ある男視点
この任務についてどれくらい経つだろう。
もうすぐ17年か。
入隊して最初の任務が、とある対象者達を監視することだった。
私も若く、先輩達と行動を共にした日々が懐かしい。
いつの間にか隊は縮小されて、
気がつけば私1人となっていた。
毎日、森の中に住む者達を監視すること。
それが与えられた任務だった。
対象者達に気づかれぬこと
決して対象者達を逃さぬこと
決して殺さぬこと
食事はパンを週に一度届けるきまりになっている。早朝気づかれぬように門のところに。
木の影に隠れたり、木の上から見張ったり、ずっと私は彼女を見てきた。
そういう私は、今年35になる。
18からずっと彼女を見てきた。
彼女は17になるのか。
母親が亡くなり、彼女1人になった時は会議が開かれたようだ。
報せを待つ間も私達は監視を続けた。
泣き暮れていた彼女も、
日が経つにつれて、
泣くこともなくなり、
大人しく軟禁生活を送っていた。
母親の亡骸は弔い丁重に埋葬したと聞く、
幼い彼女は…覚えていないだろうが。
リィーン…
幼くして一人で過ごす彼女に、
何度声をかけようと思ったことか…
本当に大きくなった。
この感情はなんなのか…
毎日変わらぬ日々の中で、ある日を境に彼女に変化が現れたようだ。
大人しい彼女に何があったのか。
門を出ようとした時は焦った。
石を投げてカゴに命中させたものの、罠の発動に驚いたようだった。
森の中まで出てきた時も心臓が止まるかと思った。
彼女は石で罠を確認しているようだったが、あの先には手足を麻痺させる毒草が生い茂っている。
それ以上進めさせたくなくて、弓矢で合図したつもりだったが。
姿を見られる訳に行かないので、手荒なことをしてしまった。
一生の不覚…
どうしてこうも彼女が気になるのか…
対象者だからか。
監視している私は彼女に恨まれることはあれ、決して許されることはないだろう。
彼女を一生見守ることで、
少しは罪の償いになるだろうか。
リィーン…
決して触れることはないと思っていたのに、
倒れた姿を見た時は、
何も考えられずに、咄嗟に飛び出していた。
気がついたら真っ青な彼女に水を与えていた。
抱き上げると、その体はとても軽くて、壊れてしまいそうだった。
食事がパンだけなど、どうかしている。
自分が憎い。
任務放棄など家の恥。
だが、放ってはおけない。
リィーン
許されるなら…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます