2章 冒険、仲間、スローライフ!

第27話 冒険者ランク


 パーティー結成をした次の日。

 わたしとダリヤさんは、冒険者ギルドへと足を運んでいた。


 その目的は、まずはわたしの冒険者登録。

 そして、早速ギルドからクエストを受注するためだ。


 ギルドの受付カウンターで対応をしてくれたのは、この間もお世話になった、ツルピカ眼帯ゴリマッチョおじさんこと、グランドさんだった。


「……まさか本当にダリヤのやつから推薦状を貰っちまうなんてなぁ。しかも、一緒にパーティーを組むだと? なあ嬢ちゃん、アンタ一体、どんな魔法を使った?」

 

 グランドさんは、わたしが手渡した推薦状をまじまじと見つめながら、うなるようにそう言った。

 その言葉に、わたしはえへんと胸を張りながら応える。


「ふふ~ん、魔法なんて使ってませんよ~。冒険者になりたいっていうわたしの熱意がダリヤさんに伝わった結果です!」

「熱意ねえ……確かに俺の見立てでも熱意だけはホンモノだったがよ……その、ダリヤよ、本当にいいのか? その……こんなちんちくりんの嬢ちゃんで……」


 グランドさんは、わたしの隣に立つダリヤさんに視線を移して、そう問いかけた。


「問題ない。ミユルの冒険者としての資質は、ボクが保証する。それに彼女のスキルはボクの能力を上手くカバーしてくれる。パートナーとして最適だと思われ」

「えへへ、パートナーだなんて……照れちゃいますよぅ、ダリヤさん……」


 ダリヤさんのパートナー発言に、わたしは思わず両手を頬に添えながらテレテレと身体をくねらせてしまう。


 グランドさんは、そんなわたしとダリヤさんを交互に視線を向けてから、やれやれといった様子でため息をついた。


「ダリヤにここまで言わせるなんて、アンタ、ホントに只者じゃねえのかもな……まあいい、ちょっと待ってろ」


 そう言うと、グランドさんは、わたしの提出した推薦状を手にしてカウンターの奥へと引っ込んだ。

 それから待つこと数分。

 登録手続きを終えたらしいグランドさんが戻ってきた。


「ほらよ、嬢ちゃん、アンタの冒険者タグだ。コイツがアンタの冒険者としての身分を証明する」


 グランドさんはそう言って、わたしにタグを差し出す。


「おおー、これが……」


 わたしはそれを両手で受け取ると、目を輝かせながら、そのタグをまじまじと見つめた。

 革紐につづられる形で、小さな金属製のプレートがぶら下がっている。

 プレートには、わたしの名前や出身地、登録ギルドなどの情報が刻印されているようだった。


「冒険者タグは、クエストの受注や報告の際、必ず必要となるもんだ。失くすんじゃねえぞ」

「はい! ありがとうございます!」


グランドさんの言葉にわたしは元気よく返事すると、さっそく自分の冒険者タグを首にかけてみる。

 

 これでわたしも正式に冒険者の仲間入り。

 嬉しさのあまり、その場でくるっと一回転した。


「えへへ……どうです、どうです? ダリヤさん、似合ってます?」

「うん、ピカピカのタグが初々しくて、見習い冒険者ノービスのミユルにぴったりだと思われ」

「ホントですかっ!? やった!」


 ダリヤさんに褒められて、わたしは更に顔をほころばせる。

 ……ん? 褒められたんだよね、わたし?


「あー嬢ちゃんよ、お喜びのところ悪いが、冒険者等級の説明をしておくぞ」

「あ、はい! お願いします!」


 グランドさんはそのまま説明を始める。


「冒険者等級ってのは、冒険者ギルドが定める等級制度だ。この等級は全部で六段階に別れてる。ちなみに冒険者がどの等級かは、今手渡したタグの裏面を見ればわかるぞ」

「タグの裏面……」


 わたしはさっそく自分のタグをひっくり返してみた。


「んん? なんにも書いてありませんけど」

「それは嬢ちゃんがまだ《星なし》だからだ。試しにダリヤのタグを見せてもらいな」

「あ、はい……ダリヤさん、ちょっと失礼」


 グランドさんに促されて、ダリヤさんの首元にぶら下がったタグを確認させてもらう。


「えーと……あっ! 星マークがあります! 三つ!」


 タグの裏側に刻まれた星マークを見て、わたしは思わず声を上げた。

 ダリヤさんのタグには三つの星が刻まれている。


「ダリヤは《三つ星》冒険者だ。つまり、冒険者の等級は星の数で表されるってわけだ。嬢ちゃんのように《星なし》から始まって、最高位は《五つ星》。その実力や貢献度に応じて、星の数が増えていく」


 グランドさんはそこまで言うと、一息つくように懐から自分のタグを取り出した。


「ちなみに俺は《二つ星》だ」

「え……ということはダリヤさんの方が上なんですか……?」


 グランドさんのタグを見て、わたしは思わずそう尋ねる。

 それが失言だったと気がついたのは、その直後だった。


「ご、ごめんなさい……!」

「はははっ、素直な反応大変よろしい。別に謝るこっちゃねえよ。事実なんだからな」


 グランドさんはそう言ってカラカラと笑うと、そのまま続けた。


「自分で言うのもなんだが、オレぁ冒険者として二十年は飯を食ってきた熟練よ。そうして積み上げた実力やら功績やらで、ようやく届いたのは《二つ星》。そう考えると、ダリヤの持つ《三ツ星》ってのは、かなりスゲェ称号ってことがわかるだろ?」

「確かに! お若いのに凄いです、ダリヤさん!」

「いや、ボクは別に……いつの間にかなるようになってたわけで……」


 わたしの尊敬の眼差しに照れているのか、ダリヤさんは頬を赤らめながら顔をうつむかせた。


 続くグランドさんの説明によると……


 続く《四つ星》は国家級の難事にあたるような冒険者に与えられる等級。

 更に最高ランクの《五つ星》冒険者は、歴史上数人しかいない伝説レベルということだ。

 

 つまり事実上の在野最高位は《三つ星》。

 ダリヤさんはそれだけすごい冒険者ということだ。


「……といったところだ。とにかく《一つ星》でも冒険者としてはベテランだ。嬢ちゃんも、まずはそこを目指して頑張ることだな」

「は、はい! 頑張ります!」


 グランドさんの説明に、わたしは姿勢を正してからそう答える。


「それじゃあ、グランドさん! さっそくですが、クエストの紹介をお願いします!」


 こうして、新米冒険者、ミユルとしての新一日が幕を開けた。



――――――――――――

 ステータス

――――――――――――

ミユル(本名:フレデリカ・ミュルグレイス)

性別/女

冒険者等級:星なし←NEW!

称号/ゴミ令嬢、ソロ討伐者、ホームレス、不審者、他力本願、人助け初心者、お酒初心者

好き/クー、食べもの全般、お風呂、ハチミツ酒

嫌い/虫

スキル/《ゴミ》

効果:ゴミをリサイクルする能力

――――――――――――

――――――――――――

ダリヤ

性別/女

冒険者等級:三つ星←NEW!

称号/魔法使い、セイバー、ベテラン冒険者

好き/ハチミツ酒

嫌い/実家

スキル/黒魔法

効果:攻撃系魔法を使いこなす能力

――――――――――――

 

 

 

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