1章 転生少女とスキルゴミ
第2話 わたし異世界転生しました!
「これよりミュルグレイス公爵が息女――フレデリカ・ミュルグレイスの
神聖な雰囲気で満たされた白亜の神殿の中。
壇上に立つ法衣をまとった大神官が、物々しい口調で声を上げた。
「フレデリカよ、ステラクリスタルの前へ」
「は、はひぃ!」
そのおじさんから自分の名前を呼ばれる。
緊張で思わず声が裏返った。
そのままわたしはギクシャクした足取りで壇上に登壇。
大神官のおじさんの前には巨大なクリスタルがふよふよと浮いていて、わたしはそのクリスタルのもとに立った感じだ。
おじさんはわたしが登壇したことを確認すると、クリスタルに手をかざしてなにやらムニャムニャと呪文を唱え始める。
そのうちクリスタルはボンヤリと青白い輝きを放ちだした。
(いよいよだ。今日、わたしにスキルが与えられる……!)
わたしはそのファンタジーな光景を見つめながらグッと息を飲む。
緊張のせいで心臓がドキドキ高鳴っていた。
この世界の人間はみな、12歳になると星の祝福をその身に宿す。
それがスキル。
簡単に言えば魔法みたいな超能力を授かるってことだ。
そう、この世界には当たり前に魔法がある。
わたしが前にいた世界とは違ってね。
わたしには前世があった。
ありがちな言葉で自分を語れば、わたしは異世界転生者ってやつだ。
病気のせいで短かった前世を終えた後、わたしは魔法が存在するこの異世界に転生して、今日まで公爵家の令嬢、フレデリカ・ミュルグレイスとして生きてきた。
前世の願いを神様が聞いてくれたのか、わたしの身体は健康そのもの。
公爵家の令嬢として、何不自由なくスクスクと成長した。
そして、12歳の誕生日を迎えた今日、スキルを授かる儀式に挑もうとしている。
その儀式が
(うう〜緊張するよ〜)
なぜわたしが今吐きそうなほど緊張しているのか?
それはこの世界において、スキルは絶対だからだ。
この世界に住む人々は、みんなスキルに応じた職業について、スキルを活かした生き方をする。
スキルのランクやレア度によって、賞賛されたり差別されたりする。
そして、この
皆、ただひとつのスキルを大事に抱えて生きていく。
ちょっぴりうがった言い方をすれば、スキルに縛られて生きていくんだ。
どんなスキルを手に入れられるかは星の導き次第。
一回きりの勝負。
やり直しは効かない。
つまり、ここで授かるスキルでわたしの将来が決まるわけだ。
まるでガチャ。
というかまんまガチャ。
人生を左右するスキルガチャだ。
そんなものにこれからわたしは挑む。
さらに貴族にとってこの
だからこの場にはお父さん、お母さん、妹など家族や親戚はもちろんのこと、わたしがこれまで一度も顔を見たことがないような貴族のお偉いさんたちまで勢ぞろいしている。
それがさっきからわたしが吐きそうなほど緊張してる理由。
スキルガチャでその後の人生が決まるんだからそりゃ緊張するよね。
「すーはー、すーはー……」
わたしは緊張を少しでもほぐそうと深呼吸。
そしてチラッとクリスタルのほうを見る。
するとクリスタルの中に渦巻きのような光があるのが見えた。その光の渦巻きがゆっくりとわたしの体に降り注ぐ。
(これがスキルの光……)
わたしはただ光のシャワーを浴びるだけ。
やがてクリスタルから降り注ぐ光が一層強くなり――わたしの体全体を包み込んだ。
(身体の奥が……! あっつ……!)
身を焦がすような熱が身体の内側から溢れてくる。
わたしは思わずギュッと目をつぶった。
そして、その熱は徐々に引いていき……再び目を開けるとクリスタルから放たれる光も消えていた。
(これでスキルが手に入ったのかな……?)
わたしは自分の身体のあちこちをつねったり引っ張ったりしてみる。
特に前と変わったような感じはない。
と、そこで大神官のおじさんが口を開いた。
「フレデリカ・ミュルグレイス」
「は、はひぃっ!」
いよいよスキルが宣言される。
わたしの背筋がピンと伸びた。
「
おじさんは勿体ぶるように間を置く。
ドキドキドキドキ……
その間、高鳴り続けるわたしの心臓。
(お願い! 神さま! レアスキルなんて贅沢はいいません! 日々の暮らしに役立つような、なんかいい感じのスキルをお願いします……!)
そして……
たっぷりと間があった後。
大神官はおごそかに宣言した。
「汝が授かりしスキルは……《
…………
は?
ゴミ?
え?
ゴミ??
――――――――――――
ステータス
――――――――――――
フレデリカ・ミュルグレイス
性別/女
称号/公爵令嬢
好き/家族、甘いモノ
嫌い/虫
スキル/ゴミ《効果》不明
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