第59話 設置場所を決めます
◆◇sight:鈴咲 涼姫◇◆
『という訳で、ステイツはゲートにより得た利益の30%を君に支払う事を約束する。これは、莫大な金額となる事が保証されている』
「プ、プレジデント・・・・すみません! 他の国も欲しがっていて、私には決められないです!!」
『だが君は決断するしかない。ゲートの場所は君にしか決められないのだから』
現在、私はアメリカ大統領マキシマム・アームストロングさんとスマホで会話していた。
彼は、私のプライベートな番号をヴィックから聞き出して電話を掛けてきたんだ。ちなみにスマホを新しくしたけど、番号はそのままに出来た。
というか、アメリカ大統領はまだ良い。ヴィックという電話番号の情報源が明らかになってる。
しかし、何故かどうやって番号を入手したのか分からない国からも掛かってくるのはどうして?
――新しく買ったスマホが揺れる度に、体が飛び跳ねるんだけど。
いっそホラーな怪奇現象に、いつもグルグルしてる目が、それは酷いことになっているんじゃないだろうか。
『ミス、スウ。賢明な判断を行ってくれ、君の選択一つで世界が傾きかねないんだ。ステイツこそ、君の得た巨大な力をコントロールできると私は信じている。快い返事を期待しているよ。ではまた連絡をする』
「ピィ」
私は絞め殺される豚のような悲鳴を挙げて、スマホをデスクにおいた。
座りながら、涙目でおでこをデスクに激突させる。
私は現在、スウチャンネルの事務所にいる。ここは現在、地球での私の住所なのでたまによくいる。
フーリと、ウチの事務所で経理をしてくれている江東さんが私の姿に苦笑いをする。
「大変ですね、スウ副社長」
「やつれたわね、スズっちさん」
「おたすけ、誰かおたすけ」
私は震えながら、山と積まれた世界各国や世界の各都市からのウチにゲートをおいて欲しいというファンレターを眺めた――うずたかい。
そんなうずたかい山の上に、フーリがさらに手紙の束を乗せて、またも私を恐怖に陥れる。
「今日の追加は釜山、ウガンダ、フィンランド、ニュージーランド、バージニア、ブルンジ、群馬、それからオルグス――」
「オルグス?」
私が訊ねると、江東さんが教えてくれた。
「オルグス同盟連合国ですね。最近出来た、情勢が不安定な国です」
フーリがさらに手紙をとりだしながら、首を傾げる。
やめて、手品みたいに次から次へと取り出すのは!
「オルグスだと、誰も近寄れ無さそうね。あとは、シドニー、グリーンランド」
「い、いい――もうどこの国とか言わなくて良い。分かったから! どこの国に置いても恨まれるんだよ!! ――欲しがってる国とかより、置いても恨まれない場所おしえて!!」
「そうねぇ。東南アジアやオーストラリアからは、誰の土地でもない太平洋のど真ん中に設置して、国際的に運営すべきだとかいう意見があったわね」
「それじゃあ、ヨーロッパとかが困るから大反対が起きてるよ!」
「むしろ大西洋に置くべきだとか。なんなら、ヨーロッパのど真ん中とか。経度ゼロのロンドンにしろとか、それなら緯度もゼロにしてアフリカの沖合にしろとか――みんな好き放題ね」
「沖合とかそんなとこに設置してどうするのぉ!」
「日本のフェイレジェ省は、なんかもう。日本に設置するんだよね? 当たり前だよね? みたいな感じだし。以前のフェイレジェ大臣、猿田さんならもう少し丁寧に対応してくれたんでしょうけど」
「アメリカを超えるすんごい金額を提示してきて、フェイレジェ省に宇宙交通局とか作るって言ってくるし。ゲート課とか・・・・圧―――圧がすごい! ―――怖い! フーリのお父さんから、なにか言えない―――?」
「言っても何も解決にならないと思うわよ。日本が丁寧に欲しがる様になるだけだし。スズっち的には何も変わらないでしょう?」
私は、ウンと頷いてスンとした表情で呟く。
「もうハイレーンに設置しちゃおう」
「やけっぱちになるのは止めて・・・」
フーリがスマホを取り出して、何かを検索しだす。
「家の近くに置いて自分で管理したら? それが一番儲かるかもしれないわよ。えっと、スズっちさん家の周りの坪単価は・・・・ゲートのサイズは直径10メートルらしいわね――スズっちさんの家の辺りの坪単価は今61万円くらいかしら」
いや、今はお金が欲しいんじゃなくて
それにもう、あそこは追い出されたし。
「いや、もう私の家じゃないんだけど――あの辺りに設置しても私は使いづらいんだけど」
「そうだったわね・・・なんで急に家を出て、事務所に住むようにしたの?」
私は笑って頭をかく。
「やー。親戚にお世話になってたから、せっかく住める場所が出来たなら移住しようかなって」
「・・・・そう? ――」
フーリが、ふと何かを察したような表情になる。
「――それより、ウチに来ない?」
「いやいや、他人が苦手な私にはキツイかな・・・」
「・・・・そうなの? ・・・・なにか困ったことが有ったら言ってね?」
「うん、ありがと」
「とりあえず、あそこに買うとしても671万円もあれば少し余裕を持ってゲートを設置できるわね。正直様々に問題が発生しそうだから、土地はもうちょっと買い取りたいけれど」
「いや結構、すごい値段だよ?」
「印石を売ったお金があるじゃない」
「・・・・まあ、そうなんだけど」
印石を、アメリカに2億で売りました。
で関税が凄くて日本は40%。
だからいっぱい税金取られたけど、それでも1億2千万位儲かりました。
こんなに関税を取るほどフェイレジェの物資が地球経済を翻弄してるのに、この上ゲートとか・・・・。
江東さんがポンと手を打つ。
「そういえばWho Tubeからも1000万ほど支払われましたよ。広告料だけでなく、投げ銭や、フェローシップに入ってくれた人も多かったし、かなり入りました」
「よかった・・・・みんなにお給料を払えるように会社運営できそうで」
私は一旦、胸を撫で下ろした。これで江東さんとフーリとアリスに、お給料を出せる。
アリスは名義だけだから、要らないって言ってるけど出演料は渡さないと。向こうの事務所に所属な訳だし。
印石の代金から出しても良いんだけど、それじゃあ会社を運営できてる事にはならない。
だからチャンネルからお金が入ってきて本当に良かった。
江東さんが笑う。
「私は会社辞めましたからね、死活問題でした。でもスウ副社長に期待した私の見る目は間違ってなかったです」
江東さん、結構怖いことを言ってるのに全然動じてない。
にしても江東さんは本当に優秀で、お金の問題は全部解決してくれる。
私はお金のややこしい話に全然関わらなくて良くて、本当に助かる。
「お金の問題は、スウ副社長に指一本触れさせません」
なんてカッコイイ事を言ってくれてた。
この人なら、異世界行っても経理無双できるんじゃないだろうか。
私が江東さんに尊敬の視線を送っていると、フーリがデスクに両肘をついて、口元で合掌しながら言ってくる。
「スズっちさん、一杯儲けたんだから土地を買ってしまいなさいよ。そうして自分でゲートを運営すればいいのよ」
「い、いやフーリ、自分で管理してゲートが問題起こしたら、私の責任にならない?」
フーリが、目を瞬かせて合掌を解いた。
「それは、そうね。やっぱりどこかの国か都市に管理してもらったほうが良いのかしらね」
その後も私達は三人寄って、文殊のモノマネをしながら頭をひねる。
そして、私は閃いた。
「・・・・そっか、私が決められないなら、他に決めてもらったら良いんだ」
「他?」
「――うん。オークション形式にするの」
「なるほど、お金に決めて貰うのね。悪くないアイデアね、スズっちさん」
私が言を濁した部分をハッキリと言うフーリ。さすが商売好き。
「で、どのような支払い形式にするの? ゲートで儲かった分の何割とか?」
「い、いや。即金で、分割払いのサブスク形式でもよし」
「それは・・・・アメリカなら数十兆ドルは出してくるわよ。十兆ドルですら、一千兆円よ」
とんでもない金額が、またも私を恐怖に陥れる。
「ム、ムリ。アメリカ国民のみなさんの血税からそんなお金、怖すぎてムリ!」
私が震えていると、フーリが真剣な表情になる。
「・・・・しかも、各国のお金の価値が混乱しそうね。各国がお金を刷るのを一時停止したり、金利を引き上げたり――世界の経済が大混乱をきたすでしょうね。お金の価値がハチャメチャになって破綻する国がでなければいいけれど」
「怖い怖い!」
「まあ、そこまで行かなくても、怖いことになるかもしれないわ・・・・やっぱりゲートによる儲けの数%にして置いたほうが良いかもしれないわ、%なら100%という上限があるのだから」
「全部の国が100%提示してきそうじゃない―――??」
「でしょうね」
「100%だらけになったら、誰が選ぶの??」
フーリが、私を指差す。
結局私が選んだら、解決策にならないじゃん!
私はもう混乱しながら、神頼みをし始める。
そこでアイデアが閃いた、ありがとう神様仏様。
「そ、そうだ、あみだくじ。あみだくじがあるじゃん。南無阿弥陀仏!」
「んー、そうね。抽選も悪くないかもね」
「よし、抽選にしよう!」
こうしてゲートを管理する国の儲けを何%を支払ってくれるかのオークションにして、最高の提示%が重なった場合、抽選という話にまとまった。
殆どの国が100%を提示して、厳正な抽選の結果。
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〝日本が権利を獲得した〟。
「スズっちさん。大変よ。不正が疑われているわ」
私は白目を剥いて鼻血を吹きながら、仰向けに倒れた。
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