第16話 黒ローブの少女
絶体絶命のピンチに現れた黒いローブを着た謎の少女。
頭にはフードを深くかぶっていて、顔は口元しか見えない。
だけどフードからこぼれた長い三つ編みと、透き通るような白い肌が印象的だ。
片手には、身の丈ほどもある大きな
「テメェ、オレのツレに何しやがるッ!」
チンピラ戦士はわたしをポイッと手放すと、突然現れた
しかし、黒衣の少女はそんな威嚇に一切動じる様子はなく、スタスタとチンピラ戦士の横を通り過ぎていった。
「シカトすんじゃねえゾ、ゴラァ!」
そんな少女の態度に激高したチンピラ戦士が腰に差していたショートソードを抜いて後ろから切りかかった。
「あ、あぶない――!」
わたしは思わず悲鳴をあげる。
けれど少女は振り返ることもせず、まるでまとわりつくハエでも振り払うかのように、手にしていたロッドを無造作に振るう。
「《トニト》――」
するとロッドが光り輝き、その先端から光の帯のようなものが飛び出した。
「ぐぇご……ぐぎゃがががががががっ!」
光の帯が直撃したチンピラ戦士は、まるで感電したかのようにビクンビクン身体を痙攣させて倒れ伏す。そのまま失神してしまったみたいだ。
(すごい……! チンピラを瞬殺だ……!)
一瞬でチンピラを撃退した少女は、そのままスタスタと受付カウンターの方へ歩いていった。
カウンターにはいつの間にかグラントさんの姿が戻っていた。少女の姿に気づいたグランドさんは、彼女に向かって親しげに言葉をかける。
「ようダリヤ、今日も遺物回収か」
「うん……昨日の
ダリヤと呼ばれた少女はそう言って、グラントさんに麻袋を渡した。
「戦士エルリッド、魔術師アンジェラ、武闘家ダンロッグの荷物と思われ……一応そっちでも確認して」
「ここに来たってこたぁ、
「……ボクが到着したときはもうモンスターに食い散らかされてたわけで。教会にいっても蘇生はムリ」
「そうか、そいつは残念だった……」
グラントさんはそう言って目を伏せると、胸元で十字を切る。
「よしダリヤちょっと待ってろ、換金の手続きをしてくる」
グラントさんはそう言って、受付の奥へと引っ込んだ。
(チャンス!)
わたしはその隙にダリヤさんに駆け寄る。
助けてもらったお礼を言わなければいけない。
「あ、あの……! ダリヤさん!」
「ん?」
フードからこぼれた長い三つ編みの髪が揺れて、ダリヤさんが振り返った。
フードの奥に隠れていた瞳がわたしを捉える。
その瞳はルビーのように真っ赤だった。
「あの……危ないところを助けてくれてありがとうございました!」
わたしがお礼を言うと、彼女はちょっと驚いたように目をまん丸にする。
そしてちょっとだけ恥ずかしそうに口元をモゴモゴさせながら答えてくれた。
「……別に、ただアイツらがジャマだったわけで」
ダリヤさんはそう言うと、わたしから視線を外してフードを深く被り直してしまった。
会話をつなげようと、わたしがダリヤさんにかける言葉を探していると、グラントさんがカウンターの奥から戻ってきた。
「待たせたなダリヤ、今回の換金分だ」
「……ども」
カウンターに置かれた金貨袋を、ダリヤさんがひょいっと持ち上げて懐に入れる。そして再びグランドさんに話しかけた。
「グラント、今日の
「残念ながらしっかり更新されてるぜ。つい一時間ほど前、レインルーク洞窟で新米冒険者様二人組が
「そう」
「行くのか?」
「行くけど」
「あのなダリヤよ、お前の腕を疑ってるわけじゃねぇが、無理はするなよ。ミイラ取りがミイラになったらしかたねえからな?」
「うん、大丈夫」
「そのなんだ、せめて独りでダンジョンに潜るのはやめにしねえか……? 仲間ならギルドでいくらでも紹介……」
「間に合ってる、それじゃ」
ダリヤさんは話を切り上げるように短く答えると、踵を返してそのままスタスタと歩いて出口へと向かってしまった。
「あ、ちょっと待ってください!」
わたしは慌ててその背中を追いかける。
だけど建物の外へ出たときには、ダリヤさんの姿は大通りの雑踏にまぎれてもうどこにも見えなくなっていた。
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ステータス
――――――――――――
ミユル(本名:フレデリカ・ミュルグレイス)
性別/女
称号/ゴミ令嬢、ソロ討伐者、ホームレス、不審者、他力本願
好き/クー、食べもの全般、お風呂
嫌い/虫
スキル/《ゴミ》
効果:ゴミをリサイクルする能力
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