第19話 自分を強化します
◆◇Sight:鈴咲 涼姫◇◆
鈴咲 涼姫です。今日は水曜日で、ちょっと学校が早めに終わり時間的余裕ができました。
そこで、お流れになっていた収納アイテムを取りに行こうという話になりました。
で、――その様子を生放送で流そうという事に。
という訳で、配信準備中。
「おお・・・チャンネルが50万人になってる・・・・伸び率がおかしい」
「スウさんなら当たり前の伸び方ですよ――もっと早い人も居るんですから。それより、閃光のアリスの事バレちゃったんで私も出てもいいですか?」
「出てくれるの!? ――もちろん! 一人は心細かったんだよ・・・!」
「本当ですか!? じゃあ良いものを用意したんですよ、貰ってもらえますか?」
「え!? プレゼント!? 凄く嬉しい!」
「ちょっと待ってくださいね」
ちなみに勝手に出来たポルックスが、今日もスワローさんにスリスリしながら『ママー、戦いまだー?』といっている。ここ、宇宙で部屋が揺れるからやめなさい。
八街さんがパイロットスーツに着替える。
相変わらずピンクみたいな赤色みたいなスーツだ――白いラインがワンポイント。ビシッと決まっててカッコイイ。
身体の線が完璧に出ちゃう恰好なのに、スタイル良いから似合うんだよなあ。
着替え終わった八街さんが、なにか黒い布? ビニールみいたいなのを持って私の方へ来る。
「これ、わたしのデザインしたヤツで、ちょっとゴスロリ風味を加えたパイロットスーツなんです」
「――――え?」
「今日は上着なしの、これで一緒に配信しましょう!」
「―――え、いや、だめ、こんなの痴女じゃん!」
八街さんが泣きそうな顔になった。
「ち、ちじょ・・・・」
「ご、ごめ! でも・・・」
「せっかく作ったんです――貰ってくれるって言ったのに・・・・」
胸が、胸が痛い!
「そりゃ・・・八街さんはスタイルいいし、水着で人前に出ることも有るだろうから慣れてるかもしれないけど―――」
「鈴咲さんもスタイルいいじゃないですか! 慣れってのは、慣れれば良いんです!」
「こちとら日本人体型なんだよ!」と叫びたかったけど出来なかった。
「―――そのパイロットスーツは、防御力もバッチリですよ。・・・地球の銃やナイフのくらいなら防ぎ切る
八街さんが、めちゃくちゃショボーンとしている。
私は胸の痛みに耐えられなくなった。
「じゃ、じゃあ今日だけだよ――・・・・」
なんだか八街さんが「ニヤリ」とした気がしたけど、気の所為だよね?
私はシャワー室に移動して、渋々パイロットスーツに着替え始める。
そして着替えてる途中で気づく。
「ちょ、八街さん! これあちこち透明なんだけど!!」
太ももとか肩とか二の腕とか透明素材で出来ていて、これじゃあ際どい水着じゃん!
上半身はあちこち露出したタートルネックのセーターみたいなかんじで、ピッチピチ。
しかも全身の光沢がすごくて、体型が物凄く目立つ。
「ああ、凄く似合います!」
「こ、こんなので人前に出れるわけ―――」
「えっ、スウさんは童貞を殺す系が好きだと思ってました。前の服も童貞を殺す服みたいな感じでしたし」
「なんの話!?」
「童貞を殺すセーターって知りませんか? それをゴスロリな水着風にしました。名付けて童貞を殺すパイロットスーツです」
「だから、なんの話!?」
「じゃあ、配信始めますね!」
「は、え!? ちょっと、待――――」
八街さんが、
私は、急いでパイロットスーツをちゃんと着る。
八街さ――アリスが、私の肩を抱いて引き寄せる。
私は、思わず心配で尋ねていた。
〔顔、隠さなくて大丈夫なの!?〕
〔顔を
私がアリスを見上げると、本当に別人の顔になっていた。
スナークさんの配信に出てきていたアリスだ。
――八街さん、本当に閃光のアリスだったんだなあ。
というか、
「・・・そんなのあるなら教えてよ、アリス!」
まあ、私は持ってないから使えないんだけど。
私が八街さんをアリスと呼ぶと、彼女が鼻と口を同時に手で押さえた。
〔な、名前をよんでくれました―――! ――いえ、IDを呼んだだけか・・・〕
何かを呟いたかと思うと途端に スッ と無表情になる。
「スウさんの顔は出したほうが、チャンネルは絶対に伸びると思ったんです。私はスウさんの敏腕プロデューサーですから」
「それならアリスの顔のほうが――ああ、ここは私が作ったチャンネルか」
すごすごと諦めることにした。
もう顔をだしちゃって、今更だし。
確認用に配信を流しているモニターに、私達の姿が映された。
配信が始まったみたいだ。
一斉に賑やかになるコメント欄。
うお・・・25000人も観てる。
❝待ってたぞおおおおおお!❞
❝久しぶりの配信!!❞
❝なんで暫く配信してくれなかったんだよー❞
❝隣のモデルみたいなスタイルの人は誰?❞
❝赤いパイロットスーツ。まさか❞
❝今日はスウも、パイロットスーツだけじゃん。つか、えっど。また童貞を殺すやつ?❞
❝エッッッッッッッッッッ!❞
❝これは叡智に目覚めて、賢者になっても仕方ない❞
「あ、あんまり見ないで下さい」
私が身体を隠すようにすると、コメントが更に騒がしくなった。
❝相変わらず初々しい反応www❞
❝ワンピースの水着みたいなもんじゃんワロワロw❞
❝ちょっと際どいけど、ワロワロワロ❞
❝恥ずかしがる姿が
私が困っているとアリスがコメントに反応した。
「コメント欄の皆さんにも分かりますか! わたしも、この恥ずかしがる姿を見たかったんですよ!」
ええ―――・・・・。
陰キャが一番嫌がるのは、羞恥プレイなんだぞ・・・??
❝分かる!❞
❝分かってるwww❞
❝ところで、貴女はどなた?❞
「あ、わたしですか。薄々気づいている方もいると思いますが、はじめまして赤い閃光とか呼ばれているアリスです」
コメントが爆発するように増える。
❝おおおおおおおおおおおおおおおお!!!❞
❝この人が赤い閃光のアリス!?❞
❝
❝すんげぇスタイル良い❞
❝でもなんか顔はちょっと予想外。髪色や体型に対して、和風美人?❞
❝俺はスナークの配信で、閃光のアリスを何回か見たから知ってた❞
顔の認識阻害は、しっかり働いてるみたい。
私は今日の目的を、皆さんに説明する。
「今日は常設クエストをクリアして、アイテムを手に入れに行きたいと思います」
そういうと、気づきを与えてくれるコメントが流れた。
❝手に入った勲功ポイントは使わないんですか? 今後のためにも、そろそろ使ったほうが良いんじゃないでしょうか❞
「あ、そっか。使ってみますか?」
コメントに話しかける時は、やっぱり敬語だよね。
❝使って、使って❞
❝何ポイントあるの?❞
「最初ので100万、次ので40万ポイント貰いました。昔のばら撒きで貰ったのと合わせると160万あります。どういう風に使ったらいいか教えてください、どんどんネタバレとかしてください」
❝一回のクエストで、100万?!❞
❝ちょwww 160万とか、空母買えるじゃんwww❞
❝俺、二年掛けてやっと98万ポイントなんだけどw❞
八街さんが「一回で100万も貰えたんですか!?」とか驚いている。
錯乱アトラス、一杯倒したから増えたらしい。
あと、アイビーさんからのボーナスもあったし。
❝じゃあ、まずステータスに振った方がいいよ! 武器は無くしたりするし❞
❝でも、ステータスは効果低いから注意だよな❞
❝戦闘機を、もっといいのに買い替えないの?❞
❝部屋を改装しよう❞
❝連合クレジットでリゾート惑星買おうぜ、惑星❞
❝んな金あるわけ無いだろ❞
❝資源衛星を買おう❞
私はコメントに教えてもらったので、返事をする。
「ス、ステータス上げるのがいいんですね。戦闘機は買い替えないです、スワローさん以外使う気ないんです。部屋は、変形したりG掛かかったりすると〝しっちゃかめっちゃか〟になるらしいので、あんまり物を置きたくないです。惑星欲しいですね」
❝惑星買う気なのかwww❞
❝まともに買うと、連合クレジットがウン兆とかいるから、頑張ってw❞
❝銀河中央近くの、所有者居ない資源惑星ならタダだぞ❞
❝MoBがびっしり張り付いてるけどな❞
え、惑星ってそんなに高いの? それなら連合クレジットを
ちなみに天の川銀河の中心は、射手座A*っていう超大型ブラックホールなんだけど。このブラックホールの内部からモンスターは来ていて、射手座A*に近づくほどモンスターが強くなるらしい。
射手座A*の危険宙域は半径10000光年あって、100光年毎に層に分割されてて100層あるらしいんだけど、攻略は30層で止まってて31以降はプレイヤー的には前人未到なんだとか。
前人未到と聴くと、ワクワクしてしまう自分の精神構造が憎い。
アリスが、ステータスの上げ方とか教えてくれる。
「ウィンドウを開いて、そこから連合のサイトへ行って、そこで報酬と勲功ポイントを交換するんですよ」
「なるほど」
私は、ストラトス協会の美人受付嬢さんがしていたように指をL字に動かしてウィンドウを開く。
ウィンドウで「銀河連合」と検索すると、トップに表示された。
ズラリと並んだ報酬に、私はちょっとテンションが上がる。
銃とかいっぱいあるし。
「いっぱい報酬があるね!」
「とりあえず、武器防具を1セットは持っておいたほうが良いですよ。あとはステータスに変えちゃってもいいかもです――普通はバーサスフレームを買うんですけど、バーサスフレームを買う気が無いみたいですし。でもスワローちゃんの修理費用は残しておいてくださいね」
「わかった、ありがと!」
じゃあ100万ポイントを報酬に変えようかな。残りは60万ポイントかな。
軍用テントセットとか、軍用グラップルワイヤーとか、レーションとか色々目移りする。
自称グルメな私は、銀河なレーションの味も気になる。
「グラップルワイヤーは結構役に立つので買っても良いかもですが、テントとかご飯とかは銀河クレジットでも買えるので止めたほうが良いかもです。勲功ポイントは貴重なので」
アリスの言葉が、凄くためになる。
「じゃあ、まずは武器を――」
検索すると、物凄い数の武器が表示される。
アリスが私のウィンドウを操作すると、ウィンドウが増えてワンルームに、陳列棚のように並んだ。
「わ・・・便利」
「どれを買いますか?」
「一杯あるね、目移りしちゃう」
武器の陳列棚に向かう。
棚の前に来ると、他の陳列棚が消えて、武器のウィンドウが私を球体状に囲んだ。
さすが銀河のショッピング、こんなとこまで超科学。
「ホントにどれが良いかな、――というか地球にある武器の形に似てるんだね」
「ですね。やっぱり人間の使うものですから、そんなに形状に差はないんでしょうね」
ただ、たまにリアルではあり得ない形のもある。例えば腕にはめる、空◯砲とかサ◯コガンみたいなSFチックなの。
でも、殆どは地球にあった武器の見た目。
「あ、これコルトガバメントに似てる!」
「コル・・・なんですか?」
どうやらアリスは、あまり銃に詳しくないみたいだ。
でも私は、コルトガバメントって多くのアニメに登場するから知ってる。
「コルトガバメントは愛称でね、正式名称はM1911。アメリカのコルト・ファイアーアームズ社が作った拳銃で、アメリカ軍に1911年に採用された銃なの。信頼性が高くて、70年もアメリカ軍の正式な拳銃だったんだよ。信頼性の高さの秘訣は、ジョン・ブローニングが設計したティルトバレル式のショートリコイル方式なの。薬莢を排出するために銃身が僅かに傾くんだ! こんな細かい所もアニメとかで再現されててね!! コルトガバメントは色んなアニメにも出てるの、例えば鋼の錬金――」「ちょ・・・・ちょっとまって、まって、スウさん!」
❝すんげぇ早口www❞
❝銃が好きなのかワロワロワロw❞
❝詳しすぎワロw❞
私は自分の失態に気づいて蹲る。
「ぁぁああぁぁ! 違うんです! 忘れて下さい!! 皆さん記憶喪失になってくださいいいぃぃぃ!!」
❝大丈夫、なんか親近感わいたからw❞
❝君となら
❝必死で趣味を説明するスウたんかわいい❞
「シテ・・・コロシテ」
私はまたも溶けるように
❝スウたん召されるな!❞
❝君にはまだ早い!❞
❝『ザオリク』!❞
コメントに
「ほ、ほらスウさん、他の商品も見ましょう」
「ウン」
アリスに促されて銃などを見回すと、アリスが「あっ」とある商品で目をとめた。
「セイバー・シリーズ復刻してたんですね! ホタルマル・ブリンガー欲しかったんです!」
「ほ、ほたるまるぶりんがー?」
アリスの視線の先を見れば、でっかい日本刀みたいな形の刀が。
「これは日本の大太刀の形をした、高周波ブレードなんですよ。蛍丸っていう刀をモデルにしていて、逸話のように自己再生能力があります。あと振るうと蛍のような光が飛び散るそうです。あ、蛍丸っていうのは鎌倉時代に作られたとされる大太刀なんですが、現在は行方不明となっています――残念です。刀身は青く輝く地鉄で
❝こっちもスッゲー早口w❞
❝似た者夫婦www❞
❝刀好きなのかワロw❞
アリスが、自分がやったことに気づいて硬直し「―――ッスー」と息を吸った。
そうしてホタルマル・ブリンガーを、ものすごい早業で注文して、銃を物色しだす。
「この銃、面白い形してますね」
「あ、ワルサーPみたいな形をしてるね。ワルサーPっていうのは――」
説明しかけて、私は自分の口を押さえる。
「――有名な、怪盗が持ってるヤツ」
「ですね、知ってます。あはは」
❝危ない所だったな❞
❝また召されるところだった❞
私は他の銃もザッと見ていく。
いかにもSFぽい銃もある
スター◯ォーズにでてきそうなのとか、ブリキのおもちゃのレーザーガンみたいなのとか。
「こっちはフリントロックっぽい形。グレネードランチャーかな」
フリントロックは昔の海賊が持ってそうな、マスケットの短いやつ。
「その銃がよく、グレネードランチャーってわかりますね・・・」
「え・・・うん。なんで分かるんだろう」
❝なんでか本人にも分からないのかよワロw❞
❝銃器に詳しすぎるんよwww❞
「ど、どれにしようかなあ」
私は適当にはぐらかした。
❝プレイヤーになったら、あんな銃が撃てるの?❞
❝地球では使えんがな❞
❝地球に持ち込んでも、安全装置が掛かって解除できなくなる❞
❝戦闘機とかも、安全装置が掛かって戦えないしな❞
❝どっかの国が航宙戦闘機を戦争に使おうとしたけど、消えちゃったんだよな❞
❝俺は、宇宙の彼方でもいいから使いたいわ❞
❝勲功ポイントは、スウたんみたいに簡単に手に入らないから注意❞
❝普通の人間は最初の戦闘で戦闘機失って、プレイヤーができなくなる。ソースは俺❞
「やっぱ、可愛いコルトガバメントを買おうかな――コルトは可愛い
M1911は〝大口径でしかも実戦的〟という、玄人って感じの銃なんだけどね。
「――銃をクールはともかく、可愛いという感性はわからないですね。コルトっていう銃の見た目のなら、ニューゲーム249Xが良いですよ。これ制震機っていうのがついてて反動を抑えてくれるんです」
「ニューゲーム?」
私はアリスがオススメしてくれた銃のスペックを観た。
「え.結構口径の大きい弾が弾倉に――25発も入るの!? そんなに入る弾倉どうなって・・・・」
――あ、薬莢が小さい。なにこれ。
「・・・・なるほど、銃が頑丈になって制振機もついたから火薬の威力を上げられた――だから薬莢が小さくなった分、弾倉の容積を自由に使えるんだね。弾頭って小さいもんね」
アリスが、ブツブツ言っている私を観察でもするような目で見ていた。
「――やっぱり詳しいんですねえ。普通、わたし達くらいの歳の女の子は、そんなに銃の事ペラペラ喋れないですよね・・・?」
「え、そ、そう!? まあ、とにかくニューゲームをカートに入れて。次は防具かな~!?」
ちなみに、ニューゲーム249X = 5万勲功ポイント也。
若干早足で防具の場所に行くと、防弾チョッキみたいなのを想像していたら、なんかベルトみたいなのや腕輪みたいなのが並んでいた。
「え、なにこれ想像と違う――」
「エネルギーフィールドが護ってくれるんですよ」
「思った以上に超科学」
「防弾チョッキみたいなのは安いですよ。ちなみにこのエネルギーフィールドは地球でも使えます。あ、プレゼントしたパイロットスーツにも防御力ありますんで」
「そ、それは訊いたよ」
「防御系のアイテムは地球でも使えるんで、そのパイロットスーツはもう脱がないでいいですよ」
「脱ぐけど・・・」
「アリスがスウさんに送った、アリスウツですよ?」
「意味がわからない」
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