第7話 一人前

 「全く探したよ!」

 

 「何してるの……部活始まるよ……」

 

 「は、はやく来なさいよ……」

 

 部活の集合時間をとっくに過ぎていたので呼びに来てくれた。

 わざわざ三人で。


 制服姿の美女三人が横並びだったら迫力がすごく、一瞬でクラス皆の視点がそっちに集中させる。

 存在感ありすぎだろ。

 男なんてほぼみんな鼻の下が伸びてるぞ。まぁ俺もだけど……

 

 何とかして目線を机に向けて、かたずけ出す。

 

 「ごめんなさい。もう少ししたら行きますので先に行っててください」

 

 「分かった!じゃ部室で待ってるから早く来てね」

 

 こう言って三人は仲良く帰っていくと、クラスの皆の目線は一斉に俺の方を見る。

 しかもさっきとは全く違う、ギスギスした目で。特に男子。

 

 「お前は羨ましいよな。あんな美女と仲良くなれるなんて。占いだからって許せない!」

 

 先陣を切ったのは絆。

 振られた事件もあってか、明らかに黒いオーラを醸しながら、嫉妬心をぶつけてくる。

 周りの男子生徒も首を大きく縦に振り、とても怖い。

 

 「いや。別に付き合ってもいないし。3人中2人に嫌われているから皆が思っている以上良くもないよ」

 

 「いやいや。俺らみたいな一般人は何しても見抜きもしてくないんだぞ、好き嫌いがあるだけマシだろ!」

 

 「そうだそうだ。まともに喋ってくれない男の気持ちを知れ!」

 

 噓偽りもないことを言ったのにも関わらず、それは火に油だったらしく、周りの男子生徒の嫉妬心をますますかきたてる。

 

 「ずるい!」

 

 「帰れ!」

 

 「へっぽこ!」

 

 「クソ親友!」

  

 泣きそう。

 10分ぐらいたっても文句は止まらず、気づけば教室の端っこに追いやられていた。

 四面楚歌状態で、泣く泣く文句を言われ続けていると、、、

 

 「遅い!いったい何してるの!」


 聞き覚えがある声が聞こえてきたが、誰だかよく見えない。

 なんとかして見るために潜り抜けようと、集団に突っ込んだが強く服を引っ張っられて失敗。


 「漫画みたいに逃げれると思うなよ。ひたすら付き合ってもらうからな」


 「光圀。残念だな。もっともっと遅刻して彼女達に散々怒られろ!」

 

 クズ男達め。

 俺の邪魔をして何になるというのだ。


 こんな奴らに負けてやるかと意気込み全力で抵抗するも、男子一人にその他クラスの男子の力バランスは変わらず一向に抜け出せる気配がない。

 

 ずっとごちゃごちゃしていると、バン!と突然、誰かの手が間から出てきた。

 その手に望みをかけ、必死に手を伸ばす。


 何度か交差した後、手と手が繋ぐ。

 小さく丸い手なのにすごい力が感じられ、あれだけ難しかった大敵をいとも簡単に抜け出せた。


 そして抜けた先にあの小さい手の持ち主__夢奈がいた。

 

 「ありがとう。助けてくれて」

 

 「い、いいわよ。でも勘違いしないでよ!これはき、昨日のお礼だからね」

 

 お、まさか昨日のことに感謝してくれていたのか。それなら頑張った甲斐があった思う。


 でもなんだか3人で来た時から、何かおかしいなこいつ。

 時々目線がウロチョロしている気が。


 「ほら。何してるの早く行くわよ」

 

 「お、おう」

 

 いつも通りに戻った。やっぱり気のせいなのか。

 悩んでも仕方ないので、教室を出ようとした。

 数歩進むと、夢奈が急ブレーキ。

 

 「本当にありがとうね。ヒーロー......」


 「何か言ったか?」

 

 「な、何もいっていないわよ!」

 

 明らか俺の背中で何かモグモグと呟いていたのは聞こえたのだけれど、内容まで聞き取れなかった。

 突然止まったり、喋り方がやっぱりおかしい。こいつ何か病気になったか?

 あっ!もしかして昨日のことで心が病んじゃったかも。

 よし、これから丁寧に対応しよう。

 


 ☆★☆★



 部室の前。

 そこには見たこともある、大蛇の行列ができていた。

 

 「ほら案内役。はやく働きなさい」

 

 「分かりました!」


 急に振られたが内容が簡単なだけに、ミスもなくスムーズに今日の占って貰う人全員をエスコートする。

 

 「今日は一段とキモいわ」

 

 夢奈は占う前に最後、何かを漏らしていったがこれもあまり聞こない。

 とにかくその後は雑用という雑用をこなし、終了予定時刻よりも早くに終わることができた。

 

 我ながらナイス頑張りだ。

 いつも以上に頑張ったので終わった頃の俺はヘトヘトで椅子にもたれかかる。


 「あーー疲れた」

 

 完全に充電がなくなり、しばらくシャットダウンしていると、制服に着替えた彼女達が集まってきた。

 

 「お疲れ様だね!」

 

 「あなたにしては頑張ってた……」

 

 皆褒めてくれる。

 これには疲れが一瞬にして吹き飛んだ気がし、体が軽い。

 

 満足感に浸っていると、一人俺の前に立ってきた。

 

 「ご、合格よ!あなたの頑張り見させてもらったわ。う、占い部としてこれからも活動することを許可します」

 

 「、、、えっ!嘘ーーーー」


 前触れもない驚愕に一言に俺だけじゃなく、他二人も目をパチパチさせていた。

 

 「どうしたの?夢奈悪いもの食べた?そんな急に素直になるなんてどうしたの!」

 

 「驚きです……まさかあの頑固な夢奈が……」

 

 「失礼ですよ」

 

 まじか!

 あんなに否定的だったのに、どうして。

 今は認めてもらえた嬉しさより、疑問が勝っており心の底から喜べない。

 

 「やーー良かったね。これで正式に部員だよ!私のおかげだね!」

 

 「あんたも認めてなかったのか。」


 「ちょっと私のおかげだねってどういう意味?」

 

 核心を突かれた。

 これは言わない約束をしていたのに口を滑らしやがった。

 しかも鳴らない口笛を吹いて、知らんぷり。

 

 「いやーーそれはね……」

 

 「なにはぐらかすの!そっちがその気なら私に策略があります」

 

 そう言って何かを模索中。

 自信満々に出してきたのは、水晶。

 

 「占いで何するんだ?」

 

 「は!知らないでしょ。占いには種類があってその中に、隠し事を探すこともできるのだ」

 

 なんだそのチート占い。

 占いってそんなすごいものなのか。だったらまずい。

 早く止めないと。

 

 「ダメだ!」

 

 急いで水晶に飛びかかり抵抗する。

 向こうも必死なのでなかなか水晶を取り上げることができない。

 

 「何してるのよ。邪魔」

 

 「楽しそう!私も混ぜて!」

 

 「ダ、ダメだよ……私が止めて見せる……」

 

 追加でドンドン増えていきカオス状態。

 たまに柔らかいものが体にあたったり、俺の大切な所に蹴りが入ったりして戦線離脱。

 結果、女子三人が訳も分からず、水晶を取り合っている始末。

 

 しばらくすると、誰かが大声で叫んだ。


 「これからのあなた達に何が起こる!」

 

 この声はどこかで聞いたことがある声。どこだっけ?

 思考を張り巡らせると、やがて一つハッキリと浮かび上がった。

 夢奈がいじめられている時、俺の背中を押してくれた人の声だった!

 

 すぐさま誰だと思い振り返ると、閉まっていたはずの扉が開いているだけで人影がない。

 結局、また誰だかわからずじまいで終わり、再び彼女達に目を向けると勝負が終わっており、水晶を眺めていた。

 

 「どうしたの?」

 

 夢中になって眺めているので疑問に思い聞いてみると__目が合った時には三人とも青ざめた顔をしていた。

 

 「どうしたの⁉」」

 

 「私達の誰かが……あなたと海に行ってキスしてる」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 どうだ。

 中学からの友達にこう言われた、止めるしかないだろう。

 そうして勝ち誇った気持ちでいると……

 

 「そんなのどうでもいいね!こいつが美女に好かれるなんて、男として嫉妬の塊でしかない!」

 

 まじか。

 美女三人に友情がいとも簡単に砕けれただと……

 

 「

 

 

 

 

 

 

 

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