第4話

パンを少し食べると、今日も庭に立つ。


日差しが強く、暑い季節になってきた。



外に立つのも体力がいる。


日焼けした腕を見る。


『ガリガリだね、私…』


直射日光に照らされて、滝のように汗が吹き出してくる。


無駄に動かないようにして、体力の消耗は極力抑えるようにしている。けれど、容赦なく照りつける太陽によって、何もしなくても体力はどんどん奪われていく。


「やばいかも…」


そう思った時には、すでに遅かった。


頭がクラクラしてきて、視界がボヤけ始める。

 

目もチカチカし始めて、立っていられない。


家に戻ろうと一歩踏み出すこともできずに、そのままバタンと地面に倒れてしまった。


朦朧とした意識の中で、必死に誰かの声が聞こえてくる


「おい!大丈夫か?

これを飲んで、さぁ、口を開けて」


誰?



もしかして、お迎えが来たのかな


「ゴホッゴホッ」


口の中に冷たい水が流れてきて、思わず咳き込む




「大丈夫か?

焦らずゆっくり飲んで」


優しい声と共に、口の中に水が注がれる


誰かが冷たいお水を飲ませてくれているようだ。



美味しい




抱き上げられたような浮遊感を感じたものの、そのままぷつりと意識を失ってしまった。



どのくらい気を失っていたのだろう


例えようのない不快感が襲われて、意識を取り戻した。


身体中が火照ったように暑い。


倦怠感はあるものの、ゆっくりと目を開けた。



ここは……?



どうやら、自分のベッドの上にいるようだった。


外にいたはずなのに、いつの間にここまで戻ってきたのだろう?


不思議に思いつつも、上体を起こして立ち上がりかけた時だった。


きつい、

やばい…


顔から血の気が引くような感覚に襲われる。

バランスを崩して、そのままベッドから落ちてしまった。


痛い


床に落ちた衝撃による痛みと、言いようのないきつさと、気分の悪さから、そのまま起き上がることもできなかった。


まぁ、しばらくこのままでもいいか。

少し休めば回復するかもしれないと思い、このまま眠ろうと思った。



すると、ドタドタと誰かが急いで駆けてくる音が聞こえる。足音はどんどん近づいてくる。


不思議に思っていると、誰かが私の体を抱き上げて、ベッドの上に寝かせてくれた。


『???』


「大丈夫か?どこか痛むか?」


優しい男性の声が聞こえる。誰かがいるはずなんてないのに。


重い瞼を持ち上げてみると、目の前には男性の姿があった。


『!』


だ、だれ??


「顔色が悪い。ベッドから落ちないようにここにいる。ゆっくり休むといい」


男性は、水に濡らしたタオルで顔を拭いてくれた。

冷たいタオルの感触は、火照った顔にはとても気持ち良かった。


心地よいタオルの感触に安心して、そのまま気を失うように深い眠りについた








 

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