第142話 さくらくんの機体に知らなかった可能性をみいだします
『また撃墜された!? ――パイロットは・・・・死んで地球に行ってないだろうな?』
『ハイレーンに送られました、脱出に成功したみたいです!』
『・・・良かった、でもこれで20人目か・・・残った280人中20人はきついな』
『こっちの戦力からの離脱者が多すぎるのよ! 右舷から援軍を送ってもらえないの!?』
『今打診しています。10分待ってくれと返ってきました』
『10分も待ってたら、こっちは半壊するわよ!』
『待って下さい、誰か後方から来ます。ティンクルスターの方角』
『ティンクルスター? さくらか、マッドオックスか? あの二人なら助かるが・・・・』
『緑色のスワローテイルです』
『緑色のスワローテイルならさくらか。助かるな――しかし、胴体だけなのに飛び方がえらい上手いな。この嵐の中をものともしていない――いや・・・なんだこれ、なんて飛び方するんだ・・・これでは、まるで・・・・まさかパイロットは・・・・緑色のスワローテイル、応答せよ、誰だ!』
「スウです、援護に来ました!」
『ス、スウ!? そうか、スウの機体を使わないで出撃するって手があったか!』
『みんな、スウだ!! ―――スウが援護に来てくれたぞ!』
広域通信が一気に騒がしくなる。
『やったぞ! スウが来てくれた! 助かる!』
『この状況をなんとかしてくれ!』
みんなに期待されてしまっている。リフティングボディで、どこまでできるかな。
周りの期待がプレッシャーに変わらないように、私は空中に人という文字をイメージして呑んだ。手に書かないのは操縦桿を握っているから。
「さくらくんのAIさん、名前を教えて」
スウが呼ぶと、花魁風の女性のホログラムが、しゃなりしゃなりとコントロールパネルの屋根の上に現れた。
『わっちが旦那様に頂いた名は、お蝶でありんす』
さくらくんのAIが、まさかの花魁かあ。
――意外すぎるよ。
「ハッ――」
そこで私の脳裏に、一つの予想が浮かんだ。
「――も、もしかしてさくらくん、花魁目指してたり!?」
花魁少年とかそんな、私にクリティカルヒットな! でも、駄目だよさくらくん! さくらくんに花魁は似合うかもだけど、今の時代には花魁はいないんだよ!?
FLなら、ワンチャン花魁少年とかいるかもだけど(イネーヨ)。
などと私は恐らく見当違いな心配をしながら、お蝶さんに頼む。
「じゃあお蝶さん。〈シールドドローン〉の展開と、〈黒体放射バルカン〉をお願い」
『分かりもうしたえ』
私は〈黒体放射バルカン〉で、敵の小型機を撃墜していく。
敵の本体は木の様な形をしていた。
上下、どちらが枝で根なのか理解らないけど。
果実のように光る光球がところどころに付いていて、私達の武器ではそこにしかダメージが通らないようだ。
そんな相手が、植物の種のような形の機体をばら撒いている。
すでにシミュレーターで戦ったこと有るけど、相変わらずグランド・ハーピィみたいな敵だ。
種の様な敵の機体は、この暴風の中を自由に飛び回っている。
小型機を倒すのに〈臨界黒体放射〉でも2発必要みたい。
全部一人で落としていたらエンジンが止まってしまう。
司令を担当している方らしい人達の広域通信が、漏れてくる。
『うげぇ。スウ、強すぎるだろ・・・この嵐の中みんなまともに攻撃を当てられないのに、簡単に命中させてる――小型機の数がどんどん減っていく・・・』
そこまで簡単ではないんだけど、士気高揚のために簡単にやってるフリしとくかなあ。
「任せて下さい!」
『間近で視るの初めてだけど、彼女は確かに別格だわ』
『〈真空回帰爆弾〉を預けられるのも分かりますね』
『よし、小型機は特に操縦の上手い人とスウにまかせて、他の人はドライアドの光球を撃つんだ!』
『はいっ!』『了解!』『おう!』
光球が次から次へと破壊されていく、いい感じになってきた。
だけど、たまに危ないことになる人もいる。
例えば今――誰かのイルカみたいな機体が、小型機に囲まれた。
『うわ―――うわ撃墜され・・・誰か盾役の人!』
「シールドドローン行って!」
私はさくらくんのシールドドローンで、イルカみたいな機体に襲いかかる弾丸を弾いた。
『た、助かった――ありがとう!』
「いえ、安全な場所へ一旦引いて下さい―――」
(にしても、メタンの水滴――液滴(?)が、キャノピーに張り付いて邪魔だなあ)
私は右側にいるイルカ形の機体を、空間把握と〖マッピング〗を駆使しながら護り、目の前の敵を倒していく。
『あのちっこいシールド2つで、弾丸全部弾いたぞ・・・・俺たちは自機の操縦だけでも大変なのに、シールドドローンも同時に操作するとか』
『つか、護ってる機体の方見てないじゃん』
『控えめに言って神か?』
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