第6話 勝負の一週間

 

 「お前さっさとクラスからどけよ!」

 

 「これ以上空気を乱さないで!」

 

 いじめはドンドンヒートアップ。

 明らかに酷いと感じたため誰か止めてくれないのかなと期待していたが、むしろクラスからいなくなる一方。

 

 じゃあここまで来たら俺が助けるんじゃないか!そう思った人もいるだろう、がしかし現在勇気がでる以前に、今行ったら誰もいないので本当に何されるかと恐怖が募っていくばかり。

 

 悩むより行動。悩むより行動。

 漫画の主人公ならそうすると自分に言いかけせるが、手足がブルブルと震え冷汗をかくだけで逆効果。これには流石にダメ人間すぎるとつくづく痛感する。

 

 じゃあどうする?見捨てるか?助けるか?

 自問自答繰り返していると……

 

 「前見ろ!」

 

 はい!っと誰かの声に従い、うつむいていた目線を上げると__さっきまで見えなかったはずの夢奈の顔がハッキリと映る。パッと見、夢奈の顔もうつむいていてよく分からないのだが、俺にははっきりと見える。今にも泣きだしそうになり、目には大きな涙を浮かべていた。

 

 それを見た途端、さっきまで悩んでいたことが噓かのように真っ直ぐに走り出す。

 

 「やめろ!」

 

 他人に向かってこんな強い口調で言ったのは初めて。

 自分でもこんな声が出せたんだと内心驚いている。

 

 「お前誰だ?」

 

 「あんた、ウチのクラスではないだろう。なら首を突っ込まないでくれる。これは私達クラスの問題なんだ」

 

 まぁ当然の反応。

 俺なんてモブでしかないので、名前なんて知るはずもない。

 

 「お、俺は、夢奈を、たた助けに、き来ました」

 

 なんて頼りがいないヒーローだろう。

 声も震えており、足もガクガク。

 いつも通りに戻ってるではないか……

 

 「お前。怖いなら来るなよ」

 

 「ホント!面白い」

 

 勿論、バカにされる。

 時を戻せるなら時を戻して、もっと準備して来たかった。

 俺の背中を押した人を少し憎む。

 だがここまで来て退散するなら、それこそ意味がなくなるので覚悟決めて、拳をギュッと握りしめる。

 

 「俺は夢奈の仲間だ!たとえどんなことがあろうと、仲間が悲しんでいるなら助けるしかない!」

 

 「はぁ!じゃお前がこいつがやったことの責任でも取ってくれるのか!」

 

 「とってやる!今までの憎しみを全部俺にぶつけてみろ!何が何でも守る!」

 

 遂に言ってしまった。

 一番恐れていたことを自分の口から吐いてしまった。

 アホだなとは思うけど、この発言に後悔はない。

 目をつぶり、両手を広げ待っていると……

 

 「お前。キモイ」

 

 夢奈をいじめていた女の方が言う。

 これを聞いて目を開けるとさっきまでいじめてたやつら全員、この世の者ではないものを見たかのような目をしていた。また痛々しいすごい目線も感じたので、恐る恐る周りを見渡すと、助けるときはガラガラの教室だったのがいつの間にか満員の生徒で溢れていた。

 

 「ちょっとここまでだと何もしたくなくなるよな」

 

 「どうでもよくなってきた」

 

 注目がいじめから俺へと移る。

 たった今美女を助けていたヒーローからただただ痛いやつに変化を遂げた。

 

 これにはゆでだこのように赤くなってしまう。

 周りの生徒もクスクスと笑っていたり、中にはひいた目をしている人もいたり今すぐに逃げ出したい。

 

 「あーー!もう帰ります!ちくしょ!なんでだよ……」


 とうとう耐えきれなくなり、悪役のように逃げ台詞を吐いてその場おさる。

 せっかくのカッコイイところが一瞬で台無しに。

 しかも肝心な夢奈もまだ下を向いており、いったいどんな表情だったかは分からなかったけど、多分失望していただろう。

 まぁあいつらがいじめることを止めたので、結果としたら__プラマイマイだな。

 

 この結論は覆せない。

 こうして俺のヒーロー劇は黒歴史に変わり、明日からどのように学校生活を送ればよいのか……

 

 しかも明日は占い部の活動だった………………

 

  

 ☆★☆★

 

 

 「あーー憂鬱だ」

 

 今日はいつも以上にテンションが低い。

 なぜなら昨日一生分の黒歴史を刻んだからだ。

 机に横たわっていると、キラキラしたオーラのイケメンが近づいてくる。

 

 「おいおい。せっかくの俺の復活に似合わない顔だな」

 

 今まで休んでいた、絆が帰ってきた。

 友人の復活は喜ばしいことなのだが、よりにもよって今日なのかと少し悲しい気持ち。

 じゃあ今まで絆はどうしてたか、説明しよう。

 

 まず占いの日まで遡る。

 あの日、俺の占いの結果を見て固まっていた絆を担いでいた。話はこれで終わったのだが実はその後に続きがあり、あいつはやがて一人で歩けるようになった。

 

 問題が起こったのはこの後。

 お互い別れた瞬間、あいつは調子に乗ってしまったのだ。


 ここであいつの占い結果を覚えているだろうか?

 そう。絶大な美女と付き合える。しかも近くにいるというもの。

 

 この言葉を鵜吞みにし、たまたま帰路で見つけた美女に告白したらしい。

 しかし、相手の方はイケメンに何かあったのだろう。

 

 きゅるんとしていた目は、鬼のようになり口調も強く、告白を断っていた。

 しかも色々と愚痴も言われ、絆はノックアウト。

 

 その後は鬱みたいになり、学校を休んでいた。

 

 「お前あの状態からよく回復してたな」

 

 「そうだろ!俺の精神力なめんなよ」

 

 こいつの精神力は羨ましい。

 俺もその精神力があれば今がどれ程、楽だったか……

 

 「光圀君!いたーーー!」

 

 突然、教室に馬鹿でかい声が聞こえる。

 自分の名前が呼ばれたせいか、横たわっていた姿勢がピン!と90度に変わる。

 

 ゆっくりゆっくりと首を右にかしげると、占い部3名が勢揃い。


 「もしかして……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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