第136話 優勝賞品の家の相談をします

 ◆◇Sight:鈴咲 涼姫◇◆




 PvPの賞品である家の相談で、私達はハイレーンのカフェに居た。

 まず私達がVRで設計図を作って、それを機械が自動で作ってくれるらしい。

 ちなみに居住権は貰えたけど、土地代と建築費は自分たちで出さないといけない。


 私がみんなの案をまとめた。


「じゃあ1階のバーは落ち着いた雰囲気で。暗めの木製ぽい感じで、ミュージックボックスでも置く?」


 アリスが閃いたとでも言うように、手を叩いて笑顔で言う。


「ステージを置きましょう」

「ジャズでも流すのかい?」


 マッドオックスさんが、納得するようにアリスに返した。

 しかし、アリスは首をふる。


「いいえ」


 アリスが選択肢「いいえ」を選んでいる。珍しい。

 私は、意外な選択肢に首を傾げる。


「アリスが歌うの?」

「いいえ」


 また選択肢「いいえ」だ。


「じゃあ何のために?」

「スウさんが歌うんです」


 私は真っ青になり首を振る。


「むりむりむり! ・・・ほんと、むり!!」

「スウさん声かわいいんですし、オリジナル曲を出しましょうよ。スウパーマン」

「そこはせめて、ウーマン・・・」

「スウーマンですか? 酢ウーマンぽくてなんだか・・・」

「スウパーウーマン!」

「語呂が悪いじゃないですか」

「と言うか、出さないから」

「じゃあ、美少女天使――」

「出さないから!」


 え、美少女天使って何? 何を言い出すのこの人・・・こっわ。


「せっかく宇宙で戦ってるんですから、星のまたたきで占いましょうよ、戦いの行方を」

「せめて恋の行方を占え、私は蛮族の勇者か何かか」


 私がアリスの凶行を阻止しようとしていると、マッドオックスさんが口を開く。


「このジャズロボットなんか、良いんじゃないか? 音楽を演奏してくれるロボットらしい」


 流石マッドオックスさん、助け舟を出してくれた!


「それ良いですね!」


 私がマッドオックスさんに喜色を向けると、彼は頷いて続ける。


「普段はロボに歌わせて、スウが歌う時はどかせて」

「助け舟じゃなかった!」


 私が絶望に打ちひしがれていると、アリスが苦笑いになる。


「まあ、スウさんが歌うか歌わないかはともかく、歌配信とかも出来るし良いんじゃないですか?」


 しばらく傍観していたコハクさんが、確かにと返事する。


「あ、じゃあASMRとかも出来る部屋を作りましょうか。このクランはメープルさん以外全員配信者ですし。訪れる人が配信の様子を見れる、配信ブースとかも作りましょう」

「あとは、それぞれの部屋も防音完璧にしといたらいいな」


 リあンさんがコハクさんに相槌を打った。

 そしてアリスが話の流れを変える。


「じゃあ、個人個人の部屋はどんなふうにします?」

「また、私一緒に住むの?」


 私の疑問に、アリスが首を傾げる。


「もちろんですよ。そして相べ――」


 私は、私と相部屋になろうとするとかいう凶行が開始される前に、叫ぶ。


「私は、本棚とか収納が一杯ある個室がいいな!」

「オタクグッズを置くんですね」


 そ、そだよ。


「趣味部屋だから、個室がいいな!」

「どうしても相部屋を避けられます」

「ちぇ」


 口を尖らせたアリスとリッカが、彼女たちらしいチョイスを返す。


「わたしは和室ですねえ」

「わたしは洋室」

「ふたりとも普通な感じだね」


 私は頷いて「二人らしいねー」と返した。

 すると、リッカがウンウンと頷きながら、


「ヴィクトリア風」

「とんでもない、高級品を求めだした」

「安土桃山風」

「アリスは質素だね」

「の安土城」

「とんでもなく、デカイのを求めだした」


 こうしてみんな好みの部屋を挙げだす。


 メープルちゃんはアラビア風の部屋。


 コハクさんはパンク風がいいらしい。コハクさんはかわいい系の見た目なのに、趣味はパンクロックらしくて意外。

 

 リあンさんは水族館みたいな部屋で、大きなベッドが欲しいんだとか。寝相が悪いのかな?


 マッドオックスさんは木製で、銀河の地図とか一杯置いた部屋がいいらしい。


 さくらくんは、ゲームがあれば良いとの事。


 命理ちゃんは、昔、自分が住んでた部屋を再現するらしい。

 和風とSFを混ぜたような部屋だった。


 最後にアリスが手を挙げる。


「全体の外観は、わたしが決めていいですか?」

「そだね、アリスがクランマスターだし」


 というわけでアリスが外観を決める事になっただけど、VR内で完成したクランハウスを見て、私達は呆然。


「なにこれ・・・」

「ウエスタンに、人形用の家がのっかってる?」


 コハクさんが、顎に手をあてながら首を撚る。


「まあ、デザインは両方アメリカンの古風な感じだし・・・・お店の上に住居が有るタイプのだと思えば・・・悪くないか」


 それもそうか。そもそも、


「アリスのことだから本当に安土城作るのかと思ったよ」

「安土桃山風は、内装だけで我慢しました」

「だよね。それなら、そこまで大きくならないかな」


 流石に外見まで安土城にしたら、とんでもなくクレジット掛かるもんね。

 するとリッカが、アリスに追従する。


「ヴィクトリア風は、内装だけで我慢したよ」

「それは、十分お金掛かるんよ」


 建築費の半分が、実にリッカの内装に掛かったという恐るべき事実。


 色々あったけど、こうしてクランハウスが出来上がった。


 建築に要した日数、なんと1日。

 

 流石、超科学。


 クランハウスの完成の次の日にバーを開店すると、早速お客さんがたくさん来て順調だった。


 クランのみんなでハウス完成前から散々宣伝したし、住んでいるのが全員配信者。

 だから私達を一目見ようと、お客さんが一杯集まったんだ。

 ちなみに、マッドオックスさんはバー配信とかを始めた。


 しかし私は、ファンという人がいっぱい来てしまい、正直クランハウスにいると落ち着かない感じだった。

 だから普段はほぼ、スワローさんのワンルームにいた。


 それでも、たまにはバーに顔を出して欲しいと言われるので、バーに行くとアリスの映ってる雑誌が売られてた。


 始めは「へー、こういうの売ると儲かるんだねえ」とか思ってた。

 すると次の日、私のポスターが売られてた。


「は?」


 私は真っ青になった。


「なんでこんなの売ってるんですか!!」

「儲かるからですね」


 コハクさんが「この人は、何を当たり前のことを聞いているんだ」とでも言いたそうな顔で返した。


「なんで!? ――どんな男の人が私のポスターなんか部屋に貼って喜ぶんですか!」

「女性がよく買っていきますよ?」

「なんで!?」

「カッコイイからじゃないでしょうか?」

「どこが!?」

「とりあえずグッズは、すでに色々作成して発注してるんで」

「キャンセルで!!」

「できると思いますか?」

「おおお、ぉぐぉぉお」


 この日私は、羞恥で悶えることとなったんだけど。


 後に、ポスターを売られる程度は大した問題ではないと思い知ることとなる。


~~~


 この話は長いので分割しました、後半を1時間後に投稿します。

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