第9話 定期考査
定期考査。
これは学生なら必ず受けなければいけないもので、学校の成績をほぼ左右されてしまう。学生の使命とでも言おう。
良ければ偏差値の高い大学や高校へ行けたり、悪ければ留年、補習という2文字が近づいてくる。
ちなみに俺は後者で、いつも留年と戦っている。去年も最後の定期考査でギリギリ回避した。
中学生の頃はそうではなかったのに。
そんな俺だが今年は違う。なぜなら部活で勉強会があるから。
誰かと一緒に勉強する経験はゼロなので、どんなんなのかワクワクして、これ以上ない勉強心に燃えている。
分からない所があれば、頭が良い夜月に聞くことができるし、皆で協力したらきっと留年に圧勝できると思うのだが、昨日の実の一言が頭に残っていた。
鈴美はともかく、夜月が男嫌い?
未だに信じにくい。あんなに社交的で天真爛漫な彼女のどこが。
今ここで悩んでも分からないことだと思い、カバンに教科書やワークを詰め込み、頬っぺたを叩く。
(よし、行くぞ!)
向かった先は部室。彼女達はもうすでに来ているはずなので、これで全員集合。
気合いを入れてドアノブを掴み開けようとした時、まさか自分に向かって扉が開いた。
「イタ!」
木製の扉が俺の頭に直撃して、うずくまる。
「何してるのですか……」
目の前でけがしている俺の姿を見て、心配するどころか引いた目をしている。
私は無関係ですよオーラが半端ない。
「あの、そこにいると邪魔なので早く入ってもらいます……」
冷酷の女。この言葉が一番似合っているだろう。
ここまで冷静沈着で、むしろ邪魔者扱いするとはなかなかのやり手だ。
男嫌いとはこんな人のことを言うのか。
不幸中の幸い、血は出ていなかったので言われるがままに、そそくさと部室に入る。
鈴美は用があったらしく、俺が入った途端に扉を閉め、どこかへと行った。
場面は切り替わり、部室には真面目に勉強している人と真逆でずっと文句を言いながらやっている人がいた。
聞いた話だが、夢奈はとても勉強ができないらしい。
学年でもワースト争いを常に繰り広げられおり、一年生だけで3回総合順位最下位を取ったと言う噂がある。
よく2年生になれたものだと俺は感心してしまう。
ちなみに俺はワースト争いはしていない。
ずっと平均点との戦いだ。勝ったことは少ないけど……
「夜月!ここ分からない!」
「どこ?あっここはね……」
俺が待ち望んでいた光景が、目の前に広がる。
そうそうこれが見たかった。
仲間と助け合い、定期考査を乗り切る!こんな青春を送って見たかった。
自分の想像と違う点があるとしたら、夢奈はペンで頭をつつきながら話を聞いていたが、サッパリ分からんという表情をしていることぐらい。多分効果なし。
「光圀君来たんだね!勉強頑張ろう!」
「あんたも一緒に赤点取れ!」
余計ないとことも聞こえてきたが、ようやく俺の存在に気付いてくれ、俺も切り替えて机に向かう。
しばらくすると鈴美も帰ってきて、4人で囲いあいながら勉強に取り組む。
「あの?ここ分からないのですが、誰か教えてください」
「光圀君どこが分からないの?教えてあげる」
席が斜めなこともあって、俺の隣に夜月は移動してくる。
そして俺のワークに顔を近づけ、ペンを使いながら説明しだす。
最初のうちは何も気を取られることもなくできていたのに、髪からする甘い香りと、きれいな横顔がやがて集中力を奪う。
バクバクと心臓はうるさくなり、頬も熱くなって勉強どころではなくなってきた。
「ね?聞いてる?」
俺の異変に気付いた夜月は、頬を膨らませながら聞いてくる。
怒っているのだと分かってしまうが、その可愛さについつい顔がほころぶ。
「やっぱり聞いてないでしょ!ちゃんと聞かない人にはもう教えません!」
腕を組み、プイ!と顔を横に動かす。
「ご、ごめんなさい。次はちゃんと聞きますから」
これには流石に、まずいと思い全力で頭を下げる。
「へ!これだから男子は。私の目はどうやら節穴だったかもですね」
俺の謝っている姿を見て、つかさず一言加える。
どうやら夜月が怒った理由をちゃんと理解しており、あざ笑うかのように俺をじっと見てくる。
「本当にごめんなさい!」
だからと言ってやることは変わらず謝罪を続け、許してもらう。
背筋もピン!と正し、面接の時に使うようなお辞儀。
社会人になったら特技にできるレベルで自分自身でも驚いている。
「分かった!今回は許してあげる」
俺の渾身の謝罪作法を使いなんとか許してもらえた。
この後は真摯に勉強に向き合い、何もなく終わる予定なのだったが……
「お前も赤点取れ!赤点取れ!」
一人ずっと俺に囁くやつがいて再び集中できない。。
夢奈の机にはもう教科書もワークもなく、諦めた感じ。
一人だけ仲間外れは嫌だったのだろう、次に頭が悪い俺を標的として赤点仲間を作ろうとしている。
「俺は赤点は取らない!諦めてお前も勉強しろ!」
「私は絶対に諦めない!お前に赤点取らす!」
夜月はすっかり俺を邪魔することにやる気が入り、色々仕掛けてくる。
まずは始めにカバンの底から出てきたプリントで紙飛行機を作って飛ばし、俺に当ててくる。
少しづつ怒りが積もるが、紙飛行機の原材料は0点のテスト用紙だったので許した。
次に俺の机や椅子を揺らして邪魔をしてくる。
しかし机を4人で合わせてやっているため、机を揺らすと鈴美に怒られ、椅子を揺らそうとしても力がなく俺の体重に負けて、動かせない。
流石に会心したかと思ったら次は、体を使ってきた。
しかしさっきの夜月のインパクトが強すぎたあまり、俺に聞かなかった。
まな板の低身長だって言うのもあるかもしれないが。
「クソ!なんで全部失敗するんだ!」
とうとう夢奈は悔しさをあらわにして、再び対策を練っていたが夜月の一言ですべてが終わった。
「もー知らない間に光圀君と夢奈仲良くなりすぎじゃない。光圀君も私の時の態度と違うし、夢奈も楽しそうだし、もしかして付き合ってるの?」
これには俺もドキリ!
夢奈も急に顔を隠して、カバンから再び教科書を取り出す。
「付き合ってない。付き合ってない」
俺が否定すると、夢奈も首を縦に振り相槌を打つ。
「そっかー」
この後はお互い集中できないまま勉強をした。
そして一週間と言うテスト週間はあっさりと終わり、俺と夢奈はしっかりと赤点取った。しかも同じ教科で……
タイプの違うヒロイン達に恋愛占いされてみた結果、ハーレム展開になってしまう。 こまこま @Komakoma29
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。タイプの違うヒロイン達に恋愛占いされてみた結果、ハーレム展開になってしまう。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます