第5話 Love so sweet(5)
「そのイベントのことで。 午後からイベント企画会社に行くことになってて。 もー、こっちの仕事も忙しいのに・・」
まだ正式には事業部の長ではなかったが
実質的な責任者の自分は
そっちの仕事と秘書課の仕事で目が回りそうなほど忙しかった。
「イベント企画会社かあ。 ね、あたしも一緒に行ってもいい?」
南は目を輝かせた。
「え・・別に。 ジュニアがええって言うんなら・・ええけど、」
「だいじょぶ、だいじょぶ。 真太郎にはあとで言っておくから。 ね? おもろそうやん、」
出会ったころは、
なんや、この人は。
と呆れかえったけれど、
一緒に仕事をするうちに
自分とものすごく感覚が似ていることに気づいていた。
ジュニアの奥さんで
社長んトコの嫁やって思うと、
ほんまは失礼があったらアカンのやろけど
彼女といるとついつい何十年も一緒にいる『友人』的な感覚に陥り
ホクトフィルの仕事の相談は
実は彼女に一番していたのも事実だった。
南はクラシックにはシロウトやけど、シロウトならではの観点で自分が気付かない細かいところまで指摘してくれる。
ジュニアには申し訳ないけど
事業部の立ち上げに彼女がいてくれたら、と思っているのも事実だった。
そのイベント企画会社の事務所は
恵比寿駅から歩いて10分ほどの雑居ビルの中にあった。
「芸能部からの紹介なんやけど。 ちっさいけどなかなかおもろい仕事してくれるって言うて。 社員も5人くらいなんやけどな。 一生懸命やってるからって、」
住所が書かれたメモを見た。
「そういうトコがええねん。 でっかいとこやとな、金ばっかかかって。 どうしようもないよ。 事業部はまだスタートしたばっかなんやから、何事も節約やん。 あたしが最初に社長に紹介されて勤めてたトコも。 小さいけどいい仕事するイベント企画事務所やったよ。」
南がそこでバイトをしていたジュニアと出会った話は以前に聞いた。
やっぱり彼女はこういう仕事が合っているのかなあとも思う。
『NUM. Plannninng』
もう
だいじょぶなんか?
と、一抹の不安にかられそうなほど
小さい部屋のドアに掛けられた小さなプレートを見た。
何となく入るのをためらっていると
「こんにちわ~~、」
アクティブな南はノックもそこそこにそのドアを開けてしまった。
せまっ・・
その中も
たぶん10畳もないだろう、というくらい狭くて
デスクでいっぱいな感じだった。
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