第7話 チョコはこの世で一番美味い

「だから、早く行くぞ」

 俺に手を伸ばす。

 えーと、話をまとめると、まとめると。いや、全然理解できないんだが。

 なんだよ付き合うって。もしかして付き合うのか。

 あの付き合うなのか。

「さあ、行くぞ」

 俺の否定権はとっくに消えてたことを思い出す。

 なんでこうも、俺は否定権がないんだよ。

 俺のネクタイを握り、歩き始める。

 今からカツアゲされるのか? 漂わぬ雰囲気を感じる。多分この人に関わったら俺の青春が無くなる。

「さて、着いたぞ」

 歩くこと、数分で目的に着く。

 ここは、って生徒会室じゃないかよ。

「どうして、ここに?」

「な~に、落ち着け」

 めっちゃ落ち着ていますけど?

「そうだな、君は二つ選択肢を選ばそう」

「は、はい」

「まず、生徒会に入るか、私と付き合うかだ」

「んーと」

 どっちも地獄じゃないか? あれだ、どの選択を選んでもバットエンド迎えるパターンだなこれ、絶対にそうだ。

「選ばないっていう選択肢はありますか」

「ない」

 即答だな。えーと考えるんだ。

 生徒会は確かに青春だよな。みんなで頑張るのも良いな。けど、帰りに好きな人と帰ることはできなくなってしまう。それは、嫌だな。

 俺は青春を謳歌したい。だからここは、付き合うを選ぶのが良いと思うが、その選択もなしだ。

 どうするか。

「時間切れになるぞ」

 ギリギリ脅迫だぞそれ。

「そうですね、じゃあ、生徒会に入ります」

「おおお、その選択を選ぶのか」

 俺に向かって拍手をする。

「まあ、生徒会に入るのは無理だけどね」

「えーと、え?」

「だから、私と付き合うしかないんだよね」

 アイドルのようなポーズをする。全然可愛くない、可愛く、そうだよ、めっちゃ可愛いよ。

 けど、可愛いとこの状況は関係ないだろ。

 何が起こってるんだよ。

「じゃあ、明日二年の教室にくるように」

 それだけ言い、どこかに向って行く。

 俺は、世界のど真ん中に放置された感覚に陥る。

 教室に戻ろう。全部夢だ。夢。

 しかし、夢は終わることはなかった。

 教室に知らない人が俺の席に座っていた。

 しかも、美味しそうにメロンパンを食べている。

「あの、そこ俺の席なんですけど?」

「あ、ちょっとまってね」

 そう言い、急いでメロンパンを食べる。

「ふー美味しかった」

 満面な笑みで感想を俺に言う。

「あのさ、君ってお菓子持ってたりしない?」

 首を傾け目を合わして俺に言う。

「一応、鞄の中にチョコ入ってるけど」

「お? やるじゃん」

 そう言い俺の鞄を漁り始める。

「頂きます」

 俺のチョコを取り、口に運ぶ。

 俺って食べていいよって許可出したっけ?

 それに、多分犯罪だぞ。

 そんなことお構いなしに美味しそうに食べている。

 で、誰なんですかいったい。

「君、お菓子のセンスあるよ」

「は、はぁ」

「それじゃ、契約をしようかな」

「?」

 何言ってるんだ?

「君はお菓子を持ってくる、そして私は君に弁当を作ってくる。契約成立だ」

 俺に向かって手を伸ばす。

 この光景今日で二回目だ。二回目だぞ?

「さ」

「えーと、その」

「もーいいから」

 俺の手を握る。

「はい、契約成立ね!!」

 天使のように笑う彼女。

 俺の否定権は生まれたときからないのか?

 それに、名前もしらない人の弁当ってちょっと怖いよ。

「あ、私の弁当期待していいよ。ちょー美味しいから、だからお菓子よろしくね」

 そう言い、教室を出る。

 考えることを否定している脳で考える。

 今日って登校三日目だよな?

 そして気付く、多分俺の青春は普通じゃないや。

 

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