第1話
――数年後――
オルテガは、いつものように
結局、屋敷も没収され王都を追い出された彼は、その身一つでこの街に流れ着いていた。
今では、気ままな一人暮らし。宿屋の角部屋に滞在し、
「ふう。クエストを完了してきたでござる。朝のひと仕事は、気持ちが良いものですな」
「ござる殿は、今日も精が出ますな」
オルテガがござるを
「オルテガ殿がサボり過ぎなのでござるよ。腕は立つのですから、もう少し真面目に働いても罰は当たらぬでござる」
「俺は、生活が出来るだけの稼ぎがあれば、それで良いのさ。だから、自分のペースで働かせて貰う。
「そ、そんな事は……、ないで……、ござるよ……」
この時、ござるの目は、完全に泳いでいた。
*
ここのギルドでは、少し変わったシステムを採用している――受付嬢のランキングシステムである。
冒険者のなり手不足が深刻化している昨今。ギルドは、様々な手段を
冒険者達は、『
このシステムは、予想以上に効果を発揮した。
元来、冒険者にならないような
こうしてギルドは、
*
オルテガとござるが、そんな会話をしていると、彼らに
「オルテガ殿、
剣鬼は、
彼女の実力であれば、王都のギルドで更なる高みを目指す事も出来たであろうが、何故か、このギルドに
「何度も言うが、俺は、何もしてないぞ」
「そんな訳ないでしょう? 何もしてないのに、毎朝、あんなに
「そんなの大きなお世話じゃないか。全く迷惑な話だ」
話が
「ちょっと、オルテガさん。今月のノルマが達成出来ていませんよ」
「ゲホッ、今度は、何だぁ?」
オルテガが嫌々声の主の方へと顔を向ける。
彼に話しかけて来たのは、このギルドの受付嬢の一人、ルナ。
受付嬢を
彼女の
しかし、一方、その
「もう。
「このままじゃ、資格が
「分かってるんなら、さっさとクエストを受注して下さい」
「全く、うるさいなぁ」
そんな時だった。
「オルテガさん。クエストをお探しでしたら、この依頼等いかがでしょう?」
「はぁ?」
オルテガが声の主の方を見やると、そこには、
この事により、普段は見向きもされない窓際の二人に、ギルド内の者達の視線が集中した。
ニーナは、ルナと同じギルドの制服を着ていたが、気持ちのせいか、少し
「この依頼は、ある貴族の方を王都に送り届けるだけの簡単なお仕事です。オルテガさんに
ニーナの色っぽい唇が、
しかし、少し
「自分で言うのもなんだが、こんな
「あら、黒龍を討伐した勇者様なら誰も文句は言いませんよ」
「そんなもん。
「とは言え、『竜殺し』の称号は立派なものです。本来なら、それだけで依頼が殺到するものですよ」
「
「フフフ。では、依頼人の方は、街の入口でお待ちです。
「へいへい」
オルテガは、
「では、宜しくお願いします」
ニーナは、一礼すると受付カウンターの方へと去って行った。
「良かったですね。
「そうでござる。しかも、簡単で
「それにしても、ニーナさんは、やっぱり
ルナは、尊敬の眼差しで立ち去って行くニーナの後姿を追っていた。
「そうか? 俺は、ああいうタイプは苦手だな。特に口元にほくろのある女は信用していない」
「そんなのオルテガさんの単なる偏見じゃないですか」
「
「オルテガ殿は、色々と裏切られた経験があります
「人生ってのは、疑り深いくらいで丁度良いんだよ。まぁ、そんな話はどうでも良い。
オルテガは、そう言うと、やっと重い腰を上げた。
「オルテガさん、お気を付けて。精霊の加護のあらんことを」
ルナは、頭を下げてオルテガを見送った。
この時、当の本人は
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