第44話 エリアの外で自分を強化します

◆◇Sight:鈴咲 涼姫◇◆




 鈴咲 涼姫です。衝撃の事実を知りました。

 特別権限ストライダーは、プレイヤーに開放されている区域の外にも来れるのです。


 受付嬢のお姉さんに教えてもらいました。


「自分だけ行ける場所で強くなるのは、チートの基本だよねえ」


 言いながら、何かの串焼きをもぐもぐする。

 現在、食べ歩きで露店街に居ます。


「なんのお肉だろう?」


 グルメな私の楽しみと言えば、お食事。


 串焼きを包んでいた紙に、イラストが書いてあった。

 不定形のゲル状の・・・・


「スライム」


 ・・・・そっか、スライムかあ・・・。


 残さないように全部食べるけど、二度と買わない。


「あ、あっちの串焼きは・・・・ロック鳥?」


 象とかを持ち上げて飛んで、自分の雛に与える激ヤバな鳥じゃん。

 とんでもないの出てきた。


 クラーケンといいロック鳥といい、宇宙の食料事情は豪快だなあ。

 でもアレならあんまり違和感なく食べれそう。


 お店に近づくと、パエリアとかピザとかも有ることを発見。

 パエリアがすごく美味しそうに見えたので、注文。


 注文から数秒で提供されるのは、流石露天。


 私は、パラソルの下に設置された白い椅子に座って、本格的に腰を据えて食べることにした。

 なんでだろう。他の星だからか、ボッチも気にならない。旅行先だと堂々とお店に入れる現象なんだろうか。

 とりあえず、食事に舌鼓。


 パラパラのサフランライスに、脂がのった鳥の肉がしっとり、これにはパラパラ派もしっとり派もニッコリ。

 さらに色とりどりの野菜、そこに香ばしく焼けたチーズが乗って―――。


「んーーー!」


 私はスプーンを右手に握って、左手で机をバシバシ叩く。


「おいひい!」


 すずランガイド的に、星3つ!

 こちとら女の子だけど高校生、現在食欲モンスター。


 私はご飯を一気に掻き込んで、一緒に買った炭酸レモネードで流し込む。

 爽か炭酸で完璧。


 自分が思う限りに食事を楽しんで、瞬く間に完食。


「ぷはー! 満足!」


 お腹を満足させたので、散策を再開。

 ちなみにプレイヤーだというのは、街の人には隠しています。


 前回私が撃たれたことで、進入禁止区域に入る時は、プレイヤーだというのを隠していい事になったそうです。

 銀河連合、柔軟だなあ。

 ただし、進入禁止区域での撮影は禁止。もちろん配信もできません。


 アリスとかも連れてこれません。

 などと考えながら歩いていると、ウルティマートというホームセンターが目に入った。

 未来のホームセンター・・・?


 (ホームセンターって何でもあるしなあ)と思いながら入る。

 入ってみれば目を疑うような商品がズラリ。


 重力制御装置を利用した空飛ぶボード。

 絶対に緩まないネジ、これは現代日本にもあるか。

 VRインプラント。

 パイロットスーツ。

 量子魔術用の杖。教本冊子付属。

 銃。


「え、銃も売ってるんだ?」

『マスターの時代のアメリカでも、ホームセンターで銃を販売していますよ』


 ちなみに今のイルさんは、球体ドローン。

 そっか、じゃあ銀河連合も銃社会なのかな? ――まあ、モンスターみたいなのいる世界だしなあ。


 ちょっと見てみよう。

 そしてビックリした。


「え―――っ。これって」


 ニューゲーム249Ⅹが売られていたんだ。


「これ、私達は勲功ポイントでしか買えないのに!」


 本来プレイヤーは勲功ポイントでしか買えない武器が、そこかしこに並べられている。


「イルさん、これ私が買っていいの!?」

『もちろんです。マスターはこのエリアに侵入を許される、特別権限が有るのですから』

「本当にチート染みて来た。ていうかこのニューゲームたった1万クレジット!? 勲功ポイントだと5万もしたのに!」


 ちなみに私は現在、139万銀河クレジットと245万勲功ポイント持っている。

 ニューゲームが、いっぱい買える。

 というか「ショーケースの、ここからここまで全部下さい」とかできる。


『はい、ニューゲームは本来1万クレジットの品です。日本円にするとおおよそ10万円です。勲功ポイントで買うと、日本円にしておおよそ5億円になります』


 私は唖然として、ショーケースの中の銃を眺めた。

 お得なんてレベルじゃない。価格破壊というのも生ぬるい。

 アレもコレも欲しくなってきた。

 とりあえず店員さんを呼ぶ。

 女性の店員さんが、すぐにやって来てくれた。


「銃をお求めですか?」

「あっ、はい」

「資格はお持ちですか?」


 資格――そっか銃だもんね、使う資格がいるよね。


「あ・・・・イルさん、私って資格はどうなってるんだろう」

『店員様、こちらをご覧下さい』


 店員のVRに何かが映されたのか目を見開き、息を呑んだ。


「と、特別権限スト――」


 店員さんが言いかけたので、私は急いで止める。


「あっ――秘密にして下さい! ・・・そのせいで、ちょっと撃たれちゃったので!」

「そ、そうですか! 申し訳ありません! かしこまりました―――!」


 にしても幾ら銃社会でも、アサルトライフルとか、ホームセンターで売ってて良いのかな? まあ敵が強すぎるしなあ・・・。

 とにかく、店員さんが納得してくれたので、欲しい銃を彼女に伝える。


「じゃあそのルガーっぽいのと、ベレッタっぽいのと、S&W M19 4インチぽいのと、コルトパイソン 357マグナム 4インチぽいのと、L85ぽいのと、――」


 私がどんどん銃を指さしていくと、始めは「沢山買ってくれるんだ」みたいだった店員さんの顔色が、だんだん悪くなっていく。


「――M4A1ぽいのと、タボールっぽいのと、20式ぽいのと、89式ぽいのと、UZIぽいのと、MP9ぽいのと、イングラムっぽいのと――」


 この辺りで店員さんが「あの――その」と言い出した。


「――クリスベクターぽいのと、ヤティマティックぽいのと、キャリコm950っぽいのと、モシンナガンぽいのと、ナ◯シカの長銃ぽいのと――」


 私がまだ指さそうとすると、イルさんが私の視界を塞いだ。


『一旦止まって下さいマスター! ドーパミン、セロトニンが異常値を示しています! 喜びすぎです! 必要な物だけを選んで下さい!』

「そんな・・・」

『絶望に打ちひしがれた顔をしないでください。マイマスターの事を思って言っているのです』

「・・・うう」


 じゃあ、欲しいの・・・・じゃなかった、必要なのを絞ろう。


 まず拳銃が、もう一丁欲しい。予備が欲しいから、というか2丁持ちもしてみたいから。

 〖超怪力〗があるから2丁持ちも行けると思うんだよね。


 あと、信頼性が高いリボルバーも2丁欲しい。

 それから、室内で使うハウスキーパーの予備になるブルパップも。

 さらに、どんな扱いしても故障しない信頼性の高いアサルトライフル2丁が欲しい。


 あとはマシンガン2丁かな。

 それから最後に、スナイパーライフルとショットガン。


 この2つは両手で2丁持ちするものじゃないし1丁ずつで良いかな。いや、〖念動力〗で複数同時に使えるかもだけど。スナイパーはスコープ覗かないとスナイパー使う意味ないから〖念動力〗撃ちは意味ないし。


 ショットガン何本も同時に撃つなら、ほかの銃で代用するのもいい。ショットガンは近距離なら本当に威力が高いらしいけど。

 今から買おうとしてるマシンガンとかアサルトライフルなら十分代用できそう。


 という訳で買うのは、


 セミオート拳銃:ルガーぽいの(商品名:スムク)。


 リボルバー拳銃:S&W M19ぽいの(商品名:オトーレガーBG18)。357マグナムぽいの(商品名:スタルマン.714)。


 ブルパップ:L85ぽいの(商品名:リガルドA1)。


 マシンガン:イングラムM11ぽいの2丁(商品名:ブレビス15)。

 なんでこれだけ同じの2丁かっていうと。

 イングラムって名前がカッコイイのと、この銃って本来物凄く連射がはやいので反動が強くてサプレッサーを付けるの前提みたいなトコあるんだけど、私なら〖超怪力〗で制御できそうだし。

 見るからに作りが簡素で信頼性が高そうなので。


 スナイパーライフル:HOWA1500ぽいの(商品名:アーティストA1)。無骨で職人ぽい見た目に惚れたので。


 ショットガン:レミントンM870ぽいの(商品名:ヴァンダルA860)。やっぱショットガンと云えばレミントンだよね。


 まあどれも「ぽいの」だし、見た目ですらちょっとずつ違うんだけど。

 ただ、イルさんに訊くと、性能はそこまでかけ離れてないみたい。


 さて信頼性の高いアサルトライフルは、たぶん使用する機会が多いだろうから、ちゃんと訊かないと。


「イルさん、この中で特に信頼性の高い――弾づまりとか起こさないアサルトライフルってどれ?」

『サベッジTYPEⅡ。バリダスAFV。グリムG6です。どの品も砂に埋めても、海に沈めても、宇宙空間でも撃てます』

「え――宇宙でも撃てるの・・・?」


 いや、地球の銃も宇宙で撃てるって訊いたけど。

 ――あそっか、火薬は自前で酸素を発生させるから、燃えるのに周囲の酸素が要らないんだね。


 サベッジは、ドイツ軍の正式銃G36みたいな見た目をしていた。


 バリダスは、色んな国で採用されてる、アメリカでも採用寸前まで行ったFN-SCARみたいな感じ。


 グリムG6は、ブッシュマスターACRっていうのに似てる。


 3つの銃すべて、名銃と言われるM16みたいな制動性を持ちつつ、AK47みたいな信頼性も獲得してるんだろうと思う。


 特に制動性は見た目で分かった。イルさんにオススメされた3つの銃、どれもマズルからストックまで一直線なのでM16と同じ。


 信頼性に関しては分解しないと調べようが無いけど、イルさんが「砂に埋めても、海に沈めても――」と言っていたから、そうなんだと思う。


 そんな3つの中で、気になったのはブッシュマスターACRに似てるグリムG6。


 私達の時代のブッシュマスターACRは、ほとんど趣味で設計されたみたいな物で。

 「最高のアサルトライフルを作ってみたかった」的なロマンが詰まっている。


 ブッシュマスターACRは。私達の時代の銃のいいとこ取りみたいな感じな設計の銃。もちろん信頼性も高い。

 ただ、設計した会社の社長さんが本当にロマンだけで作ってしまったので、積極的に売り込まなかったせいで、まるで普及していなかった。


 まあこのグリムが、同じ内部機構を持ってるかは謎だけど。

 でもこの銃の私が特に好きな点は、ストックの上部が斜めになってて頬を乗せやすい所。


 ただ、この方式を取った上で銃口からストックまで一直線にして反動を抑えようとすると、どうしても銃口とスコープの位置のズレが大きくなって視差パララックスが起きて、それは様々な距離での対応の難しさになる。


 でも、火薬が爆発する部分をあまり薄くするわけにも行かないし、人間の目の位置と頬の位置に距離があるからどうしても視差はできるんだけど。

 ストックに関しては、SCARとブッシュマスターはそっくりなのでSCARも頬を乗せやすい。


 ただブッシュマスターのほうは、弾倉が湾曲してる。これなら伏せた時、わずかでも姿勢が低く出来る。

 それに、伏せた時は弾倉が地面にまず接地する事になるから、面で接地するより線で設置するほうが取り回しは良さそう。これは好みによるんだろうけど。


 あとリロードする時、曲がっている方が、弾倉の前後がわかりやすい。

 それから、湾曲してる方が弾づまりしにくいらしい。


 外から見ただけで、分かる情報はこんなもんかなあ。


 ロマンの詰まった銃に似た銃かあ―――。

 私がバリダスかグリムにするか悩んでいると、店員さんが話しかけてきた。


「銃が好きなのですね」

「あ、はい」

「バリダスかグリムでお迷いですか?」

「そうなんです」

「ではグリムをお勧めしますよ、グリムは工具なしで分解できますので」


 じゃあ決定!


「ありがとうございます。よし、グリムG6を買います――あとは、この20式みたいな、クニトモ21も買おう」


 20式は日本のアサルトライフル。日本製の銃で、日本人に合わせてあるんだよね。例えばストック上面の傾斜もなだらか。

 そんな銃に似たクニトモ21も、私に向いてそう。

 だれが顔の平たい種族だと?


 20式もSCARを元にしてる所あるから、見た目は似てる。

 というか20式は様々なアサルトライフルのいいとこ取りしてるから、これもなかなかのロマン銃。


 一応試射もさせてもらって、全部買った。


「弾薬も買わないと。――これはゲーム用の場所でもクレジットで買えるから値段が同じだね」

「お客様。銃がお好きなら、ここから200メートル先にある武器ショップにも顔を出してみる事をお勧めします。競技用の銃を作っている職人がおりますので」

「競技用ですか――どういうモノですか?」

「精密さが、段違いです」

「それは――ありがとうございます。行ってみます!」

 

 ガンスミスなのかな。


 私はその後、〈時空倉庫の鍵の中〉に入れる冷蔵庫を買うことにしたり、空飛ぶボードを買うことにしたり、プレイヤーが聴けないはずのラジオが聴けるラジオプレイヤーを買い物カゴに入れたりしながら、さらに店内を徘徊した。


 ちなみに後になって、倉庫の中は時間がないので冷蔵庫とか意味無しなことに気づく――倉庫の中は物体に変化がなくて、冷蔵庫が無くても冷やした物入れたら、冷えたままでした。

 でも倉庫の外で使えば、冷やすのに役に立つかなあ。


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