第9話 傍から見たら悲劇のヒロイン

 場所は近くのカフェ。取り調べを受けること1時間。

「俺はやってないんです、信じてくれ」

 俺は劇をしているのか? 自分でも何を言っているの分からないただ言わないと捕まってしまう。

「君がやったんだな」

 生徒会長の早見はテーブルを叩く。おい刑事役かよ。

「俺はただ、弁当を食べていてそしてたらあんな状況になったんです」

「嘘をつくな、私は観たぞ、君がやっているところを」

 何をだよ? だいたいなんでこんな状況になっているんだよ。

 俺は普通に麻衣とお昼ご飯を食べていただけだ、それだけだぞ?

「何を見たんだ」

 俺は汗を流す。

「ねえ、いつまで続くのかな?」

 彩音の声で我に返る。

 俺はいつの間に.....。

 横に彩音が座り、前の席に早見が座る。

「じゃあ、食べよっか」

 突然ドーナツを持ち、現れたのは麻衣。トレイいっぱいにドーナツを置き、幸せそうな顔でテーブルに置く。そして俺の横に座る。

 もしかして早見先輩は本当に嫌われているのか?

 麻衣は幸せそうにドーナツを食べ始める。

「美味しいいいいいいいいいいい」

「これは何か言うべきか?」

 俺は麻衣を見つめる。

「別に、私はただ本を読みに来ただけだから」

 絶対に違うだろ、ドーナツばかりを手に取り本はテーブルに置いたまま。

「で、なんで俺たちはカフェに来てるんだっけ?」

「分かんない」

「分からない」

「分かるはずがない」

 結論三人とも分からない、そうか誰も分からないんだ。

「じゃあ、勉強を始めようじゃないか」

 早見は言ってやったぞ! みたいな顔をする。

 何も解決してませんよ。

「俺帰ってもいいですか?」

 「どうして?」

「そのー今から用事があって」

「こんなハーレムを抜け出すのか?」

 目を輝かせて言う。これがハーレムなら抜け出すかもな。

 だって、この状況を考えてみろ。

 まず、隣で何故かノートに俺を地獄に落す方法をずっと紙に書いてる彩音。

 次に、ドーナツを美味しそうに食べている麻衣。どう考えても買いすぎているぞ。

 そしてだ、俺の前に座っている早見先輩。

 何も言わなくても分かるだろ? そうだイカレテイル。

「今イカレテイルと思ったな?」

 俺のネクタイを掴み、体を前に傾ける。

「いえ、決してオモッテイマセン」

「同感だ」

「へ?」

「世界について話そうじゃないか」

 時が来たなという顔をしながら早見先輩は口を開く。

 何も来てませんよ。本当に。

「では、まずは」

「私帰るね!!」

「私も」

 彩音と麻衣は鞄を持ち立ち上がる。

「じゃあ、俺も...」

 俺の腕をがっしりと掴み、泣きそうな目で問いかける。

「行かないでくれ」

 この状況を説明するなら、あれだ、ヒロインが好きな男に振られるシーンだな。

 違う、そんなことどうでもいいんだ。俺は帰り...。

 俺は無理やり手を引っ張ろうとするがびくともしない。この人パワーもイカレテイルのか。

 助けを求めようとしたがもう二人とも居なくなっていた。この裏切り者が。

「さ、二人きりだ」

 俺は椅子に腰を下ろす。

「てけ、なんでこんな状況になったんでしたっけ?」

「君が女を弄んでいるからだ」

「冤罪です」

「有罪だ」

 俺が女を弄んでいる? 冗談もよしてくれよ。俺は女を弄ぶほどイケメンでもないし、陽キャでもない。

 そもそも陽キャとか考えてる時点で弄ぶのは無理だろう。

 自分で考えて嫌になる。

「有罪だと思う根拠を」

「私の心を盗んだ」

 すすっていたイチゴスムージーが出そうになる。

 えーと、俺がいつ盗んだんだ?

 確かに今日早見先輩に所に行くのは忘れていたけどさ、あれは本当に忘れていただけだからなーー。

 本当だぞ? 別に嫌いだから行かなかった訳ではない。神に誓うよ。

「えーといつ盗みました?」

「あの日からだ、私が弱っている時手を指し伸ばし救ってくれた、あの時思ったんだ私は君しかいないと」

「....」

「それからだ、君が変わったのは、もう私を見ることが無くなった。そう、捨てられたんだ」

「...」

 スムージーをすする。

「そして今日、教室に行くと君はもう新しい女と遊んでいた。またやる相手を見つけたんだ」

「ストップ、ストップ、ストップ」

 やる相手? まって、この早見先輩は感性もイカレテいるのか? 落ち着くんだ、俺の早とちりかもしれない。

「あのーやる相手?」

「まさか、忘れたのか」

 早見先輩は視線を下に向ける。本気で悲しむ演技をする。演技ね、演技。

「昨日やったじゃないか?」

「は、はい??」

「もう、私の前から消えてくれ」

 傍から見れば悲劇のヒロイン。俺から見れば頭がイカレテイルヒロイン。

「そんな、俺は」

 何故か俺もいつの間にか演技をしていた。

「もう、辞めてくれ、私を忘れて幸せになるんだ」

 そう言い早見先輩は、鞄を持ち立ち上がる。

「さようなら」

 早見先輩はそう言い店を出る。

 騒がしいカフェには悲しい空気に包まれていーる訳ないだろう。

 何が起こってるんだよ。

 後なんで俺が振られているんだよ。俺はいつ告白したんだ?

 スムージーをすすり考える。

 行く高校間違えたな。

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