第3話
――街を出発して数時間・街道――
「ちなみに護衛は王都に着くまでで良いのか? 中に入る必要は、ないよな」
オルテガが
「それで良いと思うけど、入りたくない理由でもあるの?」
女騎士のローラが答える。
「ちょっと嫌な思い出があってな」
「どんなです?」
アイリスが興味を
「王族を怒らせて、王都から追い出されました」
「へ~。乱暴そうだものね」
「別に、間違った事をした訳じゃないぞ。だが、人間なんて
「そりゃ仕方ありませんぜ。巻き込まれて王族に目なんか付けられた日にゃあ、庶民なんて一発でアウト。死活問題でさぁ」
「そういえば、あいつらも似たような事を言ってたな」
「そうでしょう」
「とはいえ、こちらからしたら納得出来るもんでもない」
オルテガは、遠い目で空を見上げていた。彼の心とは裏腹に、空は雲一つない快晴だった。
「間違った事はしていないと言っていましたが、どういう事です?」
アイリスが少し納得のいっていない様子でオルテガに問い掛ける。
「まぁ、到着するまで時間もありそうですし、話のさわりくらいは、お話ししても良いでしょう」
オルテガは、アイリスの様子が少し引っ掛かってはいたが、事情を話す事にした。
「あれは、もう、数年前の話です。竜退治を評価され、
「ふん、そんなの、『竜殺し』の肩書と金目当ての女ばかりでしょう?」
ローラは、
「そんな事、言われなくても分かってるわい。全く、人の話の腰を折りやがって」
「旦那、そりゃ仕方ありませんぜぇ。女性は、男の自慢話が嫌いなもんです。
「はっきり言う。気に入らんな」
「すいやせん」
「で、どうして王都から追い出される事になったのです?」
追い打ちをかけるように、アイリスが話を進めるように
「はぁ~、どいつもこいつも――」
――数年前・王都の城内――
オルテガは、その腕を買われ、王立の騎士団の
その為、週に何度か王城の
ある日の事。いつものように訓練を終え、中庭を歩いていると子供の声が聞こえて来た。
――子供の声?
オルテガは、王城に
「
バシッ!
子供の声と共に何かを
見れば、貴族の男の子とその友達であろう
「おい、何やってるんだ」
「誰だ、貴様!」
オルテガが止めに入ると、貴族の子は、あからさまに不満そうに
「お前、私が誰だか知っているのか?」
「誰なのだ?」
「フン、
「何だぁ?」
オルテガは、男の子の態度に怒るというより、状況への理解が追いついていないといった
「私は、この国の王子だ。だから、お前のような部外者は、下がっていろ」
――そういう事か。
オルテガは、ここに来てやっとこの状況に
「たとえ王子といえど、無抵抗の者を一方的に叩くのは、どうかと思います」
オルテガが子供相手に
「こいつは、私の家来なのだ。そして、こいつは、
バシッ!
再び、王子の持っていた小枝が
「ほら、な。こいつは、
王子がそう言いながら、再び小枝を
「お止め下さい」
オルテガは、振り上げられた王子の腕を掴んだ。
「
「うるさいぞ、お前! 痛っ! 痛いぞ、離せ!」
「私は、ただ
「おい、お前! 何をしている! 今すぐ殿下を離せ!」
そう声を掛けて来たのは、王子の護衛の者達だった。
「見ていたのなら、お前達が止めるべきではなかったのか?」
「殿下に意見できるのは、国王様だけだ」
「全く、情けない奴らだ」
「いいから、殿下の腕を離せ」
「へいへい」
オルテガは、王子から手を離し、両手を上げ、交戦の意志がない事を示した。
「何をしている! こいつをひっとらえろ!」
解放された王子がわめく。
その後、オルテガは捕らえられ、一週間ほど
――再び現在――
「その後も色々ありまして……。しかも、いつの間にか、王子を
「そんな……。お
アイリスは、少なからずショックを受けているようだった。
そんな姿を
「アイリス様、このような者の言う事を信じる必要はありません。自分に都合の良い嘘を付いているだけかもしれません」
「だけど……」
「別に、信じて貰う必要もないさ。今となっては、どうでも良い話さ」
オルテガは、そう言うと、頭の後ろで両手を組み、再び空を眺めた。
箱馬車の中は、少し重苦しい
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