第143話 フェアリーテイル出撃します

 よし、これは護ってくれる女神って言ってもらえる流れだ。


『戦神スウだな』

『軍神じゃね?』

『いや、「蛮神」』


 世界が悪い、全て世界のせいだ。


 だけどこれ、シールドドローンもいいな。盾役も出来るなら一考の余地アリかなあ。

 パーティーお断りのスワローテイルをこんな風に役割こなせるようにするなんて、さくらくんにアドバイスした人凄いな。


 私とか、パーティーに入ってもソロプレイしてるのに。

 アドバイスした人って、誰なんだろう。

 思いながら小型機を撃ち落とす。そうして周りを見回すと、アリスとリッカが合体してた。


『『ナイトアリス・インフィニティ見参! ゼロ掛けるインフィニティな私達は何者でもなく、その可能性は誰にも決められない!』』


 あの台詞は、二人でコラボ配信しながら視聴者と相談して決めたそうな。

 ちなみにムシャリッカ・ゼロの時は、


『ムシャリッカ・ゼロ推参! インフィニティ翔けるゼロな私達の可能性は無限に広がり、く先は誰にも決められない!』


 だそうだ。


 あの2人は、よくあんな台詞を堂々と言えるなあ。私なら吐く。


 しかし流石の大活躍。


 弾幕を受け止めながら、飛んでる敵の小型機を斬り倒していく。

 特に今回は、アリスの凄さが思いっきり発揮されていた。


 まず、この嵐の中でも余裕で飛べているのが大きい(リッカはまともに飛べなかった)。

 さらに、アリスは盾や剣でも弾幕を受け流しているんだ。


 普通のプレイヤーはバリアだけで弾幕を受け止めちゃうんだけど、アリスは盾や剣でも弾幕を受け流して、バリアへのダメージを最低限に抑えている。

 だからヒーラーのメープルちゃんに余裕ができて、メープルちゃんは周りのフォローに回れている。


 あとバーサスフレームには数秒に一回使える3択ブーストがあるけど、それを発動させるタイミングもバッチリ。

 (ヒールが飛んでこないな)と思ったらバリアにブーストを回して、周りの被弾率が低く(メープルちゃんに余裕が有りそう)と思ったら攻撃にブーストを回している。

 しかもアリスの場合、まるで周りの心を感じ取っているみたいな連携力を持っている。


 視聴者がアリスはギフテッドだって言ってたけど、間違いないと思う。


 もちろん他の人も活躍している。


 メープルちゃんのシプロフロートⅡも、周りを回復して活躍してるし。


 遠くを見れば神合機フラグメントや、光神機モールスの姿も見える。


 空母で弾幕を躱しているさくらくんも、だいぶ化け物。


 あと命理ちゃんが、生身なのにこの嵐の中を飛んでて恐ろしい。


 それからウェンターさんの機体、ヴァルキリーも見える。


 私が周りを観察していると、ウェンターさんから連絡が入った。


『スウ君、そろそろ第二形態が来るからフェアリーテイルに乗り換えて!』

「はい!」


 でもウェンターさん――広域通信でフェアリーテイルっていう名前を呼ばれると、とてもしんどいです。

 ちなみに、何故そろそろ第二形態が来るか分かるかと言うと、今回の戦いには情報班が存在して、遠く離れた場所からドライアドを観察してくれている。


 戦闘の様子を配信に流したりしながら、壊された光の数をみんなでカウントしてるらしい。


 幾つ壊されたら第二形態になるかは、色んな動画やアーカイブなどを見て算出されたんだとか。


 私は、急いでティンクルスターに戻る。


 リあンさんのナビゲートが、星ノ空さんに向かう。


『スウ帰還するよ。空、ハッチよろしく!』

『アイアイ・マム』


 ハッチが開いたので、私は急いで飛び込む。


 さくらくんのスワローテイルから降りると、知らない方が6人いて拍手された。


 私は、思わず後ろによろけて慄く「おおう」。


「スウさんスゲー!」

「配信毎回見てます! お会いできて光栄です! ティンクルスターの中って本当に居心地がいいですね!」


 私は、ガクブルしながらそそくさと白い機体の方に向かう。


「い、いえいえ――ではフェアリーテイルで出ますんで」

「がんばってください!」

「は、はいー」


 やっぱり知らない人って、怖いよお・・・。


 暴風が危ないので、避難してきた6人には格納庫ハンガーから移動してもらう。

 そうしてから、私はコックピットに座る。もちろん今回はワンルームを外してある。

 おお、コックピットの椅子――ゲーミングチェアみたいな座席も進化しておる。

 フェアリーさんの、スワローさんとは似て否なる計器が並ぶ場所で、深呼吸。

 VRでシミュレートは散々してきたから、新型機でもやれるはず。


「じゃあ行こうか、イルさん」

『イエス、マイマスター!』


 私がフェアリーテイルをカタパルトに乗せると、星ノ空さんがサイリュウムみたいな物を振る。


『ブリッジへ、フェアリーテイル、出ます』

『オッケェ!』


 ハッチが開いた途端、飛び込んでくる暴風。


『フェアリーテイル、どうぞ!』

「はい! XFT‐0 フェアリーテイル出撃します!」


 唸るようなロケットエンジンの音の後、私は黄金の尾を引いて銀河の彼方にある惑星の空へ飛び出した。


 VRの時体験したけど、相変わらずスムーズな加速と、微量のG。

 こんな暴風の中でも、全く問題なく飛べる。風を切り裂ける。


 というか、胴体だけでも航空力学が良いのか、強い風が吹くとむしろ機体が安定する。それがさらにスムーズな飛行を可能にしている。

 そこにスワローさんの1.5倍近い出力のロケットエンジンと、強力な重力制御装置が無茶を出来る操縦を可能にしていた。


「よし、イルさん。シールドオフ、〈臨界・黒体放射バルカン〉!」


 白い執事服姿になったイルさんが、腕を振るう。


『〈臨界・黒体放射バルカン〉。イエス、マイマスター』


 私は〈臨界・黒体放射バルカン〉で、光の木の実を潰していく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る