第39話 再会
ミネルヴァ商会の店主ワグナスと一悶着起こして、店を追い出されてしまったわたしとダリヤさん。
店を出てから時間を確認すると、午後二時くらい。
わたし達は、まずは腹ごしらえということで、付近で目についた、適当な酒場で昼食をとることにした。
お昼時を少しすぎていたので、酒場の中は閑散としていた。
わたしとダリヤさんは、店の奥の席、ちょうど席から店全体が見渡せる位置に着席した。
「それにしても、あのワグナスとかっていうヤツ。ホントにむかつく店主でしたねー!」
テーブルに置かれたチキンウイングの山盛りに手を伸ばしながら、先ほどの店主の態度に腹を立てるわたし。
「まあ、あの手の人間は別に珍しくないわけで。親から与えられた財産を、自分の実力だと勘違いして、他人を見下す連中。特に商売になると、金と欲も絡んでくるから、余計に自分を客観的に見れなくなりがち」
そう言いながらダリヤさんはスモークチーズがふんだんにのったオープンサンドを、ナイフとフォークを使って器用に切り分けて、口に運ぶ。
「そんなのに、いちいち腹を立ててたら、それこそ時間のムダなわけで。ゴッズの紹介はムダになったけれど、ミネルヴァ商会とは縁がなかったと割り切って、また別の鑑定士を探そう」
「そうです、よね」
わたしはうなずきつつ、チキンウィングを一口かじる。
「あ、おいしい」
表面はパリッと香ばしく、中はジューシー。
スパイシーな味付けが、ペコペコお腹を刺激する。
美味しいものを食べると、さっきまで胸の中に渦巻いていたムカムカが、すうっと和らいでいくから、我ながら単純なものだ。
だけど、どうにも割り切れない気持ちが胸に残っていた。
「ただ、フォルトゥナさんは……なんだか気の毒でした」
それは、フォルトゥナさんのことだった。
彼女は、困っているわたし達をみて、手を差し伸べようとしてくれた。
なにもかもが居心地のわるかったミネルヴァ商会の中で、彼女のその親切心だけは、とても嬉しかった。
「やっぱりフォルトゥナさん……あのあとワグナスに怒られちゃいましたよね」
「だと思われ」
「それってわたし達のせいですよねぇ。はあ、悪いことしちゃったなあ……」
わたしはそう呟いて肩を落とす。
そんなわたしをねぎらうように、ダリヤさんが声をかけた。
「ミユル、鑑定をしようと提案してきたのはフォルトゥナの方。ボクたちは別に強要しようとしたわけじゃない。その結果、彼女の立場が悪くなったとしても、それは自己責任。そこまでミユルが気を病む必要はないわけで」
「それは、そうなんですけど……」
フォルトゥナさんの申し訳なさそうな顔が、どうしても頭をよぎる。
あんなに親切な彼女が、ブラック企業のパワバラ社長みたいな店主に、こき使われていることを考えると、モヤモヤした気持ちが拭えなかった。
きっと、ミュルグレイスの実家で、周囲から蔑まされていた昔の自分と重ねてしまっているんだと思う。
(できることならもう一度、ちゃんとお話ししたいな――)
そんなことを思ったタイミングで――
カラランとドアベルの音がなった。
なんとなく入り口の方に視線を向けると、一人の女性の姿が店内に入ってきたのが目に入った。
ウェーブのかかったオフホワイトの髪の毛をサイドテールにまとめた髪型。
顔にかかった度の強そうな銀縁メガネ。
ややオーバーサイズのローブに身を包んで、トボトボと肩を落としながら歩くその女性は――
「フォルトゥナさん!」
わたしは思わず席から立ち上がって声を上げる。
フォルトゥナさんはビクッと肩を揺らして、こちらに顔を向けた。
「あ、さっきの……」
わたしはいても立ってもいられず席から立ち上がり、トテトテとフォルトゥナさんの元に駆け寄って、声をかける。
「よかった、またお会いできました! あの……お一人ですか?」
「え? う、うん。一人だけど」
「よかったら、一緒にご飯をたべませんか。色々とご迷惑をおかけしちゃったので、お詫びの意味の込めて、ご馳走させてください!」
「え、いや、別に私は……」
「まあ、いいからいいから」
「きゃっ……」
わたしはフォルトゥナさんの背中をグイグイ押して、強引に席まで誘導する。
フォルトゥナさんは戸惑いつつも、素直に席についてくれた。
「はい! なんでも好きなものを注文してくださいね!? あ、注文メニュー見ますよね、はいどうぞ!」
「えーと、その……それじゃ……これを」
フォルトゥナさんはおずおずといった感じで、メニュー表に書かれたサンドイッチを指差す。
ウエイトレスに注文をつげて、料理が運ばれてくるまでの間、わたしは彼女に対してあらためて、頭を下げた。
「フォルトゥナさん、さっきは本当にごめんなさい」
「え、なにが?」
わたしの謝罪の言葉に戸惑うフォルトゥナさん。
「もちろん、ミネルヴァ商会でのことです。わたし達のせいで、店主を怒らせてしまって……」
「ああ、別に気にしないでいいよ」
フォルトゥナさんは肩を小さくすくめると、力無く笑う。
「ワグナス様は、いつもあんな感じだから。むしろこっちこそごめんなさい。わたしが鑑定するなんて出過ぎたことを言い出したせいで、あなた達に嫌な思いをさせてしまって。ええと……」
フォルトゥナさんがわたしとダリヤさんの顔を、交互に見た。
「そういえば、自己紹介もしていませんでしたね」
わたしは胸に手をあてて、にっこりと微笑む。
「わたしは冒険者見習いのミユルです。それでこっちが先輩冒険者の……」
「ダリヤ、よろしく」
「ミユルちゃんにダリヤちゃん……よろしくね、わたしはフォルトゥナです」
お互いに自己紹介を終えたところで、フォルトゥナさんが頼んだ料理が運ばれてきた。
わたし達は、とりあえず会話を中断し、目の前の食事にありつくことにした。
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ステータス
――――――――――――
ミユル(本名:フレデリカ・ミュルグレイス)
性別/女
冒険者等級:星なし
称号/ゴミ令嬢、ソロ討伐者、ホームレス、不審者、他力本願、人助け初心者、お酒初心者
好き/クー、食べもの全般、お風呂、ハチミツ酒、かわいいもの
嫌い/虫
スキル/《ゴミ》
効果:ゴミをリサイクルする能力
弱い仲間を強化する能力(?)
ゴミの品質をあげる能力(?)
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――――――――――――
ダリヤ
性別/女
冒険者等級:三つ星
称号/魔法使い、セイバー、ベテラン冒険者
好き/ハチミツ酒
嫌い/実家
スキル/黒魔法
効果:攻撃系魔法を使いこなす能力
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