第4話 助言を求めて
「分かった。そこまで言うなら俺にも考えがあるよ。絶対に退部しない!」
悩んだ結果、俺の彼女作りを優先にした。
そらそうだろ!一生に一度のモテ期を逃がすなんて、男としてありえない。
まだ来てないけど……
「はぁ!今の話聞いてた!」
「聞いていたさ。けどなこっちにもプライドがあるんだよ!」
「意味わかんない!」
「わかんなくていいさ。でもやってやる!俺は絶対彼女を作ってみせる!だから残る!」
具体的な考えはないが、この時の俺は自信に溢れていた。
とにかく、夢奈二人を認めさせることを目標に掲げていこう。
「私は絶対辞めさせる!」
「いや!諦めないよ!」
真っ直ぐな目で訴えると夢奈は呆れ顔で、頭を抱えている。
「じゃあいいでしょう!この一週間であなたの行動次第で存続を認めよう」
「いいだろう。受けて立つ!」
「しかし、ダメだったらやめてもらいますね」
「おう!」
部内での勝負が勃発。
これにはやる気に満ち溢れ、体が武者震いをするのだった。
☆★☆★
「ただいま」
いつも通りに扉を開けると、そこには白衣を着た女性がいた。
「兄さん帰ってきたんだ」
「奈古か。研究ひと段落でもついたのか?」
「そういうことだね」
紹介しよう!我が家の唯一自慢である、俺の妹___新凪奈古は天才。小さい頃から勉強が優れており、今は有名大学と一緒に研究をしている日々。容姿はというと、ボサボサの髪に丸眼鏡と女性とは思えない。まだ顔つきは整っているのでもうちょっと容姿に気を遣ってくれたらあるのに……
まぁ普段は部屋から出てこないので、容姿を気にはしていないからだと思う。
こんな所で奈古に会えるなんてラッキー。
「奈古。お前に伝えたいことがある」
聞きたいことがあったので、真剣な眼差しで訴えてみたが……
「なに結婚?ならすまないな。残念ながら日本の法律ではまだできないのだ。勘違いするなよ。私が決してお兄さんを嫌いというわけではないからな」
「勘違いしてるのはお前だよ」
しょうもない会話をしただけで、俺の熱意は伝わらなかった。
今は諦め、気を取り直して出向こうと思う。
その後は食事や風呂を済ませ、妹の部屋に突入。
そこに広がっていたのは、くちゃくちゃにされた紙とエナジードリンクの缶などゴミだらけ。
数か月ぶりに見たが、やはり汚すぎる。
肝心なこの部屋の領主はというと、パソコンに向かって必死に何かをしている。
「可愛い天使様!天才の巫女!絶世の美女!聞こえますか?」
お世辞というお世辞を言ったが返事がない。
分かってはいたが、こういう時の奈古は集中しているのでいくら話しかけても答えない。めんどくさいが、会話をするには足場がおぼつかない中、少しづつ奈古に近づくしかない。
前にこのゴミ屋敷で歩いた時に、足に切り傷ばかりできて軽いトラウマがあるので、本当は行きたくはないがな。
数メートルしかないのになぜか数百メートル歩いた気分になる。
「おい!」
足元を痛めながらもようやく目の前に到着し、耳元で叫ぶ。
これには流石に驚き、椅子から飛び上がる。
「兄さん。全く心臓に悪いではないか。しかもノックもしないで女の子の部屋に入るなんてダメですよ。着替えてたりあんなことをしていたらどうするのです?」
「この部屋が女の子の部屋ね。ぬいぐるみも美容道具も衣装も何一つ持っていないのに……着替えるなんて……」
「うるさい!とにかく何の用ですか?結婚ならお断りしましたが」
「お前に人間関係について聞きたい!」
今回の要件は勝負のこと。
行動次第とか抽象的でしかないので、こういう時、人間的にどういう行動をしたらいいか聞こうと考えた。
なんにせよ友達も少ないし、今まで人間関係もまともにしてこなかったので何をしたら良いか分からず、アドバイスを求めに来た。
聞く相手は間違っているのでは?そう思った人は正常。こんなにも研究と勉強しかしてこなかった人に聞くのはおかしいと俺も思うが、生憎俺には仲の良い友達ががいない。
あれ絆がいるのでは?そう。本来!本来はそうしたかったんだが、あいつは占いの結果に浮かれすぎてね……。今は会うことができない。いや交通事故ではないよ。
このようなことから消去法で、妹になってしまう。
「兄さん!聞く相手間違ってますね!他に誰かいないの?」
しかし満面の笑みで拒否られた。
なんとなく分かっていた。けど聞く相手がいないから妹に頼ったなんて言いたくない!
かと言ってこうなってしまったらごまかせないので、目線を床に向け小さな声で話し出す。
「いや。聞く友達がいないので……だからそこをどうにか」
「えっ兄さん生粋のボッチじゃん!それは恥ずかしいよ!」
明らかに声のトーンが上がった。そして目も光輝いている。
「いや男友達一人いるし!」
俺の反抗も虚しく、腹を抱えながら爆笑される。
でも俺は思った。よくよく考えたら、この絵面は俺以上に奈古の方が悲しいのではないかと。
なぜなら、妹は学校にも行かず研究しかしてないので友達がいるはずがないし、できる可能性がほぼない。なのに俺にはまだ一人いるし、学校に行っているのでまだ増える可能性がある。
ということは__あの発言は特大ブーメランでは。
少し黙っておくと、笑い声が止まる。
そしてボッチだということを思い出したのだろう。
さっきまでの目の輝きは消え、黙ってパソコンに向かい研究を再開し始めた。
「あーー人間関係ね。なら押せ押せ。私は君と違って研究で忙しいのだよ。さぁ帰った帰った」
さっきとは全く違い、低い声のトーンで適当に答えられる。
これ以上深掘りするのは流石に可哀想だと思ったので、感謝だけ伝えて部屋を出ていった。
結局、足を怪我してまで得られたことは最後の押せ押せだけだった。
意味はわからん。恋愛の話ではないのに。
こうして頼り綱だった奈古は戦力外。
「しゃーない。まだ喋りかけられないんだけどな……」
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