第6話
――渓谷出口付近――
「
「ふん。これでも私は、アイリス様の
「そうは言っても、
「そう思うんだったら、さっさとそこから降りて来て、正々堂々、戦いなさいよっ!」
「ご冗談を。自らこの優位な状況を捨てる馬鹿等おりはしませんよ」
その魔導士は、
「早く逃げないと、直撃を
「性格の悪いっ!」
ローラは、右に左にその攻撃をかわしてはいたものの、空にいる敵に対し、
――あいつが皆を助けるまではっ!
ローラは、歯を
しかし、それも限界に近付きつつあった。
「おっと、手が
ガキンッ!
魔導士の放った
ローラは、その
「しまったーっ!」
「遅いっ!」
「ウアァァァッ!」
魔導士の放った光の
ローラは、
「そろそろですね。
「こちらがな」
「何?」
魔導士が勝ちを確信したその時だった。
彼がその声に反応した時、オルテガは、風を
「悪いな。俺は、この国では最速だ」
オルテガは、すれ違いざまに剣を振りぬくと、魔導士の体を上下に分断した。そして、そのまま地上へと着地した。
体を
グシャリッ。
水分を含んだ嫌な音が周囲に響き渡る。
このような状態でもなお、魔導士の男は生きていた。
「聞いた事がある……。お前が『
「戦場で、そうはしゃぐもんじゃない。そういう奴から死んでいく。
「もう聞こえてないでしょう?」
ローラが肩を押さえながら、オルテガの横に立つ。
「私は、決着がついてから寝るタイプだ。敵が生きているうちに長話はしない」
「何それ。もしかして、
「お前をあそこまでいたぶってくれたんだ。この位は言わせて貰わないと気が
「それって、私の為って事?」
「味方を
「あ、あれくらい……、当たり前よ……」
ローラは、その言葉とは
そんな会話を続けながらも、オルテガはしゃがみ込み、何かをしようとしていた。
「何やってるのよ?」
「冒険者の指輪を確認してる」
「暗殺者が、身元が分かるような物、持っているのかしら?」
「こういう自信家は、
「ふ~ん」
ローラは、オルテガの
「こいつ、甘ったるい香水なんてつけやがって」
オルテガは、少し顔を
「やっぱりあった!」
オルテガは、彼の指輪を見付けると、したり顔でローラの方へと振り向いた。
「はいはい、偉い偉い」
ローラは、
「さて、お姫様達の元へ戻るか」
「そうね。早く報告して安心させてあげないと」
オルテガは、証拠品の指輪を回収すると、すぐさま
「あの……」
「何だ?」
オルテガが振り返る。
「
オルテガは、目を丸くしてローラの顔を見ている。
「なっ、何よ。
ローラは、耳まで赤くしながら、その
「すまん、すまん。あまりに意外な言葉が出てきたもので驚いてしまった」
「いいわよ、もう! 二度と言わないから」
「すまん、すまん」
二人は、こうして
黄昏勇者の災難 ~受付嬢に騙される。そして、再び王都に殴り込む。~ 善江隆仁 @luckybay
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