呟くと、ユーとマイルズがツッコミを入れてくる。
『いいわけないだろう』
『スウ、お前も戦え』
だって、切ろうとした場所を先に切られるんだもん。
でも、私が二人から離れようとすると着いてくるし。
大型犬? 大型犬なんですか?
なんだか勝手に競争が始まって、1分程すると大分弾幕が緩やかになってきた。
ふと、フラグメントから声がする。
『スウちゃん』
あれ? ――この声はスナークさん?
「――えっ。は、はい!」
こ、この人は、ちょっと緊張する!
『アリスちゃんに、「気持ちを話したほうが良い」って・・・言ってくれてありがと、ね』
「え・・・・あ・・・えっと、はい」
『今度アリスちゃんと一緒に住むことになったの――マンションを買ったわ。あ、大丈夫よ、爽波高校近くにだから。アリスちゃんが転校したりしない』
スナークさんがすかさずフォローを入れてくれた。
――確かに私は「マンションを買った」辺りで、ちょっと撃墜されかけた。――あ、危ない。
『私、今は、女の子に戻ってお婿さん探し中。彼氏が出来たら、真っ先にスウちゃんに教えるわね。アリスちゃんより先に』
「いいんですか!? それ」
『ふふっ。じゃあボス討伐。頑張ろうね』
「は、はい!」
『言いたいことは言い終わったか?』
なんかユーの声がした。
『うっさい。早く戦闘に戻れ』
フラグメントが、離れていく。
なんかスナークさん、雰囲気変わったなあ・・・凄く柔らかくなった。
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