第9話 姉はツンデレ

 街に戻りオクトーの服を選ぶことにした。


 さすがに髪がたこ足の少女は目立ってしまうので変化の指輪をつけさせることにした。


 オクトーはミニスカートにパーカーを羽織り、小学生のようなスタイルになった。

 ミニスカートは店頭には並べられていなかったがコリーナが店主と相談してミニスカートに仕立ててもらったみたいだ。


 僕は何も言っていないのに僕の趣味を勝手に連想して実行しているのはいかがなものか。

 嫌いではないけど。むしろ好みだけど。


 僕も身長が160センチくらいしかないし顔立ちも大人っぽくないため、兄弟みたいに見られているのかもしれない。



「オクトーは何歳なの?」


「なんさい?」


「生まれて何年たったかということですわ。」


「30年くらい」



 僕は驚いてとオクトーをまじまじと見てしまった。

 こんなに可愛い少女がアラサーとは……。



 オクトーに手を繋がれながら街道を歩いているとカンカンと鐘の鳴る音が聞こえた。



「海から魔物が現れたぞー!冒険者、兵士は防壁に集合しろー!」



 街の人々もみんな駆け足で駆けている。

 自分の家に行くんだろう。



「コリーナ、海の状況を見に行きたいけどいいかな?」


「はい、仰せのままに。」



 来た道を引き返して3人で走るとすぐにキティタイガーに乗った青鬼のノアが僕の横に並ぶように合流した。



「サトシ様、海に行かれるのですか?」


「うん。」


「わかりました。護衛させていただきます。」


 そう言うとキティタイガーに乗ったまま、太い大剣を収納から出して背中に背負った。



 海沿いに建てられている城壁の門には兵士が詰めており、閉める準備をしていた。


「こら、ここは冒険者か兵士だけしか通れない。子供は家に帰れ!」


「私は冒険者だ。このお方は私の主。通らせてもらう。」



 ノアが冒険者証のネックレスを見せる。



「中は魔物だらけだ。死ぬなよ!」



 そう言って中に通らせてくれた。

 城壁の外はまさに戦場となっていた。

 先ほどまでの平和な漁港と同じとは信じられない。


 海に向かって魔法使いや弓士が遠隔で攻撃を行っており、陸に上がった二足歩行の全身鱗だらけの魔物を戦士や兵士たちが食い止めている。


 突然のことのためか、冒険者たちの数が少なく、魔物の数に押されている気がする。







「どうしよう……」



 オドオドしている僕に襲いかかってくる魔物を次々とノアがミンチにしていく。



「サトシ様、私が隙を作りますので、テイムしていくことはできますか?」


「うん。それならできるかも……」



 ノアが大剣を収納して半魚人の魔物に殴りかかった。


 半魚人が地面に倒れた隙を見て体に触れる。



(テイム)



「街を襲う魔物を倒せ!」



 そう言うと半魚人は陸から上がってくる半魚人の体に噛みついて同士討ちを始めた。


 次々と殴り倒すノアに合わせてテイムをしていく。



「仲間の半魚人と協力して魔物を倒せ!」



 テイムした半魚人たちは3匹づつパーティーを作って1匹づつ魔物を襲っていった。



「魔物同士が戦っているぞ!どうなってんだ。」



 僕のテイムで混乱もあったが、気にせずに魔物をテイムして戦力を増やしていった。



 どれだけテイムしたかわからないいが、ある一匹をテイムした瞬間、テイムLEVEL2という文字が頭に浮かんだ。



 よくわからないがレベルが上がったということか。


 テイムLEVEL2について考えると以下のことが浮かんできた。


 テイムした魔物が取得した魔素を一部吸収することができる。


 LEVEL2すごすぎる……


 次の瞬間、体が芯から熱くなった。

 これが魔素が流れ込んでくる感覚か。


 体は熱いままだがじっとしていられないので再びテイムをして回ることにした。


 体が軽く、全く息が切れない。



「サトシ様、レベルが上がったのですね。」


「うん。そうみたい。」



 どんどん体のステータスが上がっているようでノアの援護が無くても体に触れるくらいならできそうだ。




 魔物の間をすり抜けながら魔物体に触れてテイムしていく。

 触りさえすればテイムを失敗することはない。

 すごいチートスキルなんじゃないかと考えていた。


 次の瞬間、頭の上から何かが振り下ろされているのに気がついたがもう遅かった。



(死ぬ……)



 目を瞑り体を硬直させた。



(生きてる……)



 ノアが大剣で振り下ろされた剣を受け止めていた。



「サトシ様大丈夫ですか?」


「うん、ありがとう。」



 僕を攻撃してきたのは他の半魚人とは違う容姿のタコ髪のお姉さんだった。



「オクトー返してもらうわよ!」


「オクトーのお姉さん?」


「うん。ねぇちゃん。」


「オクトー!帰るわよ!」


「帰らない。私、このご主人様のものになった。」


「何言ってんのよ……そんなの許されないわよ……」



 オクトーの姉はそう言いながらノアと激しい剣閃を繰り広げていた。


 ノアの大剣を細い剣でいなしている。

 かなり腕が立つ相手だ。


「オクトー、一度戻ったらどうだ。怒ってるみたいだぞ。」


「ご飯おいしくない。戻りたくない。」


「オクトーをたぶらかす人間め!許さん!」



 オクトーを返すだけでは許してもらえなさそうだ。



「サトシ様、次、動きを止めますのでその隙にお願いします。


「うん、わかった。」



 ノアは大剣を収納して片手剣を持つ吸盤姉にじりじりと迫った。


 吸盤姉が剣を振り下ろすが避けようとせず、片手で剣を受け止めた。



 僕は一瞬目を閉じてしまったが、すぐに目を開き、女に走り寄る。



「ちっ」



(テイム!)



 女は戸惑って剣を手放すのが遅れ、僕の動きに反応するのが遅れたため、僕は女の懐に入り込み、テイムに成功することができた。




「ノア!大丈夫?」



 ノアは握った片手剣をゆっくりと離した。



「切れていない……」


「サトシ様のおかげで種族進化したようで鬼人となったようで、新たなスキルを得たようです。」



 言われてみると変化の指輪の効果が切れていて、真っ青だった肌の色が鮮やかなアクアグリーンのように変わっていた。


「サトシ様のテイムレベルが上がったからだと思いますわ。私もラミアからメローラミアへと進化したようです。」



 コリーナは下半身の蛇部分が長くなったようでうねうねしている。



「しょうがなくテイムしちゃったけどどうしようかな……」



 恐る恐るオクト姉に近づいていくと細かな吸盤の髪で全身を包まれた。



「あぁー気持ちいいー。とけそう……」



 気付くとオクト姉に唇を奪われていた。



「いつまでも私のこと触らないでよね……」


「えっ、ご、ごめん。」


「リルだめ。私のもの」


「なんでオクトーのものなのよ。別に私はそんなんじゃないからいいけど。」



「リルっていいうんだ。よろしくね。

 ところでこの半魚人の軍団はリルがつれてきたの?」


「うん、お父様がつれていけって言われて連れてきたけど……」



 半魚人の軍団は次々海に帰っていってもうほとんど残っていなかった。

 俺にテイムされた奴は俺の指示待ちになっている。



「あれ……あの子たち言うことを聞かないわね。」


「あいつらは俺がテイムしたからね。」


「そう……テイム……」



「リル、僕の半魚人の管理をしてくれる?

 この海の魔物を倒させて素材を集めたり、海に沈む財宝を集めてほしいな。」


「別にいいけど。」


「それじゃノアに色々教えてもらってね。」


「サトシ様、後はお任せくださいませ。」


「えっ、ちょっとこのオーガに教えてもらうの?サトシ様じゃないの?」


「何か問題があるのか?」


「問題はないけど……」



 半魚人達は冒険者たちに襲われるといけないので一旦海に戻ってもらい、その後リルの指示に従うように命令しておいた。



「ノア、コリーナ、けが人の治癒をしてあげて。」


「はっ。」



 ノアは治癒魔法で、コリーナは収納にたくさん入れてあったポーションをけが人に使って治療してまわった。

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