第12話 盗賊とエルフ
SIDE コリーナ
ここは盗賊たちの洞窟前、サトシ様がお気に入りのエルフを入手され、街に戻っていった。
サトシ様はどうやらエルフが好みのようだ。
エルフは人間の情報によると森の中を好み、エルフだけで住むことが多いと聞く。
何とかエルフを入手できないものか。
盗賊に捕まっていた女たちが数人いたがエルフはいなかった。
比較的、雄が好みそうな女ばかりだったがサトシ様にはふさわしいとは思えない。
あとでノアに使わせよう。
「おい、エルフはどうやったら手に入る。」
「はい、エルフの集落を襲うか、奴隷として買うのが早いです。」
コイツらにエルフの集落を襲わせてもいいが、それではサトシ様がお喜びにはならないだろう。
「集落がどこにあるか知っているか?」
「はい、これから襲おうと思っていた集落が2つあります。」
▽
(数日後)
エルフの集落が襲われるとの情報を得た私たちはその集落に向かった。
テンプテーションで操った盗賊たちは情報を集めるために散り散りになって活動している。
他の盗賊団に入る者もいるし、エルフに関する情報を街で集める者もいる。
今回は盗賊団にスパイとして潜入したものからの情報だ。
情報通り、大人数の盗賊が集落を取り囲んでいた。
盗賊たちは周りを囲みながら逃げるエルフを捕まえ始めた。
エルフの商品価値が落ちるのを恐れているのだろう。
1人のエルフだけ、その場でこぞって交尾を始めた。
その1人に選ばれたエルフはその場で服を破られ、地面に押し倒されて、盗賊たちに囲まれながら次々と種付けされていった。
「や、やめてー!」
泣き叫ぶエルフを助けようとしてまたエルフが捕まった。
エルフは泣き喚いて抵抗していたが何人もの盗賊に抑えつけられて、次第に感情を失っていった。
エルフを捕獲した盗賊たちの後をつけると森の中で大きな馬車の一行と合流した。
盗賊は派手な服を着た男から恐らく金が入っているだろう、巾着袋と繋がれたエルフを交換した。
派手な服の男は奴隷商人で間違いないだろう。
奴隷商人をテンプテーションで操ることも考えたが、サトシ様のことを考えて、やめた。
サトシ様がお喜びになればどんな手段でもいとわないが、真実を聞かれたら本当のことを話さないといけない。
奴隷商人を尾行して行くとレイエスの街に入っていき、大きな商店の裏口の扉から馬車ごと入っていった。
私は早速、変化の指輪で人間の形になり、表からその商店の中に入っていった。
その商店には看板がなかったが扉を開けると受付の雌が声をかけてきた。
「本日はどのようなご要件でしょうか。」
「奴隷を買いに来た。」
「どなたかのご紹介でしょうか?」
「紹介はないが、先ほど盗賊から捕まえた奴隷を買いたい。」
受付の雌はすっと表情が変わり、こちらを警戒する目つきになった。
「少々お待ち下さい。」
少し待つとすぐに戻ってきた。
「こちらへお入り下さい。」
雌に案内される部屋に入った。
人間では気づかないだろが、血の匂いが微かにする。
しばらく待つと扉を開け、熊の獣人と牛の獣人に守られるように先ほどの派手な服の男が現れた。
「奴隷を買いたいとか。」
「ああ、さっき攫ってきたエルフだ。」
商人は顔色を変えず静かに話を続けた。
「攫うなど人聞きが悪い。
私たちは奴隷を譲ってもらっただけです。
さて、あなたは奴隷を買いたいだけですか?」
「そうだ。
別にどんな方法でお前たちが奴隷を入手したかは大っぴらにするつもりはない。
私はただ、エルフの奴隷が手に入れたいだけだ。」
「そうでしたか。
話の分かる方でよかった。
エルフはとても人気がありまして、すぐに売れてしまいます。」
「エルフを手に入れたら最初に私に連絡してくれ。
まあ、連絡がこなくてもわかるがな。」
「ふふふ。怖いお人だ。
おっと、人と呼ばれるのは滑稽でしたかな。
そんな指輪では私はごまかされません。
ただ、あなたからは大きな金の匂いがします。
エルフは優先的に卸させてもらいましょう。」
油断ならない人間だ。
私が魔物だと感づいている。
「早速エルフを見せてもらいたい。」
「まだ着いたばかりで、と言いたいところですが許してはもらえなさそうですね。
こちらへどうぞ。
普段は客を通さないところです。勝手に触れないように気をつけて下さい。」
先ほどの豪華な明るい部屋とは打って変わり、薄暗い廊下を歩いていった。
廊下は広く、牢がズラッと並んでおり、獣人やエルフ、四肢欠損した奴隷など、いかにも訳ありな生き物が収納されていた。
どの生き物も生きるのを諦めているかのように暗い顔をしていて生気を感じられない。
実に興味深い。
奴隷商についていきながら、一匹づつ値踏みしていく。
「まだ洗脳が終わっておりません。
襲われるかもしれませんので気をつけてくださいね。
まあ、あなたなら大丈夫でしょうが。」
「ここから出せ!
薄汚れた人間風情が!」
案内された牢にはエルフが10人ほど集められていた。
どのエルフも例外なく美人だ。
その中に、1人、服を破られたままで、部屋の隅で座るエルフがいた。
盗賊たちに弄ばれたエルフだ。
そのエルフを牢から出してもらい、二人で話をした。
「今捕まえられているエルフ、私たちが全て買い取らせてもらっていい。」
「えっ……」
「お前の覚悟次第だ。
買い取らせてもらったエルフは奴隷でははなくある程度の制約はあるが自由に暮らせる。
望むなら森の中で暮らしてもいい。」
「私はどうしたら……」
「お前の一生分の忠誠。
それだけでいい。
私の主人のサトシ様への。」
「一生分の忠誠……」
体を泥だらけにしたエルフは仲間たちとその周りの牢の中の様子を見渡した。
他の牢の中の獣人たちの目に希望の光はない。
今後、同郷のエルフはこの獣人たちと同じような目をするようになるのは明らかだ。
エルフは俯いて地面を見つめながらポツリと呟いた。
「捧げます……」
「そう。わかった。」
少し離れた位置でこちらを見ている奴隷商に話しかける。
「このエルフを全て買うわ。いくらかしら。
ただ、あまりふっかけないほうがいいわよ。
私はあなたたちの全てを無傷で手に入れる術がある。
それをしないのは私の主の優しさでしかないのだから。」
「ふふふ。
あなた相手に下手を打ったらどうなるかは想像に容易いですね。
この10人だ50万シーロ(5千万円相当)が妥当でしょうね。」
「いいでしょう。」
収納から麻袋に白金貨50枚を出して、奴隷商に渡した。
「へへ、ありがとうございます。
今後ともご贔屓に。」
「あなたから、あの子たちに説明してきなさい。あなたが捧げたことはしゃべらなくてもいいわよ。」
「はい。」
エルフ達を牢から解放して、サトシ様の拠点へと移動した。
「ここで10日間過ごして今後どうするかを決めてもらう。」
エルフたちは雌メイドたちに部屋に案内されていった。
エルフ達を労働させるためではない。
ここでの生活を実際に経験しないと今後、森の中へ行きたいのか、ここで生活したいかがわからないからだ。
この娘たちは、森に帰っても、この家を出て行ってもいいと思っている。
私は人間たちにひどい仕打ちを受けたこの一人のエルフだけを得られればいい。
「あなたはこれから忠誠を尽くすサトシ様に会ってもらいます。失礼のないように。」
「はい……」
エルフはこれから処刑台に行くかのような暗い顔をして2階にあるサトシ様の部屋へと入っていった。
「サトシ様、失礼します。
新しいメイド候補を連れてまいりました。」
「あの……イドと言います。
これからお世話になります。」
「えっ、イ、イド?服どうしたの?」
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