第60話 地球人に襲われます
◆◇◆◇◆
ゲートの設置場所は、成田空港近くの長原村に決定した。
で、私とフーリは宇宙空間でスワローさんのワンルームに籠り、避難していた。
事務所に銃弾が撃ち込まれたんだ。
それで地球から逃げてきた。やはり地球は、私の住む場所ではなかった。
「とりあえず、スズっちさんの関係者には私の家で護衛を雇って出しているわ」
「ほ、本当に有難う、フーリ!」
「にしてもわたし、プレイヤーの資格が得られなかったのは痛かったわ。前にスズっちさんの配信でスワンプマンの事に言及したのを、運営に恨まれたのかしら?」
あのコメント、フーリだったんだ?
「そうなのかな・・・・でも、プレイヤーにさえなれば身を守る手段が沢山あるんだけど――」
銃弾が撃ち込まれ、フーリはすぐさま動いてくれた。
私の身も危ないけど、関係者が人質にされる可能性があるから危険だという事で対策を取ってくれたんだ。
私は憔悴しながら、ワンルームの背の低い机に頬を当てて呟く。
「――せっかく安全のためにくじ引きにしたのに―――なんでこんな事に」
「日本が取ってしまったのがマズかったわね」
「でも、抽選を取り仕切ったの国連だよ!? 私、なんにも関与してないんだよ!?」
「それを事実だと思わない国が有ったのだから、仕方ないわ」
「とりあえず、今日! 今日がゲート開通式だから、今日さえ乗り切れば良いんだよ!」
「そうね。このままスワローテイルで衛星軌道に行方をくらましていれば、きっと大丈夫よ」
私が安堵していると、イルさんが急に告げた。
『マイマスター。接近する正体不明機から、通信が入っております』
え? 正体不明機??
「まって、接近する正体不明機って、ここ宇宙だよ? ・・・だとするとフェイテルリンク・レジェンディアのバーサスフレームだよね?? 全て銀河連合に登録されてるはずじゃ――正体不明機なんて無いんじゃ?」
『マイマスター。どうやら、対象の正体不明機はゴブリンの戦闘機を改造した物のようです』
「ゴブリンの戦闘機を改造!? そんな事出来るの!? ・・・・な、なんか不穏だけど――とりあえず繋いでみて・・・」
『はい』
「嫌な予感がするわ。スズっちさん――大丈夫?」
「わ、わかんない」
雑音のあと、男性の声が聞こえてきた。
『*ザッザッ* ――こちら、オルグス同盟連合国軍所属グノーシス01。プレイヤースウに要求する。オルグス同盟連合国にゲートを設置すると、フェイテルリンク・レジェンディアに宣言せよ。繰り返す。オルグス同盟連合国にゲートを設置するとフェイテルリンク・レジェンディアに宣言せよ。さもなくば攻撃を開始する』
え、オルグスって・・・・この前、江東さんが説明してくれた情勢が不安定な国!?
「スズっちさん・・・・相手攻撃とか言ってるけど、ここ地球圏よね? フェイテルリンクの武器は使えないはずよね?」
「・・・・そのはず」
できるはずがない、フェイレジェの武器はロックが掛かるんだから。
流石にフーリの顔色が悪くなる。
フーリはプレイヤーになれなかった、だからフーリが死んだら、復活も出来ない。
相手は本当に攻撃できるんだろうか、こうして宣言しているのだから出来るのかもしれない――なら、なんとかしないと。・・・・フーリを殺す事だけは絶対できない。
いや、たとえ復活が有っても駄目だ。そもそも――毛程の傷も付けさせるもんか。
〝カチリ〟と、私の頭の中で何かのスイッチが入る音がした気がした。
「イルさん、連合からPG-21のパイロットスーツを私の銀河クレジットで買って!! ――フリーサイズのやつ!」
『イエス、マイマスター』
すぐさま届く、連合からの荷物。
「フーリ! その箱に入ってる服を着て、コックピットの上の座席に体を固定して」
「わ、わかったわ! ねえ、スズっちさん私死んだらどうなるの?」
「フーリは絶対、私が護る!! 私を信じて!!」
「わ・・・わかったわ―――」
私も便利袋から、パイロットスーツを取り出し制服を脱いで急いで身につける。
さらに考えがあり〖念動力〗でイルさんのドローンのカメラを起動して、配信を開始。
「今からフーリのこと、フーって呼ぶね! 私の事はスウって呼んで」
「りょ、了解よ―――お願いね・・・・スウさん・・・信じてるわ」
「心配要らない」
一文字だけなら、誰かわからないはず。
配信予告とか何も宣伝していないので、しばらく視聴者数が0だったけど。
❝突発配信きちゃああああああ❞
❝あれ? スウどこ? アリスもいないし❞
❝ちょ・・・スウたんカメラ位置おかしいって、カメラが机に転がってる❞
❝なんか・・・・凄いバタバタしてる足音聞こえるけど、なにこの配信❞
❝様子が変じゃね?❞
私は流れるコメントに返事はせずハシゴを駆け上がり、イルさんのドローンをコックピットに飛ばした。
その間に自分のコックピットシートに体を固定、VR接続を開始。
『VR接続開始、バイタル正常――』
『スワローテイル、応答せよ。スワローテイル、応答せよ。さもなくば攻撃を開始する』
❝え、なにこの通信。攻撃するとか言われてるけど、銀河連合正規軍が地球人を攻撃なんて訊いたこと無いぞ??❞
❝窓から見えてるの、地球じゃね?❞
❝フェイレジェ世界は地球に行けなよな?❞
❝ならあれ、俺らの地球だろ??❞
❝どうした、スウ!❞
機体内に、頭の中を揺らすような激しい警告音が響き渡る。
「相手にロックオンされた! 急いでフー!!」
「スウさん。こ、これ、物凄く着づらくて!」
❝ロックオンって、マジなに!!❞
❝緊急事態か!?❞
❝もう一人、知らない女の子がスワローさんの中に居る!?❞
配信している事を、まだ正体不明機に知らせるつもりはない。だから配信に返事したりは出来ない。
にしてもゴブリンの戦闘機は、地球圏でも攻撃できるの? あれを改造した人は、なんてことを考えるんだ!
『これは最終警告である、応答せよスワローテイル。応答せよ』
私は、相手の通信に応答した。
「グノーシス01、そちらの要求を繰り返せ」
『こちら、オルグス同盟連合国所属グノーシス01。こちらの要求は唯一つ。オルグス同盟連合国にゲートを設置すると、フェイテルリンク・レジェンディアに宣言せよ。繰り返す。オルグス同盟連合国にゲートを設置するとフェイテルリンク・レジェンディアに宣言せよ。さもなくば攻撃を開始する』
❝え、ちょオルグス同盟連合国の戦闘機に襲われてんの!?❞
❝オルグス卑劣すぎるだろ!! もう抽選で決まったんだから、今更ウダウダと!!❞
❝Missスウ! オルグス同盟連合国に襲われているのか!? 今ステイツ――いや海兵隊からも応援を寄越すぞ、だから暴力に屈しないでくれ!! ――今、直通で大統領に連絡を入れている!!❞
❝なんで地球圏で宇宙戦が起こってんだよ! 地球の戦闘機で宇宙戦とか無理だろ。フェイレジェの武器は使えないんだろ!?❞
「ごめんフー、発進する!!」
「戦うの!?」
「逃げられそうなら、逃げる!」
私はスロットルレバーを倒して、スワローさんを加速させる。
『止まれ、スワローテイル。その機体は既にロックオンされている』
んなもん、知ってるよ!
『止まれ、スワローテイル。止まらなければミサイルを発射する!』
警告を無視して、距離を離す私とスワローさん。
フェイレジェ最速と言われるスワローテイルに、ゴブリンの戦闘機なんかじゃ追いつけない。
『通信終わり』
後方から、2つミサイルが迫ってくる。
❝ガチで撃ちやがった!!❞
❝スウたんを殺す気か!?❞
❝いや、死なない。フェイレジェの戦闘機内なら地球圏でも復活できる❞
❝もう一人の子もプレイヤーなのか!?❞
❝プレイヤーだろ、流石に・・・・たぶん❞
❝プレイヤーだよな?❞
❝プレイヤーだって言ってくれ❞
私は、ミサイルを見てやっぱりと納得する。
「思った通り、地球のミサイル!」
❝地球のミサイル使ってんのかよ!❞
❝だから撃てたのか!❞
なら、やっぱりフェイレジェの武器は地球圏では使えない?
いやでも、ゴブリンの戦闘機にロックが掛けられるの?
地球の武器ならスワローさんのシールドで耐えられるだろうけど、耐えられるか試す気にはなれない。
そこで目に入る、1つの軍事衛星。
ネットで見たこと有るぞ――あれってオルグス同盟連合国の衛星だ。なるほど、あれのせいで私達の位置が傍受されたのか・・・!
「フー、なにかに掴まって!」
私は機体にひねりを加えながら、軍事衛星を掠めるように飛んだ。
ワンルームの方からフーリの、
「―――きゃああああああ」
という叫び声が聞こえてきた。
ご、ごめんフーリっ。
ミサイルが1機、軍事衛星にぶつかって破壊された。もちろん軍事衛星も木っ端微塵だ。
グノーシス01とかいう戦闘機から通信が入る。
『貴様――、何という事を!! 軍事衛星を1機作って打ち上げるのには、数百億かかるのだぞ!』
「私は何もしてないですよ! 側を飛んだだけです。壊したのはそっちのミサイルです! 映像もありますし」
『ゆ、赦さん!! ――お前が壊したことになど幾らでも出来る、ただで済むと思うなよ!! こうなったら何としても、我が国にゲートを作らせて補填をさせねば』
「残念でした! 今の様子は、私の生配信を観てる18000人の目が確認しました!」
『き、貴様、配信をしているだと!? ――ではまさか、今までの会話も!?』
「当然です!」
❝Missスウ、アメリカ海兵隊大佐ジェームズ・スミスも観ていると言ってやれ!❞
❝こちら同じく、柏木1等空佐も観ています❞
❝イギリス空軍、エルマ・ディアスも観ていますよ❞
❝こちら防衛省大臣、蜂田。私も見ています❞
色々な方が声を上げてくれる。
有り難いです。って思ってたら、ヤバい人まで出てきた。
❝貴様ら、我がオルグス同盟に対して!❞
オルグスまでみてるの!?
すると――だ、まるで対抗するようにとんでもない人が出てきた。
❝アメリカ大統領、マキシマム・アームストロングも観ているよ❞
「ふぁ!?」
❝
ジェームズさんの驚きのコメント、私も目がまん丸だ。
すると、オルグス同盟連合の人の物らしきコメントが打ち込まれた。
❝貴様、アメリカ大統領!!❞
❝オルグス同盟連合よ、我らは暴力に屈しない❞
・・・・だ、大丈夫かな戦争とかならない? とりあえず、皆さん見てるだけだし大丈夫?
❝大統領も、よーみとる・・・❞
❝とんでもない人が出てきて草(震え声)❞
「グノーシス01。えっと、今の映像を、アメリカ海兵隊、大佐ジェームズ・スミスさん、柏木一等空佐、蜂田防衛大臣、フランス航空宇宙軍大佐、エルマ・ディアスさん――」
私は各国の、軍人視聴者の名前を挙げていく。
『ま、まさか』
「――それから、アメリカ大統領マキシマム・アームストロングさんも――」
『USA大統領だと!?』
「――みなさん観てますよ!」
『くそがぁぁぁっ!』
通信から、拳をなにかに叩きつける音が漏れてきた。
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