第47話 10層ボスに挑みます

 プレイヤー立ち入り禁止区域でお買い物をして、ロイトさんに銃を調整してもらって数日後。


 一人暮らしになって一週間くらいたったけど、「悠々自適も悪くない」なんて思いながら日々を過ごしていた。


 現在、私の住所はフーリが契約したスーチャンネルの事務所になっている。


 寝泊まりしている場所は、ハイレーンの禁止区域の宿屋さんか、スワローさんのワンルーム。


 スワローさんのワンルームで寝る時は車中泊みたいなものなので、地球圏の宇宙空間か、ハイレーンの禁止区域の駐機場に停めて寝起きしている。

 というか禁止区域メインに住んでる。


 ハイレーンのプレイヤーに解放されてる区域だと、なんか怖いので・・・。


 ちなみに日本にずっとスワローさんを駐機してたら、国に怒られるので無理です。


 あと私が一人暮らしを始めた日、アリスに「〈次元倉庫の鍵〉ありがとう。無かったら途方に暮れていたよ」と、お礼を言った。

 するとアリスは「何かあったんですか?」と心配してたけど、「引っ越しが楽になったんだ」と言うと首を傾げながらも納得してくれた。


 今日も必死に学校での活動を終えて、一日のご褒美であるアリスと帰れる下校中。


 空は雲ひとつ無い快晴で、海岸線を歩いていると富士山まで見える。


 私がかすかに浮かぶ三角形を見ていると、アリスがフェイレジェで起きた出来事を教えてくれる。


「10層のボスが復活したんですよ」

「え、ボスって復活するの?」

「みたいです。初撃破からおおよそ3年、復活してしまったらしいです」


 それはそうかあ、星団帝国が昔は50層まで進んでたからボスが復活はあり得るのか。

 でも思ったより早いなあ。


「どうなっちゃうの?」

「ワープ港に近づけなくなって、11層にワープできなくなりました」

「え・・・・それ、困っちゃうじゃん。資源とか取ってる人もいるのに。プレイヤーも活動できなくなっちゃう」

「はい、みんな困ってます。なので6時間前に世界中から集まった200人ちょっとが討伐部隊を結成して行ったんですけど、返り討ちに合いまして」

「200人? 30層のヘルメスは最初は2000人、次もヘルメスに1500人で挑んだんだよね? そんなに少なくて大丈夫なの?」

「それが相手が、〈狂乱〉ミダスでして」


 えっ・・・〈狂乱〉ミダスが、層ボスとしてでてくるの?


「〈狂乱〉ミダスかあ―――」

「スウさん今『ボスなのに弱いなあ』とか思いました? いいですか。普通の人は〈狂乱〉ミダスの弾幕は躱せません。出来るのは上位0.数%の人間だけです。しかも初ボス戦は、フェイレジェが始まって3ヶ月くらいの頃だったから1000人で挑みましたが、まあ、私はこの戦いの時にはもう特機を手に入れていたんでちょっと活躍して、赤い閃光なんて呼ばれるようになったんですけど」

「いや・・・・10層のボスをクリアした時期が、フェイレジェが始まって3ヶ月くらいなら、私もまだ宇宙ではまともに飛べてなかったよ」

「そうなんですか? ・・・・スウさんにも歴史ありなんですね――まあこの頃の私達は、大気中ですら飛ぶのが大変だったんですけれども」

「殆どみんな、飛行機乗るの初めてだったんだし」

「その点で、この頃は軍人さんが本当に強かったんですよね。ミダス戦も軍人さんが大活躍でした」


 スタートラインが違うもんね。私はwikiの情報を確認しながら尋ねる。


「――〝ボス〟のミダスは、〝ザコ〟のミダスより硬いみたいだね」

「ですね。1000人で攻撃してもなかなか倒せませんでした――一番困ったのが、宇宙空間で戦う事でした。戦場は大混乱でしたよ、プレイヤー同士がぶつかったり、あらぬ方向に飛んでいったり、攻撃が当たらない&避けられない。――ロボットで、超難しいスケートをしながら戦う感じですからね」

「始まって3ヶ月頃なら仕方ないよ――でも、〈狂乱〉ミダスかあ。今の私なら弾幕のパターン分かるし――一人でも倒せそう」

「まさか、やる気ですか―――?」

「階層ボス戦を体験したこと無いから、やっとこうかなって。一緒に行く?」


 誘ってみると、アリスがちょっと困惑気味な顔になった。


「ボス戦にそんな「ちょっとお買い物いく?」みたいに・・・・」


 え・・・・でも、相手〈狂乱〉ミダスらしいし。


「いえ、――一緒に行きたいですけど、わたしは盾機なのでヒーラーがいないと戦えないんですよね」

「あー、そっか」


 なるほど。確かに盾役の人は、バリア減って行っちゃうもんね。


「じゃあ、知り合いのヒーラーさんを呼んでみます――そうだ、音子さんが良いかも知れません。あのマシュマロみたいな機体は、ヒーラー機ですから」

「あー、音子さんのってヒーラーなのかあ。そうだ命理ちゃんも換装すれば、ヒーラーにもなれるらしいよ。なんか、真空なんとかっていう最強攻撃ができなくなるらしいけど」

「なるほど、彼女は火力も頼りになりそうですね。じゃあ、お二人に頼みましょうか」


 こうして、私達は〈狂乱〉ミダス退治に10層のボス宙域に向かった。

 ワープ港近くの小惑星帯に、ボスが潜んでいるんだとか。


 小惑星同士が衝突したばかりの場所で、かなりの密度で残骸が飛んでいるから注意らしい。

 ボス戦なのでワンルームは外していく予定。




◆◇Sight:とある戦闘機乗り◇◆




 俺は戦闘特化クラン、プロミネンス・サーガのマスター、ブレイア。

 本名は難波 圭吾。


 10層のボスが復活してしまったという事で、クラメンや外部から有志を募ってこれより討伐に向かう所だ。


 俺はフェイレジェでの戦闘機乗りとしては、日本で3本の指に入ると言われている。まあフェイレジェでは人型で戦うのが一般的で、戦闘機乗り自体が珍しいのだけれど。

 とはいえ、宇宙空間で飛ぶのは俺でも難しいんだが。


「有志の諸氏等、よくぞ集まってくれた!」


 俺が演説を始めると、フラフラと頼りない感じで有志たちが集ってくる――やはり宇宙は難しい。


 小惑星の周りに集まったバーサスフレーム達から、通信で一斉に拍手が返ってきた。

 今回集まってくれたのは500人。


 世界中から集まった200人が全滅してしまったので、多めに集めたけれど、初めて10層ボスのミダスが攻略された時の半分の人数だ。


 とはいえ、初めて攻略された頃より皆強くなっている。

 だから500人でも勝てる算段だ。

 あの初めてのボス戦の時は、初期の選択で選べる機体ばかり並んでいたけれど、ここに集まった皆の機体は勲功ポイントにして50万以上の物に乗っている人物ばかり、かなりの戦闘力を期待できる。


 しかし思えば、初めてのボス戦で特に酷かったのは、スワローテイルだ。

 アレのお陰で、戦闘機乗りは白い目で見られるようになってしまった。本当に、いい迷惑だ。


 俺の知り合いもスワローテイルに乗っていたが、戦場を引っ掻き回すだけだった。


 スピードしかないあの機体は宇宙空間では操作を失い、そこら中で事故を起こす。

 弾幕が一発でも当たればシールドを失い、弾かれ他の弾幕に衝突してすぐに撃墜される。

 だからといって、人型形態になり、盾役の後ろから撃ってもまともに火力が出ない。

 唯一火力がでる〈臨界黒体放射〉を撃てばすぐにエンジンが止まり、秒間ダメージが低すぎて話にならない。

 〈励起翼〉? あれはネタ武器だ。


 それでスワローテイルは地雷として扱われるようになった。すると全ての戦闘機乗りまで一緒くたにされ、地雷と囁かれる始末。


 もちろん俺の機体はスワローテイルなどではない。

 SP-1スピアー。――地球のB-1 ランサーという尖ったデザインの爆撃機を、半分くらいの小型にした感じだ。


 この機体は長い翼を生かして、様々な武器を装備できて攻撃力が高い。

 また、やや大型な胴体にシールド専用のジェネレーターを備えており、非常にシールドが硬い。

 ただその分、加速力はマイルドになっている。

 まあ宇宙で加速力など、ほとんど必要ない。


 宇宙ではすぐに人間が扱えるレベルじゃない力が発生するから、いかに強い力を発生させられるかより、いかに言うことを聞く機体なのかが重要になる。

 それに基本的にフェイレジェの戦闘機は速度過多だ。やろうと思えば、旋回したら人間がミンチになる様な速度が出る。そんな物は要らない。


「みなさん。今回10層のボスが復活したという事で、現在沢山の人々が困っています。今やフェイレジェの資源は地球の経済に必要不可欠、供給が滞れば突然の物価高騰にみまわれ世界が大混乱が起こるでしょう。これはなんとしても防がないといけない!」


『そうだ!!』

『だよな!!』


「座していては何も変わらない。やるのです、我々の手で!!」


『『『おおおおおお!!』』』


 意気も十分、これなら500人でも大丈夫だろう。


『さすがブレイアさん。みんなの事を考えてくれてる』

『戦闘機乗りでも、この人だけは別格だ』


 まったく――初めてのボス戦でスワローテイルがやらかしてくれたので、戦闘機乗りの評価をここまで回復するのに、大変な時間が掛かってしまった。

 この集まりも、戦闘機乗りの代表として名誉回復に努めるために行ったのだ。


『みなさん、wikiや動画で〈狂乱〉ミダスの攻撃パターンは確認済みですね?』

『もちろん』

『当然だよな』

『では参りましょう。経済でも人は死にます――我々の手で、沢山の命を護るために!!』

『『『おおおおおお!!』』』


 500のバーサスフレームが、一斉にロケットを噴射して加速。


『速さエネルギー3000で向かいますよ』

『了解』

『ラジャ』


 俺達は、立体的な九列縦隊――三次元縦隊と呼ばれるようになった物を敷いて遠くに浮かぶ手のような形のボス、ミダスに向かって飛んでいく。

 と、その俺達の視界を横断するように四つの光が見えた――恐らく何処かのプレイヤーだ。


「なんだ、あれ」


『なんですか・・・俺たちのメンバーじゃないですよね?』

『いや、メンバーは周りに全員いるけど』

『ボス退治に来たのかな?』

『いや、幾らなんでも四人だぞ? てかあの四人速すぎ、いくらでも加速できるからって、なんて速度で飛んでいってるんだよ。バカか?』

『まて、あれ――先頭の機体、スワローテイルじゃないか?』


「なに!?」


 スワローテイルで何をしに来た!? また戦場を掻き回すつもりか!?


『あ、戦闘を始めやがった!!』

『おい、こっちに弾幕が飛んでくるぞ!』


「盾役前へ!! ヒーラー準備してください!!」


 なんて事しやがる! 弾幕パターンが分からなくなるじゃないか!!


『どうします? もう弾幕がどうなっているのか、わからない人いるんじゃ?』


「あのバカどもが撃墜されるのを待ちましょう――皆さん、手を出ないでください」


 あーあ、もう滅茶苦茶だよ。まあ、スワローテイルに乗ってるようなバカにはいい薬かも知れない。


 俺はスワローテイルを鼻で笑いながら――ん?


 なんだ今、すごく気持ち悪かったぞ・・・? なんだ、この気持ち悪さは・・・・?

 あ――そうか、とんでもない速さだったのが、急にミダスと速度が揃ったんだ。

 例えるなら、パントマイムの壁芸を見ているみたいな奇妙さ――違和感。


「・・・・あのスワローテイル、相対速度を合わせるのはえらく速いな――どうやった?」

『どうしたんですか?』

「・・・・いや、なんでもない」


 首を傾げていると、スワローテイルから青い筋が伸びた。


「おいおい、初っ端〈臨界黒体放射りんこく〉かよ。エンジンの事考えてるのかよ」


 青い筋がパ、パ、パと――


「・・・・は3発? 止まるぞ、おい! エンジンがオーバーヒート寸前だろもう! あとは黒体バルカンすら撃ったら」


 ――しかし、俺の心配を他所に、パ、パ。と追加で2発。


「まて!! なんだ!? ・・・なぜエンジンが止まらない?」


 流石にもう〈臨界黒体放射〉が放たれる事は無かった。が――四発目で光崩壊エンジンが止まるはずなんだが、なんで5発も撃って止まらなかったんだ?


『てか、あのスワローテイルの動き変じゃね? なんで足を止めないんだ?』

『そういえば、弾幕の間をすり抜けるみたいに進むんだけど』

『――他の三機は普通に足止めてるけど――火力兼ヒーラーぽい小さいのがかなり火力あるみたいだな』

『つか、あのスワローテイル速い速い、なんで宇宙をあんな速度で飛んで弾幕にかすりもしないんだよ』


 そのとおりだ――物体は加速すればするほど曲がれなくなる。慣性があるんだぞ。


 早く飛ぶほど、曲がるのに大きな力が要るし、中の人間にも大きなGが掛かる。

 描ける軌跡が、真っすぐになっていく。

 ――って、思っていたらやっぱりだ。


「――あのスワローテイルやばいぞ! あの方向にあんな速度で突っ込んだら〝詰む〟。wikiで弾幕パターン調べてきてないのか!? 弾幕が集まる場所に向かってる――行き止まりだ!! 逆噴射も間に合わない!!」


『速すぎる!! ――速度落とさないと、曲がれない!! なんで逆噴射しないんだよ!!』


「ロケットを噴かして曲がろうとしたら、勢いが強すぎて避けきれないぞ!!」


 俺達がスワローテイルが爆散すると予想していると、スワローテイルが後方のロケットエンジンを横に持ってきて、急激な横転を始めた――速い。

 本当に速い。まるでプロペラのように何度も横転を繰り返す。

 すると次の瞬間――俺たちは信じられない物を見た。


『なんだ、あれ!?』

『物理現象無視してんのか!?』


 スワローテイルが、なぜかバク転をしたのだ。

 180度反転した。機首が後ろ向きになって後ろ向きで直進している。

 スワローテイルは、今の動きで全ての弾幕を躱した。


「な、なんだあれ。――なんで・・・なんであんな動きができたんだ!?!?」


『宇宙空間で回転しても、慣性方向に進むだけだろ?』


「あ、そうか――!」


 俺は、あのスワローテイルがやった事に気づいた。


「――まさかジャニベコフ効果か!! ――あのスワローテイル、ジャニベコフ効果で弾幕を避けやがった!!」


『ジャ、ジャニベコフ効果ってなんですか??』


「ロシアの前身、ソ連が10年も隠していた物理現象だ! ――テニスラケットの定理とも呼ばれるヤツで・・・・体感しやすいなら本か、あとで本を床や地面に対して水平にして、真っ直ぐ垂直に上へ一回転するように投げてみてくれ、するとなぜか勝手に捻りを加えだす。この不思議な現象がジャニベコフ効果だ」


『バタートーストの法則みたいなやつですか!?』


「ちげぇ・・・! とにかく、今のスワローテイルのように急激に横転すれば、翼の質量の不均一さを利用して、回転軸を変えることができる――ムーンサルトみたいなことが出来る。しかもあのパイロット、直線で構成された物体より、複雑な形の方がジャニベコフ効果が起きやすいのも理解してる。例えば直線で構成されたT字より、グリップが湾曲したペンチの方がジャニベコフ効果はすぐに起きる――さらに恐らく直進力で力の不均一さを高めて早めにジャニベコフ効果を起こしてる。けど――あんな狭い隙間しかない弾幕を抜けるんだ、弾幕から45センチくらいしか距離が無かった筈――とてつもなく繊細な操作になる―――あのスワローテイル乗り、スワローテイルを知り尽くしてやがる」


『でも、いくら重力制御装置が有るからって、あんな高速回転して大丈夫なんでしょうか?』


「そこは、仲間からスキルの光が飛んでいたし、何かスキルでも使ったんじゃないか?」


『なるほどスキルの援護を受けたんですね。――ブレイアさんは、そのジャニべコフ効果っていうので、その機体――スピアーで弾幕を回避出来ますか?』


「無理に決まってる! 速度が上がれば、景色が変わる。狭く、狭く――どんどん狭くなっていく。やがては針の穴のようになる。宇宙であんな事をするとしたら、針を投げて、針の穴に刺すような所業。――宇宙であんな速度、俺には扱いきれない。その上ジャニべコフ効果で弾幕を躱すなんて・・・・あのスワローテイルのパイロットの見ている景色は、どんな景色なんだ・・・?」


 俺が冷や汗をかいていると、また俺の視界内で馬鹿げた光景が展開される。

 三発の〈臨界黒体放射〉が放たれる。

 あれじゃあもう火力が出せないだろうと思ったら、スワローテイルの翼が青く輝いたんだ。


「嘘ッッッそだろ、お前!! ―――まさか!? 〈励起翼れいつば〉を準備してるけど、あれを使うつもりか―――!?」


『冗談じゃない!! 確かにあそこからスワローテイルに出せる火力はアレしかないけど、使い物にならない!! ――作ったヤツが頭おかしいとしか思えない武器。まだ重力や大気がある場所ならわかる。使えないこともない! ――だけど宇宙空間で翼で体当たりする武器とか有り得ない!!』


 スワローテイルが手のような形のミダスのスレスレを掠めて、周りを廻りだす。

 なんでだよ、なんであんなに正確に飛べるんだよ!?


「あ・・・・もしかして――あれ、銃やビーム兵器の反動まで計算に入れて角度調節してないか!?」


『そんな―――バカな』


 本当に奇妙で、気持ち悪い――違和感だらけの飛び方でスワローテイルがミダスの周りで舞い続ける。


「・・・・なんなんだよアレ、何がのってんだよ・・・未来が計算できる、ラプラスの魔物でも乗ってんのかよ?」


 おいおい、このままじゃ本当にボス仕様の〈狂乱〉ミダスを、四人で倒しちまうよ!!


『誘導ミサイル使いましたよ!? なんであんな高速戦闘中にわずか30センチほどしかないロックオン・ポイントを正確に射抜けるんですか!!』


「もう、本人に訊いてくれ! ――ってよく見たら、あのスワローテイルの仲間――閃光のアリスに、配信者の音子じゃないか!? ――な、なるほど、さっきの高速回転は閃光のアリスの〖重力操作〗でGに耐えたのか」


『あ――っじゃあ、もしかして、あのスワローテイル・・・噂になってる〝狂陰〟じゃ』


「狂陰?」


『狂陰のスウっていう。最近出てきた、ちょっと前までニュービーだった女子高生です』


「ちょっと前までニュービー? 女子高生? ――あれが!?」


『シミュレーターに24000時間籠もって、〈発狂〉デスロードをクリアしたっていう女子高生の化け物です』


「女子高生!? ――シミュレーターに24000時間!? 〈発狂〉デスロードって、盾で受けてたら絶対クリア出来ないって言われてるやつじゃないか――じゃああのパイロットは24000時間も、あんな高速回避戦闘を続けたのか!?」


 何千時間どころじゃなかった・・・・そりゃあ、スワローテイルを知り尽くしているはずだ。


『発狂デスロードには〈発狂〉レベルのミダスが出てきますよね?』


「じゃあ、彼女にとって〈狂乱〉ミダスなんてのは・・・・」


『・・・・も、物の数じゃないんだと思います』


 そこからスワローテイル達は、ミダスと30分ほど戦い続けた。

 唖然とする俺たちの視界で、とうとうミダスがジルコンのようになり、バラバラに砕けた。


「――はええよ! 流石に1000人で倒した時よりは遅いけど、あんな人数で倒せる速さじゃねえよ」


 こうして俺たち500人は、ただ呆然と、ありえない光景を見せられただけで帰路に就くことになったのである。


 スワローテイルを地雷とか言ってた自分が、恥ずかしい。

 あの女の子の登場で――もしかして、スワローテイルが流行りだしたり?


 ――いや、流石にないか。


~~~


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