第88話 大変な嵐に突入してみます
❝マイルズ・ユーモアじゃん❞
❝あー、FL1位の?❞
「えっと、いずれ40層を攻略したいんですが、その時はマイルズさんと一緒に戦う感じになるかなって思いまして。どうせレイド戦ですし」
❝あー、マイルズは外せないもんな❞
❝しゃーないか❞
❝40層のボスがいる惑星は、風が音速で吹いてたりするらしいし・・・❞
❝なにそれこわい❞
「それで、今日は顔合わせみたいな感じで、38層を案内してもらうことになりました」
❝は?❞
❝なに、そんな散歩か散策みたいな気分で言ってるの?❞
❝38層だろ・・・下層だろ? 最近行ったけど37層以降の下層は地獄だったぞ?❞
❝31層とか上層はボスから離れてるから比較的安全だけど、ボスに近づくとヤベーのが出てくるんだよな❞
「あの、マイルズ・・・・視聴者がこんな事言ってるけど」
「俺とスウなら問題ない」
❝まじかよ・・・流石1位の男❞
❝つか、マイルズずりぃ――俺もスウとお出かけしたい❞
「優秀なパイロットなら、是非ボス攻略を手伝ってくれ」
❝いや、無理です❞
❝まず38層にすら行けません。ちんじゃう❞
❝一般人に、一桁の数字が7、8、9、0の層は無理だよ❞
「だが、ボス攻略はいつものように皆でレイド戦を行うのだろう? 何人でも募集中だ。しかし知っているとは思うが、今回は最低でも風速150メートルの中で問題なくバーサスフレームを操縦出来ることが条件だ。23層の上層に丁度いいガス惑星があるから、そこで試してみろ。それから38層でも1人で問題なく戦えることも条件だ。まずはシミュレーターで試してから行くと良い」
❝ボス戦怖いからもう止めようと思ってたんだけど、また行ってみようかな・・・❞
❝お、勇者が現れたぞ❞
❝とりあえず、久しぶりに23層のガス惑星行ってみるわ❞
❝マジかよ、死ぬなよ? 風速150メートルとかヤバすぎるぞ・・・❞
相当な猛者さんなのかな? 手伝ってくれるなら助かるけど、大丈夫かな。
40層ボス攻略は、正直リッカにも遠慮してもらおうと考えてるくらいなのに。リッカは「来る」って譲らなかったけど。
「ところでスウ、お前ステータスアップはどうしてる」
「え、急にどしたの」
「先駆者の知恵を、渡しておきたいだけだ」
「それは有り難いかも」
私は、自分の上げている能力を伝える。
すると、マイルズは考える仕草になって返した。
「――なるほど。記憶力は今やお前には〖サイコメトリー〗があるだろう。それを自分に掛けて記憶を呼び起こすことも出来る」
「あー、うんそれは試した」
「流石だ」
❝あ、そういう手があるのか❞
❝俺〖サイコメトリー〗の
❝なあ、〖サイコメトリー〗ってカンニングし放題?❞
❝スキル使うと発光するやろ❞
❝カンニングしてるのバレバレですな❞
マイルズが説明を続ける。
「まあ、記憶力はあって悪いものではない。酸素消費も〈水中呼吸〉という印石があるが、これは戦闘機の酸素消費は抑えてくれないから、酸素消費は有用かもしれない。しかし空間把握に関しては、27層のモンスターが持つ〈鷹の目〉や、これから行く38層のモンスターが持つ〈マッピング〉の印石で代用できる。お前はかなり印石が出やすいみたいだから、手に入れるのは難しくないだろう」
「え、空間把握は無駄だった?」
「無駄とは言わない。ステータスは常時自分を強化してくれるが、殆どのスキルは自ら発動しないと駄目だからな。しかしステータスは印石で代用できるものが多いから気をつけろ」
「わ、分かった」
「ボクのおすすめステータスは集中力持続強化だな、これは代替となる印石がまだ発見されていない。人間は、どこかで集中力が切れるが、その時が一番危険だ」
「確かに〈発狂〉デスロードでも集中力が切れる瞬間が、一番撃墜されることが多かったよ。最後のステージとか20分以上も戦うけど、集中力が持たないから一瞬の切れ間が怖かったんだよね」
ゾーンも維持しやすくなるのかな。
❝俺も、スキルとステータス伸ばせば〈発狂〉デスロをクリア出来るかな?❞
❝訓練シミュレーターでは、スキルもステータスもキャンセルされるぞ。あと、バーサスフレームに接続した時の脳強化もない❞
❝えっ・・・スウの〈発狂〉デスロのクリア動画見たけど、あれってステータスアップとか無しでやってんの!?❞
❝そうそう、〈錯乱アトラス〉の時もまだステータスアップも、スキルもないんやで❞
❝そりゃ、宇宙的恐怖って言われるわけだわ・・・・❞
―――言われてないよ?
心でツッコミを入れながらドリア美味いな・・・とか思っていると、お店にカップルがイチャイチャしながら入ってきた。
芸術とカップルは爆発しろ、いいな?
なんてことは心だけで思うだけで、表情は祝福のまま彼らの姿を観て、私はマイルズに話題を振る。
「にしても、パイロットスーツを着てない地球人も増えたねえ」
「だな」
会話が終わった。
まって・・・・会話終わり? コミュ障が振った話題はもっと大事に扱って・・・話題探すのにもMPをかなり使うんだ。
私は周りを見回した。そこかしこに一般人ぽい地球人の姿が見える。
この店だけでも、結構な人数がいる。
話を続けてみる。
「ああいう人達って何してるんだろう、国交が無いから地球のお金と銀河クレジットの両替も出来ないし本当に観光しか出来ないんじゃ」
「まあ、ハイレーンのサイトシーイングだけでも十分価値がある。しかしただのサイトシーイング以外なら、ストライダー協会に生産者登録してクレジットを稼いで、それで買い物したりしているらしい。31層のような比較的安全な上層で採集クエストに来ている生産者はかなりの数いた」
よし、会話が良い感じに続いた。
私は内心で「ナイス」と、握りこぶしを握った。
「へえー、何を採集していたの?」
「エイリアン・フロッグだな。舌が
「ソッカー」
私は白目で、窓の外を観て会話を終了させた。
やっぱり拙者は、男性との会話が苦手でござる。
マイルズがコーラの氷を涼しく鳴らしながら、38層のことを教えてくれる。
「38層には重要な天体が3つある。レアメタルが多く取れる惑星と、旧人類の遺跡が大量にある惑星。それから〈マッピング〉の印石を持つグレムリンの所――レスト
「あ、〖マッピング〗を取りに行かせてくれるの?」
「必要だろう?」
「うん、是非お願い!」
その後、マイルズの色々ためになる説明を聴きながらドリアを食べ終えると、マイルズがウィンドウを開いてクレジットを払った。私の分まで。
「有難うございます。ごちそうさまでした」
奢られ慣れてない私がギクシャクとロボットみたいな怪しい動きでお礼を言うと、マイルズが出口に向かう。
「では行くか」
「あ、うん」
マイルズに着いて、駐機場に向かう。
マイルズのF‐22に似た機体が見えてくる。名前はIB-32インビジブルというらしい。
ステルス戦闘機に似た機体にインビジブルと名付けるとは、銀河連合も分かってる。
「そういえば、お前はステータスアップ系はストライダー協会で行うと、20%ほど安く済むのは知っていたか?」
「え―――っ、そうなの!?」
20%って、結構大きいよ!?
「知らなかったのか。上げたい物があるなら、近くだし先に行くか?」
「あ、うん。良いなら」
マイルズが、ウィンドウを開いて何かを調べる。
「丁度いい、もう少し経ってからレスト4に行ったほうが良さそうだ」
何を調べたんだろう。
マイルズが「リーベルタース、バイクを出してくれ」と言うと、IB-32インビジブルの後方から丸い何かが出てきた。
マイルズの機体は、リーベルタースってIDなのかな?
マイルズが丸い何かに触れると、バイクに変形した。
「・・・・え、こんなオプションあるんだ」
「移動に便利だぞ、パワードスーツにもなるしな」
「メ◯ゾーン・・・」
「ガー◯ンドか」
「知ってるんだ? このバイク――免許とか要らないの?」
「要らない訳がないだろう」
「いや、でもバーサスフレームには、免許要らないじゃん」
「そう言えばそうだな、お前が疑問に思うのは当然だった。ボクは考え足らずだった、すまない、」
なんか凄く謙虚な人だなあ。
「じゃあ、とりあえずストライダー協会に行くか、お前は後ろに乗れ」
「う、うん」
にしてもバイクかあ。
金田のバイクみたいなのが有ったら、私も欲しいな。
ウィンドウを開いて、ちょちょいと調べる。
――あるわ。前輪が思いっきり前にせり出したのを、
ウィンドウを観ていると、ヘルメットを渡された。
私は「あっ」となりながら、ヘルメットを受け取り――被って、バイクに跨ったマイルズの後ろに座る。
「しっかり抱きついておけよ」
「え、抱き付くの!?」
「当たり前だろう」
「ででで、でも、すずさ菌・・・」
頭を、優しくコツかれた。
「しっかり抱きつけ」
「アメリカ人のクセに殴るとは、貴方の国じゃ大問題になるんじゃないの。――というか・・・・私、お父さん以外の男性に抱きつくの初めてかも。むしろ男性に触れるのも初めてだわ」
❝マイルズ貴様ぁぁぁぁぁぁ!❞
❝ずるいぞ! あああっ、スウのたわわが、あんなに潰れて―――!(血涙)❞
すると、マイルズがニヤリと笑って視聴者に宣言する。
「お前らも、トップランカーになってスウに認知されるといい」
「煽らないで!」
❝なってやる、なってやるからな!❞
❝お前なんか直ぐさま抜いてやる! そして色々抜いてやる!❞
❝俺も40層の攻略に参加する!❞
❝言ってみりゃ、オフ会だしな!❞
「オフ会じゃないからね!? 危ないから、無茶はしないでね!?」
「舌を噛むなよ」
マイルズがシニカルな笑いを私に向けてから前を向いて、バイクのエンジンを掛けた。
かくして私は、ストライダー協会でステータスアップを行った。
今回は薬じゃなくて、無針注射された。
そうか、注射だから安くなるのか。
集中力持続強化(大)×2で20%アップ = 30万ポイント也。
原始反射加速(大)×2で40%にアップ = 120万ポイント也。
筋操作(切り替え)(大)で20%にアップ = 20万ポイント也。
そこから20%割引で、計136万勲功ポイント。
残り140万ポイント。
金田ぽいバイクは買わなかった――欲しいけど。
値段が、50万クレジットしてた。
バイクを買ったら、残り33万クレジットだから心もとない。
もうちょっとクレジットが貯まったら買おう・・・。
私の能力をアップして、マイルズもなんか能力アップして、2人で宇宙に上がって、そこからワープ航行。
幾つかのワープ港を経由して、38層のワープ港まで来た。
『これから行く惑星は、ハビタブルゾーンにある比較的環境がいい惑星だ――が、お前のパイロットスーツはどの程度の物だ? 型番を教えろ』
「S81です」
『随分と良いものだな―――俺のものより良い』
え、軍人でしかもトッププレイヤーのパイロットスーツより良いものなの!? アリスどんだけ奮発したの!?
❝アリスウツつええ❞
❝愛の証か❞
最近気づいたんだけど、このパイロットスーツ、アイテム名もアリスウツになってるんだよね。運営は、何に気を利かしたんだ。
ちなみに、フェイレジェのパイロットスーツなどを着ていたらなら降り立てる惑星は、天の川銀河に一千億以上あるらしい。
フェイレジェのパイロットスーツすごい。
さらに、人間が生身でも暮らせそうな惑星は、数億個有るんだとか――無理すれば数十億個。
ただ、銀河の中心近づくほど恒星が密集しすぎて、危険な天体現象が多すぎて生命は住むには難しい過酷な地域になるらしい。
それでも住める惑星はあるらしいけど。
あとMoBが生まれる以前にテラフォームされた惑星や、配置されたコロニーも有るらしい。
『そのパイロットスーツなら余裕だろう』
お墨付きを貰い、着いたのは緑が多い惑星だった。
雲や海も多いけれど、陸地のほとんどが緑色だ。砂漠みたいな場所が殆どない。
恐竜が生きた時代の地球は今より森が多かったらしいから、あの時代に宇宙から観たらこんな風に見えたんだろうか。
『目的の場所は、横向きのチキンみたいな形をした大陸の腹辺りだが』
「台風が起きてるね」
真ん中に穴の空いた、丸くて分厚い雲に覆われている。
なんだろう、ダム穴みたいな恐怖がある。
『降りるが大丈夫か?』
「え、マジでダム穴に降りるの?」
『ダム穴?』
「あいや、ダムの排水溝みたいな怖さが有るなって」
『ああグローリーホールか、確かにな。ところであのハリケーンに対して地球の風速を想定していたら、ひどい目に遭うぞ。――この惑星は温度が高く自転が速い、弱いものでも風速は地球のハリケーンの最強クラスだと思って良い。リーベルタース、あの雲の風速を計算してくれ』
しばらくして、マイルズが計算結果を伝えてくれる。
『風速150メートル程度らしい』
「あっさり、地球最強の台風の瞬間最大風速を超えてる・・・」
『ドライアド攻略戦を想定できる風速だな、丁度いい。――降りるぞ』
「ちょうどいいのかなあ――?」
私は首を傾げながら、マイルズから送られた座標に降りるのだった。
しかし、降りた先はやっぱりとんでもない風が吹いていて、大木すらなぎ倒されている。
「あああ、翼がある戦闘機で飛んで良い環境じゃないよこれ!」
私は、急いでスワローさんの翼をたたむ。
『そうだな、かなり飛びにくい。それでも飛んでいるのだから、お前は大したものだ』
「流石に翼は畳んだよ、マイルズどこ!?」
『雲の上に逃げた』
「ちょ・・・!」
~~~
新しく作品をアップしました。
宜しければこちらもお願いします。
「最弱魔力の最強術師!?」
https://kakuyomu.jp/works/16818093089528747872
この話のせいで、フェイテルリンクの更新が滞る事はないのでご安心を。
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