第3話

洗濯物を干し、一通り掃除を終えると、あのビラを探した。


確か、捨てずに取ってあると思うのだけど…


ゴミ捨て場は、家の裏にあるのだけど、ゴミはいつの間にかなくなっている。多分定期的に誰かが来ているのだと思う。まぁゴミ捨てと言っても、普段はホコリくらいだけだし、滅多にでないんだけどね。


ゴミ捨て場より先に進めるか試したけれど、こちらもダメだった。


『あった!』


私は、引き出しの中から無造作に入れていたビラを取り出した。

ビラのシワを伸ばして、改めて記事の内容を確認する。


えっと…


兼ねてより愛を育んでいたレオン殿下とマリア嬢


無事にシナリオ通り婚約したのね。


このビラを発見してからどれくらい経つのだろう。


う~ん…マリア嬢が私を見つけてくれるのよね。


ん?待って、


そもそもどうやってこの家に辿り着くの?


家の周囲には罠があるのに。


ヒロイン補正でヒロインには罠が発動しない…とか?



きっとそうよね。


でも、もしも、万が一マリア嬢が怪我でもしたら、マリア嬢を溺愛するレオン殿下から、私、殺されるかも。



それは困る。そんなの嫌。




悩んだすえに、私は、毎日庭から門の外を見ることにした。それこそ、かかしのように、ひたすら立っていた。


万が一マリア嬢がやって来たら 罠があることを伝えるべく。


他に妙案が浮かばず、外に立つのが日課になった。おかげで、ただでさえそばかすのある顔なのに、日焼けしてさらに肌が荒れた。



『はぁ。誰もいないから独り言が増えるのよね』


ビラには、レオン殿下とマリア嬢の姿絵が描かれていた。


整った顔立ちのレオン殿下と、遠慮がちに微笑むマリア嬢。まさにお似合いの2人。


私も、せめて今世では美人に生まれたかった。


『はぁ…』


何度目か分からないため息が漏れる。


じっと立ってるだけなんて、どんな苦行よ。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る