第4話 妹と恋人

あまりのも異様な話で誰にも話せるような内容じゃない。


正直、海月を自分の家に住まわせる事は周囲の興味をひく。田舎から上京という環境でもない

むしろ実家は近いから。

第三者からすれば家庭内に問題があるようにも見えない。それなのに『何故?』となるだろう。

だったら黙秘を決め込みたいとこなんだが…。


「悪いんだけど…今日は無理」

「そうなの?え?何で?」

「そういう気分じゃないから」


俺にまとわりついてくる同じ大学の女…いわゆる【恋人】という存在。


「珍しいなぁ…弓弦にそういう気分じゃない日があるなんて」

「…」


何も言わない面倒くさいから。俺がキミの有り余る性欲に付き合ってやってるんだって事を。

彼女は校内でも目立つほどの美少女だ。読者モデルとかをやっているらしい。

『らしい』というのは俺がその事に関して興味ないので特には確認していないから。


年下の彼女は、この春に1年生になったばかりで高校生気分は抜けていない。

入学して早々に彼女から交際の申し込みされた。タイミング的に俺はフリーだったから軽い気持ちで承諾した。


交際期間3ヶ月…その間に何度もセックスしてきた。実際交際した翌日には既に繋がっていた。

それからの彼女の欲求はなかなかで、ほぼ毎日の様に求めてきた。

さすがに相手するのも疲れてきて、最近は頻度を減らすようにする為にバイト三昧にしている。


ただ…彼女と体の繋がりがなくなったら…何が残るんだろうか。

正直いえば精神的に幼すぎる。ワガママで甘え

冷たくするとすぐに拗ねる事を考えると性格に難ありな気がしている。

良いところは顔と体と声、外見だけは凄く良い。(ただそれだけ)

結婚したい相手ではない、遊びたいだけの相手。

だけど彼女の性欲に付き合うのは真面目に色々とキツイ。俺はただただ彼女が俺に飽きる事を待っているのだ。

知っているんだ…彼女が最近他に目を付けている男がいる事を。


「でも、今日は一緒にいたいんだけどぉ」

「だから無理」

「一緒にいるのも無理なの?」

「無理」


海月を連れて来て2日目、まだ不安定でオドオドしている妹を放っておけない。


「なんで?」


(しつこいな…)

思わず溜息をついてしまう。


「今、妹がいるから」

「妹さん?家に?」

「そう」

「なんで?」


空気読めないよな…本当に。若干イラッとしてしまう。



「妹さんに会ってみたい!!家に行っても良いでしょ??」

「は?」

「決まり!!」


(コイツを海月に会せるのか?マジで?)

違った意味で恥ずかしいんだが…。


本当に勝手な女だ。既に俺の家に向かって歩き出してるし…。そもそも妹がいる家に彼女を連れて行くのはルール違反じゃないだろうか…。



***


「弓弦の彼女の礼美れみです!ヨロシクね!!」


玄関に入った早々挨拶をする彼女に驚き戸惑う海月が俺の顔をチラッと確認する。

俺は苦笑いするしかない。


「あの…妹の海月です…えっと…どうぞ」


海月は彼女にスリッパを出す。

そのスリッパを履いてズカズカと部屋に入る礼美。


(可笑しい)


海月の方が年下なのに全然大人だ。自由人の彼女にさり気なくお茶を出したりと接待している。

思わず2人を比べてしまう。そして改めて思うのは…女として上なのは海月の方だということ。


「弓弦兄…私、席を外すね」


気を利かせようとする妹。俺は咄嗟に海月の腕を掴んだ。


「外して何処に行くんだよ」

「家に…もど…」

「ダメだ」


家に戻らせるワケにはいかないんだ。それに時間的に外をフラつくのも危ない。

俺は海月を座らせた。



「家に戻るの引き留めるのってヘンなのぉ」

「うるさい!!」

「え?」


イライラが増して来てる。いい加減自分本位な行動は止めて欲しいものだ。


「家庭の事情に口出すのはどうかと思うよ?例え彼女だとしても」


今までに彼女に対して怒った事はない。冷たくしたことも。

それが余計に彼女をワガママにしてしまったのだろうか…なんて妄想か?


「とりあえず目的は果たしたんだろ?送って行くから帰ってもらえる?」

「え?あ…うん」


驚いて戸惑う彼女。


「海月、悪いちょっと送ってくる」

「…はい」


並んでいる2人が目に入る。対照的な2人。

礼美は学校で一番の美女だと言われているのに

海月には劣る。

15歳の海月の方が大人だ。気品も女性らしさも全てが魅力的だ。


(俺は…バカだ…本当に)


妹と彼女を比べてしまう…普通ならそんな事しない…ありえない。

だけど…体だけの繋がりの彼女よりも、危なっかしい妹の方が可愛く思える。


(ヤバいかもしれない)


俺もアイツらと同じ血を持ってるんだ…いつ踏み外すか…。

ありえないとは言えない。だったら距離はとる必要がある。


(女として見てはいけない、好感を持ってはいけない)


俺の行動は正しかったのだろうか。

いや、あの家に海月を置いておくわけにはいかなかった。それは事実。

だったら他に選択肢はない。俺がシッカリすれば良いだけの話だ。



(海月は妹…妹…妹…)

呪文のように繰り返す。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る