檻から出る。血と汗で肌がべったりとし、粘つく混合物がまとわりつく。顔の痛みが現れ始め、観客の鼓動がまだ胸に響く。疲労と荒い呼吸にもかかわらず、陶酔感に似た力が僕を支配する。群衆を見渡し、バスティアンを必死に探す。無事でいるか確認したい。ダンテがまだ約束を守っているか確かめたい。しかし、この不安は次の対戦がもたらすものへの不安と入り混じる。

工場を埋め尽くす人々の海の中で、必死にバスティアンを探す。遠くに、無数の顔の中で、あるものが即座に僕の注意を引く。見覚えのある金色の輝き。それは間違いなくバスティアンの髪だ。彼だ。バスティアンはそこにいる。ステージ近くの最前列に座っている。しかし、心の平穏を乱すものがある。ゼレクが彼の隣にいる。ゼレクの腕がバスティアンの首に回されている。偶然の観客には友好的に見えるかもしれないが、ゼレクのような人間を十分に知っている僕には、そのメッセージは支配であることがわかる。

ステージのライトが彼らの顔を照らし、その一瞬、僕たちの目が合う。バスティアンの目には、僕を見て安心したような表情と、無言の警告が混ざっている。しかし、近づく前に、何かが強く腕を引っ張り、集中が途切れる。

「どこに行くつもりだ？」と荒々しい声が吐き捨てる。ダンテの手下の一人だ。答える間もなく、彼は強引に更衣室へと引きずる。止められるわけにはいかない。何とか抜け出せないかと考えながら。彼の指が僕の肩に触れると、空気が緊張で張り詰める。引きずろうとする彼に苛立ち、「何のつもりだ！」と問い詰める。ダンテの手下は一歩近づき、廊下の明かりに彼の黒い姿が浮かぶ。「ダンテに言われて更衣室に連れて行くんだ。次の試合の準備をしろ」

彼をじっくりと見ると、突然気づく。首に蛇のタトゥーが滑り込む黒人のギャングだ…あの夜の同じ男だ。背筋に冷たいものが走る。

何も言わずに彼の後をついて行く。正直に言えば、彼の存在は威圧的だ。「初めて見たときは君を侮っていたよ」と彼は邪悪な目つきで呟く。「自分の手で潰してやりたかった」彼は不気味な笑みを浮かべて続ける。「正直に言うと、まだそうしたい。でも、君がやったことは悪くなかった。運が良かっただけじゃないか、見てみよう」彼の顔はより真剣で冷静な表情になる。

彼の口調は不気味だ。脅迫めいたものと、わずかな敬意が混ざっている。彼の目をじっと見つめ、答えない。彼はただ歪んだ笑みを浮かべる。「ところで、俺はクレイデンだ。ダンテが中で待ってるぜ」その不気味な別れの言葉を残し、彼は去っていく。奇妙なやり取りだったと思いながら、更衣室へと進む。

2017年11月28日、15時55分 -

深呼吸して更衣室に入る。ダンテがそこにいる。即席の玉座に腰掛けた王のように、自信に満ちた様子で。「やあ、坊や。見事だったよ。君が期待を裏切らないとわかっていた」とダンテは穏やかで慎重に調整された声で称賛する。まるで僕の活躍を称えるのがただの形式的なことのように。彼の口調は誠実だが、その緑の瞳が僕を見つめる様子に警戒心が高まる。まるで僕の中のどこかに亀裂を探しているかのように。

ダンテの鋭い視線を感じながら、心臓が胸の中で激しく鼓動する。「さあ、座って」と彼は一瞬混乱するほど柔らかな声でつぶやく。しかし、そのジェスチャーは明確で、彼の前にあるベンチを指している。慎重に腰を下ろす。

座ると、彼の鋭く計算された目がじっくりと僕を観察しているのに気づく。試合の結果に驚いている様子はない。実際、彼はこの状況を事前に頭の中で何度もシミュレーションしていたかのような雰囲気だ。まるで僕のことを知り尽くしているようで不気味だ。体勢を整え、弱みを見せないように努めるが、彼が求めているのは表面的なものではないとわかっている。

彼が僕に興味を持つ理由は依然として謎だ。彼の言葉や仕草から答えを探そうとする。なぜ彼は僕にこんなに興味を持つのか？

ついに彼が沈黙を破る。称賛と狡猾さが混ざった言葉が流れ出す。「試合を見ていたよ。君に潜在能力があることはわかっていた。でも、気になることがある」と彼は前に身を乗り出し、目は鋭いダガーのようだ。「なぜ相手を仕留めなかった？彼は君の足元で屈服していたのに」彼は初めて雨を見る子供のような好奇心を湛えた表情で尋ねる。

その直接的でシンプルな質問に戸惑う。一瞬、言葉が喉に詰まる。試合の記憶が蘇り、アドレナリン、興奮、そして慈悲を示すことを決めたあの瞬間が。

「なぜ？」と呟き、混乱した声で。「ええと…これ以上の暴力は必要なかった。試合はもう勝っていた」としっかりとした声で答える。彼の目を見つめながら、彼が本当に何を求めているのかを見極めようとする。彼にとってこれはただの遊びなのか、それとももっと深いものがあるのか？

ダンテの唇に浮かぶ笑みは困惑させる。真剣さと混ざった笑みだ。「聞けよ、坊や。このクソみたいな世界はそんな風にはできていない。先に出し抜いて叩き潰さなければ、彼らは迷わず君を潰すだろう」と一瞬で真剣な目つきに変わる彼の視線に、これまで感じたことのない寒気が走る。

ダンテは静かな声で、自分の過去に踏み込む。「かつては僕も君のようだった、レアンドルス」と彼の視線は遠くを見つめ、遠い記憶の深淵に沈んでいるかのようだ。「しかし、時と状況は人を変える。君も遅かれ早かれそれに気づくだろう」彼の答えは曖昧だが興味をそそる。彼が何を指しているのか？彼を変えたのは何だったのか？

彼が次の試合の話題に触れると、二人の間の空気が一層重くなる。ダンテはわずかに頭を前に傾け、僕の全注意を引きつける。「よく聞け、坊や」と彼は一つ一つの音節を愛撫するような声で始める。「次の対戦相手は僕のお気に入りの一人、クリアンだ。あの檻の中では本物の捕食者だ」その声は低く脅威的だが、唇には微かな笑みが浮かび、期待を楽しんでいるかのようだ。

ダンテはゆっくりと、薄く謎めいた笑みを唇に浮かべ、その間を取ることで彼の言葉の重要性を僕の心に刻み込む。「彼は残忍で無慈悲だ。彼の外見や最初の戦術に惑わされるな。彼は相手の心を弄ぶ術を知っている。常に一歩先を行き、何よりも僕が教えたことを忘れるな。彼を叩き潰す覚悟がなければ、彼は君を迷わず叩き潰すだろう」

彼の言葉は確信と自信に満ちており、僕の心に響く。まるで魔法にかけられたかのように、彼の口から出る一言一言に引き込まれる。知らず知らずのうちに、ゆっくりとうなずき、彼の助言に没頭する。

何があっても、あの檻から出る決意だ。しかし、越えられない一線がある。ダンテがどれだけほのめかそうとも、怪物になるつもりはない。彼の歪んだゲームの駒になることは拒否する。彼の操作は微妙で、ほとんど気づかれないが、確かにそこにある。一方で、ダンテはこの暗い世界で僕の歩みを導いてくれる、ずっと必要としていたメンターのように見える。しかし一方で、その慈悲深い仮面と助言の裏に、まだ解き明かせない目的が隠されていると直感する。

ダンテはほとんど演劇的な動きで立ち上がる。その一つ一つの動きに意図が込められている。彼が出口に向かうと、衝動的に立ち上がり、彼を引き止める。「ダンテ、待って」と切迫した声で言う。彼は立ち止まり、すぐには振り向かないが、彼の期待を感じる。「どうした、坊や？」と彼は中立的だが好奇心を帯びた声で尋ねる。「僕は自分のためだけに戦ったんじゃない」と決然とした声で宣言する。「バスティアンのために戦った。彼はもう自由だ。あなたはそう約束した」

ダンテはしばらく間を置き、ゆっくりとこちらを振り向く。緑の瞳が僕を射抜くが、彼が何を考えているのか読み取れない。「その通りだ」と彼はゆっくりと認める。「バスティアンは自由だ。しかし、君は…まだ清算すべき借りがある」バスティアンの名が彼に記憶を呼び起こさせたのか、彼の表情はより穏やかで、策略的でないものになる。「あの少年も君と同様、よく戦った。しかし君は…君には僕の興味を引く何かがある、レアンドルス」

新たな条件や駆け引きを警戒し、緊張している。しかし、ダンテはただため息をつく。「なぜここにいるのか、何を犠牲にする覚悟があるのかを忘れるな。この世界では、時に自由は望まない代償を伴うことがある。それを忘れるな」そして最後の言葉を残し、ダンテは再び出口へと向かう。

ちょうど彼が敷居を跨ごうとしたとき、立ち止まり、振り向かずに言う。「次の試合にしっかり備えるんだ、坊や」そして無言の別れのように手を挙げ、姿を消す。ドアが彼の後ろで閉まり、疑問が残るが、バスティアンがついに彼を縛っていた鎖から解放されたという確信がある。更衣室は再び静寂に包まれる。その静けさはほとんど触れることができるほど濃密で、限界まで張り詰めた糸のようだ。

心の中で、審判の言葉が終わりのないエコーとなって響く。「ノックアウト勝利！」観客の歓声がまだ耳にこだまする。感情の渦に巻き込まれている。それが保存したい記憶なのか、忘れたいものなのかはわからないが、持っている方が持っていないよりは良いと確信している。ここまで来たことに多少の慰めを感じる一方、これから起こることの重みも感じている。

ロッカーに寄りかかり、短い内省の時間を許す。重く永遠のような数分が過ぎ、心身の準備をする。近くの会話の低いざわめきと、廊下を急ぐ足音が時折聞こえる。脈拍はまだ激しく打っている。包帯を調整し、頭の中で戦術と対策を繰り返す。しかし、何よりも、リングで何が起こるのかはまだ不確かだ。容赦なく、不安が僕を追い続ける。

胃の奥底で不穏な感覚がうごめく。落ち着かない蛇のように。更衣室の冷たさと湿気は助けにならないが、これは環境以上のものだとわかっている。急いで更衣室のトイレへと向かい、一歩ごとにエコーが響く。呼吸が乱れ、冷や汗が額を濡らす。

ようやく鏡の前にたどり着くと、自分の目に映るのは自分が感じている苦悩そのものだ。冷たい洗面台の縁を指で掴み、内なる混乱の中で安定を求める。突然、喉に塊ができ、息が詰まるような感覚に襲われる。抑えきれない。

膝が崩れ、前かがみになり、片手を冷たい鏡に押し付ける。苦く塩辛い味が口に広がり、深いところから込み上げる吐き気が、洗面台と床を汚す。吐き出す喉の音が心臓の鼓動のエコーと混ざり合う。嫌悪感にもかかわらず、終わると奇妙な安堵感を覚える。ある意味で、僕を消耗させていた緊張と恐怖を解放したような感じだ。

永遠のように感じる数秒後、ゆっくりと身を起こす。深く息を吸い、呼吸一つ一つを感じる。胃の内容物を吐き出したことで体に安堵感が広がるが、口の中の苦い味は残り、朝食が洗面台と床を飾っていることを思い出させる。蛇口をひねると冷たい水が流れ落ちる。すくった水を手に取り、顔にかける。血と汚れを洗い流すように。冷たさが顔を伝い、口をすすぎ、頭をすっきりさせる。

視線を鏡に戻すと、しばし立ち止まらずにはいられない。映るのは戦いの明らかな痕跡。あざや切り傷。しかし、最も驚いたのは、自分の目に映る表情だった。自分でも認識できない目つき。深い息をついた後、続ける準備ができた。出る前に、破れたシャツを丸め、汚れたトイレの床に投げ捨てる。バスティアンからの贈り物だったそのシャツは、もう使い物にならない。寒さが身を包むが、今はそれが最大の心配事ではない。再び外に出る時だ。

トイレのドアを跨ごうとしたその時、足を止める。繊細な人影が道を遮る。その身長は1メートル57を超えないだろう。13か14歳くらいにしか見えない。