【78万PV感謝】フェイテルリンク・レジェンディア ～訓練場に籠もって出てきたら、最強になっていた。バトルでも日常でも無双します～

第138話 賞品・・・？ を受け取ります

　私たちはフェロウバーグにいた。

　賞品である『機体改造』をしてもらうためである。連合も、なんとかドライアド戦に間に合わせたいとのこと。

　もちろん今回は完全無料。

　私達が喜び勇んでフェロウバーグに行くと、アイビーさんは「改造の案を皆さんから聞く前に、スウさんに見せたいものがあるんです」と言って、私達みんなを格納庫に案内した。

　そこに有ったのは、まるで白いスワローさん。所々に金の刺繍みたいな模様がある。

　アイビーさんは、スワローテイルの「後継機」として紹介してくれた。

「これがまだ一機しかない、スワローテイルの後継機です。ＸＦＴ‐０　〝フェアリーテイル〟と言います。これをベースに改造なさいませんか！」

　私は、アイビーさんの告げた名前に鼻血をだしながら白目を剥いた。

「神様なんでぇ？」

「賞品が改造なのでフェアリーテイルをそのままお渡しできませんが、スワローテイルをフェアリーテイルに改造はできます！　フェアリーテイルの凄い所はその火力です。シールドのエネルギーを一時的に火力に回すことで、臨界黒体放射を連射できるんですよ！　敵の弾に掠らないスウさんなら、きっとこの誰にも乗りこなせないような極めてピーキーな機体を乗りこなせる筈です！　改造なさいますか!!」

「嫌です」

「そうですか、ではさっそ――え・・・・？　は!?　――なっ、――何故ですか！　スワローテイルの完全上位互換ですよ!?」

「絶　対　嫌　で　す　！」

「な、なぜ・・・量産機とはいえ、ほぼスウさんの為に開発された専用機みたいな物ですよ!?　・・・スワローテイルを乗りこなせているのが、スウさんと数人しかいないのに開発された機体ですよ!?　しかもシールドのエネルギーを火力に回すことで、スワローテイルの攻撃力の無さを補い弱点を克服したものの、恐らくスウさんしか乗りこなせないんですよ!?」

　その名前だ！

　アイビーさんが早口で、スワローテイルの良さを解説する。

「スウさんが乗り手との事で追加された前進翼Ｖ字を、より鋭角に出来る機能。これは制御を失いやすくなるせいで、普通はＡＩ無しでは使いこなせませんが、手動なら空中戦機動がさらにやりやすくなりますし、加速性能、旋回性能、上昇性能、失速限界の圧倒的高さが見込まれます。スウさんがこの機体に乗れば凄まじいパフォーマンスを期待できるのですよ!?」

「イ　ヤ　で　す」

　私が断固拒否していると、なぜかアリスが決定権を持っていった。

「乗り換えます」

「アリス!?　――わ、私はスワローさんの操縦性に拘（こだわり）りがあって！」

「でも、いい機体に乗れば、それだけ涼姫の安全が見込めます。改造なんだから、操縦性はそのままにして貰えばいいじゃないですか」

「で、でも――」

　私はまだ、なんとか悲惨な未来を回避しようとする。

「――ほらシールド薄くて安全じゃないらしいよ、スワローさんよりさらに紙だって」

「スウさんにシールドとか関係ないでしょう。スウさんには機体の運動性こそがシールドでしょう。そして全身翼のV字を深く角度を変えられることで、フェアリーテイルはスワローテイルよりずっと運動性がいいらしいですよ」

「正論パンチやめてー」

　結局私は、フェアリーテイルに改造されたスワローテイルに乗ることになった。

　今後はフェアリーさんと呼ぶことになった。

　ＡＩはイルさんのまま。

　３日後、アリスがハイレーンにある連合の基地で格納庫に納入されたフェアリーさんを見ながら腕を組む。

「始めから、素直に乗り換えればいいのです」

「アリスが鬼だよ・・・」

「これで無事な確率は上がるのですから」

「アリス、やっぱり――私の身を案じて・・・・？」

「もちろんですよ」

「うう・・・・そう謂われるともう何も言えない・・・」

　出来上がったのは、型式番号ＸＦＴ－０。通称フェアリーテイル・スウカスタム。

　改造だったから中身が１３世代のままなので、１３．５世代というなんとも微妙な世代の航宙機となった。

　私の改造の注文も受け付けると言われたので、幾つかの要求をした。

１．動翼の大型化による、大気中での旋回力の引き上げ。旋回時の速度が犠牲になるけど、フェアリーテイルは、加速力は十分以上にあるので問題なし。あと宇宙でも動翼を動かすと、微妙に機体の動きを制御できるから、大きくすればさらに効果が高まりそう。

２．前進翼の翼根本で起こる乱気流の影響を押さえるため、根本のひし形を伸ばして、さらに根本にウィングレット（乱気流を防ぐ、縦向きの小さな翼）のような物も取り付けた。こちらも速度が犠牲になるけど問題なし。あとこのウィングレット動くんですよ。変な機動とか作れそう。

３．スワローテイルには揚力を増やすフラップしかなかったので、今回は揚力を減らすスポイラーも設置して貰った。

４．それから一気に速度を落とす為のエアブレーキ。以前は人型形態時の手をエアブレーキに使ってたからね・・・・まあアレもできるんで、これからもやると思うけど。

５．宇宙で俊敏に動けるように、推力偏向ノズルの変形のさらなる高速化。

６．機体が不安定だというのは、地上でも宇宙でも運動性が良いのとイコールなので、かなりギリギリまで機体のバランスを悪くしてもらった。

７．それから最後に、様々な操作性の調整。

　完成したフェアリーテイルは相当ピーキーな物になったらしく、改造した技師の人達は、「これは最早、人間の乗り物ではない。――なぜこれをＡＩ補助無しで飛べるのか全く理解できない、銀河の七不思議だ」と言っていたそう。

　ちなみに銀河の七不思議は八つあるのが、七不思議の一つらしい、混迷は深まるばかり。

　それから、以前スワローテイルの最速をパーセノペーに更新されたけど、フェアリーテイルが最速を奪い返した。

　あと火力に関してだけは、元々１４世代の航宙機を圧倒しているらしい。

　でも中身は旧式のスワローテイルで、加速のために装甲が更に薄くなって最早防御力は紙装甲どころか、ティッシュ装甲らしい。

　アリスが黒から白になったスワローさん改めフェアリーさんを見て、頷く。

「白くて可愛いじゃないですか」

「見た目は好きだよ！　名前だよ！」

「名前のフェアリーテイルだって、凄く可愛いじゃないですか」

「私の写真集が『フェアリーテイル』なんて名前じゃなかったら、凄くいい名前なんだけどね！」

「じゃあ、機体の名前だけでも変えますか？」

「どうせリスナーにイジられるんだから、そのままでいいよ・・・」

「まあ・・・そうですね変えたら変えたで、あの好きな子に意地悪しちゃうリスナー達はイジってくるでしょうね」

　もちろん他のクランメンバーも、大会賞品でバーサスフレームの無料改造を受けた。

　アリスは遠距離が苦手すぎるので、ショーグンにアフターバーナーを付けて、わずかな時間だけスワローテイルに匹敵する加速力――大気中なら最高速度を得られるようにした。人型兵器を短時間とは言え高速戦闘機なみの飛行速度にするとか、超科学ってば頭おかしい。

　普通なら耐えられないＧが発生するけど、そこは〖重力操作〗でなんとかするって言ってた。

　さらに関節の動きを、よりトリッキーにして、人間離れした動きも出来るようにしていた。

　名前はショーグン・ゼロになった。

　リッカは遠距離もこなせるので、弓の出力を上げた。

　引いて引いて、十分貯めた最高出力なら〈臨界黒体放射〉を超える威力が出るらしい。

　あとリッカは関節の動きを、より人間らしく。アリスと逆である。

　こちらの名前はダーリン・インフィニティになった。

　アリスが零で、リッカが無限という、なんとも私好みなネーミングセンス。

　コハクさんたちは、ティンクルスターのバリアと武装強化をしてくれていた。

　オックスさん以外も、手の空いてる人は砲撃に参加できるようにしたんだとか。

　後は各人が持っている、個人用のバーサスフレームも改造していた。

　一番機体が変わったのはメープルちゃんだ。

　改造というかもう殆ど機種変レベルで、変形機構を持ったシプロフロートⅡという機体になった。

　サイズはシプロフロートの半分程度、人型時の手足にバリア補充用のエネルギーを満載しているので、ダーリン・インフィニティの様な精密な動きは出来ない。

　けれど弓の動きは十分出来るように角度などを微調整しているので、弓を打つ分には十分だそうな――というかメープルちゃん曰く、弓というのは決まった動きを正確にやるのが大事なそうで、むしろ撃ちやすいみたい。狙撃に関しては、一番頼りになる。

　ちなみに弓は、別売りの和弓っぽいのを買ったらしい。

　命理ちゃんは大会に出ていないのでタダじゃないけど、彼女はそもそもバーサスフレームに乗らないので、勲功ポイントが余りがち。

　なので命理ちゃんも、巨大な銃を買ってた。

　腕でぶら下げて撃つ、大砲みたいなの。

　命理ちゃんのスキル＋命理ちゃんの光崩壊エンジンで撃つらしく。

　量子魔術まで使われている銃なんだとか。

　命理ちゃんのパワーをもってしてすら反動が抑えきれないらしい。

　私の〖念動力〗＋〖超怪力〗では、命理ちゃんにパワー負けするんで、私のゲートからも撃てないと思う。

　普通の人間が手に持って撃ったりしたら、周囲に出る衝撃波で命はないらしい―――怖い。

　真空回帰砲はクールタイムが長いし、近くに人がいたりしたら撃てないらしいので、その代わりなんだとか。

　命理ちゃんはこれを戦場では、常に背中に背負うらしい。

　銃が大きすぎて、２つに分解してすら潰れたＸ字になってる。

　という感じでみんなの強化が終わった。