第2章:外の世界

いい靴だな

2017年11月26日、1時52分 -


街の濡れた通りが、骨に突き刺さる鋭い刃のように感じられる中、僕は走り続ける。凍てつく風が肺を焼くようだが、恐怖が僕を突き動かす。擦り切れたスニーカーが湿った舗道を強く叩く。振り返ると、遠くで警察のパトカーのライトが点滅しているのが見える。捕まるわけにはいかない。


狭い路地を縫うように走り、空き地を横切り、夜の闇に身を潜める。息遣いと心臓の激しい鼓動が、足音に合わせて響く。頭の中はフル回転し、逃げ道やこの悪夢から抜け出す方法を探している。


孤児院から逃げ出したい、逃れたいと願っていたが、こんな形でとは思わなかった。自由がこんなにも大きな代償を伴うとは。寒さが骨の芯まで染み込み、筋肉は痛み、破れた服はほとんど防寒にならない。立ち止まるわけにはいかない。今はまだ。


ようやく、古い倉庫にたどり着き、身を隠す。木箱や段ボールの積み重ねの後ろに身を潜め、息を潜める。警官たちの重い足音が近くを通り過ぎるのを耳を澄まして聞く。心臓が激しく鼓動する。「見たか?」と一人の警官が心配そうに言う。「あの少年、近くにいるはずだ。」


「警戒を怠るな。近くの孤児院で何の理由もなく神父を襲った危険な奴だ」ともう一人の警官が小声で話す。その言葉が針のように耳に刺さる。体が震える。どうしてそんなことに?あの男は僕を傷つけようとしただけで、僕は自分を守っただけなのに。


手が震え、口を押さえて声を殺す。警官たちの声は徐々に遠ざかり、別の方向へと捜索を続けている。数分待ってから、ゆっくりと息を吐き、体の緊張が少しずつ和らぐ。しかし、完全に安心することはできない。


捨てられた倉庫の暗闇と静寂の中、自分の思考だけが伴う。自分がしたことが正しくなかったのは分かっているが、どうすればよかったのだろう?ただエマを守ろうとしただけなのに、神父が僕に飛びかかってきた。


手に鋭い痛みを感じ、見ると、慌ただしい逃走中にできたであろう切り傷がある。寒さで骨まで凍える上、緊張で手が震えている。心身ともに疲れ果て、倉庫の隅に腰を下ろす。体を支えていたアドレナリンが徐々に消えていくのを感じる。


何度も頭の中で出来事を反芻し、思考は混乱したままだ。孤独と無力感が影のように心の隅々にまで広がる。エマのことを考え、彼女がこの混乱から無事であることを願う。


警官の「危険な奴」という言葉が頭の中でこだまし、自分自身の本質を疑わせる。その言葉に真実があるのだろうか。他人にとって自分は脅威なのか。自分のせいでエマが窃盗で告発された。自分の道を見つけようとする中で、望まない自分に変わってしまったのか。


ついに疲れに屈し、瞼が鉛のように重くなり、体が限界を迎える。ゆっくりと倉庫の床に身を横たえる。


2017年11月26日、14時37分 -


朝の暖かい日差しが、捨てられた倉庫の隙間から差し込む。悪夢が一晩中僕を苦しめた。だが、安らぎの代わりに、悲痛な叫びが空気を切り裂く。目を見開き、急いで起き上がる。心臓が激しく鼓動する。瞬時に感覚が研ぎ澄まされ、完全に目が覚める。叫び声は近くの空き地から聞こえる。数分間静かに考え、どうすべきか迷う。本能は隠れたままでいるべきだと言っているが、好奇心が僕をそっと近づける。


湿った舗道の上を足音を忍ばせ、空き地の縁へと近づく。コンテナの陰に身を潜め、荒い息を整えながら様子をうかがう。数人の不良が一人の少年を囲んでいる。彼の顔には少し血がついている。


「おい、坊主、その靴、かなり高そうだな」と不良の一人が悪意たっぷりに言う。「お前の血で汚すのはもったいないな。」


その少年は、脅威的な状況にもかかわらず、不思議な落ち着きを保っている。「へえ、本当?高そうに見える?すごいね」と、顔を明るく照らす笑顔で答える。「実は偽物なんだ。すごく安く手に入れたんだよ。まあ、あんまり履き心地はよくないけどね。」彼の笑い声が緊張した空気に混ざる。


二人目の不良が近づき、怒りと挑戦の混ざった表情を浮かべる。「お前、自分が賢いつもりか、この小僧!」


少年はその言葉に驚いたようだ。「いや、別に。もし本当に賢かったら、もう少し履き心地のいいスニーカーを履いてると思うよ。」


空気の緊張は奇妙だ。少年が状況を完全には理解していないのかもしれない。彼のユーモアで緊張を和らげようとしているのかもしれないが、明らかに不利な状況だ。彼に対する好奇心と心配が入り混じる。


「この小さなピエロを見てみろ!」と他の不良が嘲笑する。「忘れられない教訓を教えてやろうか?」


少年は一歩後ずさりする。「待ってよ、みんな。暴力は解決にならないよ。もしよかったら、僕と同じような安い靴を買ってあげるよ。本当にすごく安く手に入れたんだ。」彼はまるでくだらない逸話を思い出すかのように笑みを浮かべる。


明らかに彼は危険な状況にいるが、僕は隠れたまま身動きが取れない。「もう十分だ」とリーダーらしき不良が言う。「そのガキは放っておけ。靴なんて価値がない。」


少年は安堵と感謝の表情を見せる。「本当に?ありがとう…!」感謝を言い終える前に、彼の顔面に強烈なパンチが炸裂し、倒れる。衝撃は激しく、彼は苦痛のうめき声を上げて倒れ込む。他の不良たちは笑いながら、倒れた彼を蹴り始める。


彼には防御の手立てがないようだ。彼を見ていると痛ましい共感が湧き上がる。拳が無意識に握り締められ、自分の良心と葛藤する。彼のことは何も知らないし、僕の問題ではない。でも、介入すべきか、それとも自分の安全を守るために関わらないべきか?でも、何もしないでここにいられない。


決断する前に、運命が僕に先んじた。強い手が僕の背中と首を掴み、不良たちの中心に放り出される。強く地面に倒れ、殴られた少年と目が合う。不良たちは驚いた表情で僕たちを見つめている。


背後から僕を捕まえた男が嘲笑する。「見ろよ、みんな。面白いものを見つけたぜ。とても好奇心旺盛な奴がいるな。」不良たちの悪意のある笑みが言葉を失わせる。声が震えながら説明しようとする。「あ、あの、ただ通りがかりで…」


言い終える前に、強烈なキックが脇腹に入り、痛みに体がよじれる。頭の中はフル回転し、逃げ道やこの状況から抜け出す方法を探す。


「ここで何してるんだ、小僧?」と別の不良が唸り、僕を地面に押し倒す。思考がぐるぐる回り、彼らを満足させて解放してもらえる答えを探す。「ただ…通りがかりで音を聞いただけなんです。それだけです。」


僕を捕まえた不良はざらついた笑い声を上げる。「なるほど、好奇心旺盛なんだな。じゃあ、このガキから靴をいただく様子を見ていけよ。」殴られた少年は驚いた顔で言う。「えっ!?さっき靴は要らないって…」彼の言葉はリーダーに遮られる。「黙れ。」


頭の中では、この少年が状況をあまり理解していないことが響いている。しかし、不良たちとの会話を続け、彼らの気をそらそうと試みる。彼らの心に疑念を植え付けようと。


「まあ、暴力は必要ないでしょう」と緊張を和らげようとする。「誰も傷つけずに解決する方法があるはずです。」不良たちの視線を見つめ、疑念の兆しを探す。「本当に古くてダサい靴を無力な少年から奪って、他の連中に悪い評判が立ってもいいんですか?それって自慢できる話じゃないと思いますけど。」


隣の少年は不満げに「おい、そんなにダサくないよ」とコメントする。素早く肘で合図し、僕の説得を台無しにしないように黙らせる。


不良たちは一瞬目配せし、目に不確かな色が浮かぶ。腕に絡みつくタトゥーを持つリーダーは眉をひそめる。「評判なんて気にしない」と唸るが、その声は先ほどより自信がなさそうだ。


「ただ、意味がないんじゃないですか」と好奇心を込めて続ける。「あなたたちはもういい靴を持っているし、本当に彼の靴が欲しいんですか?」少年を指差し、一瞬目が合う。


「黙れ!もうお前らのくだらない遊びにはうんざりだ。何を言おうと知ったことか!」リーダーが叫ぶ。彼が僕たちに向かって近づいてくる。孤児院では喧嘩から逃げなかったが、今は自分に勝ち目がない。何かしなければ。


他に選択肢がなく、深く考えずに力を振り絞り、素早い動きでリーダーの脚に抱きつき、一気に倒す。「走れ、走れ!」と少年に叫びながら立ち上がろうとする。しかし、立ち上がる前にリーダーの手下たちがナイフを取り出し、戦う準備をしているのが見える。


その瞬間、少年は最も近くにいる不良に飛びかかり、僕が立ち上がる時間を稼いでくれる。「さあ、動け!」と少年が叫ぶ。アドレナリンが全身を駆け巡り、彼の後を全力で走り始める。


彼の歩幅は僕より少し長い。不良たちの叫び声が背後に響く。少年は僕の腕を引っ張り、高い建物の間の狭い路地に右へと導く。彼はこの場所をよく知っているようだ。一歩ごとに、これが新しい現実であることを思い知らされる。常に逃げ続け、自ら招いた危険とともに生きる現実。


少年は僕をゴミのコンテナの方へ引っ張り、荒い息が混ざり合う。「早く、コンテナを動かすのを手伝って!」と息を整えながら叫ぶ。疑問を挟まず、ただ彼に加勢する。全力で押し、急いで重いコンテナを動かす。時間がない。何をしているのか確信はないが、アドレナリンが好奇心と混ざり合う。不良たちの叫び声が迫り、獲物を追う飢えた狼のようだ。


ついにコンテナが壁から離れ、その後ろに隠されていた壁の穴が見える。「早く、入って!」と少年が急かす。迷わず従い、心臓が激しく鼓動するのを感じる。少年を手伝ってコンテナを元の位置に戻し、入り口を隠す。


不良たちの声が近くで聞こえ、見つかったのかと不安になる。一瞬目を閉じ、この混乱の中で心を落ち着け、息を整える。しかし、ほとんど知らないこの少年は、まったく平然としており、顔には微かな笑みが浮かんでいる。この少年は何かおかしい。


不良たちの声が徐々に遠ざかり、静かな安堵の息が漏れる。周囲を落ち着いて見回し、状況を把握しようとする。どうやら僕たちはアルドリアの典型的なカフェにいるらしい。散らばった物は、この少年の持ち物のようだ。

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